■HbA1cの基準値について
(Q.)「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」によりますと、境界型は糖尿病特有の合併症は少ないが、動脈硬化症の危険は正常型よりも大きい。HbA1c(国際標準値)が6.0〜6.4%(HbA1c(JDS値)が5.6〜6.0%)の場合は、糖尿病の疑いが否定できず、また、HbA1c(国際標準値)が5.6〜5.9%(HbA1c(JDS値)が5.2〜5.5%)の場合も含めて、現在糖尿病でなくとも将来糖尿病の発症リスクが高いグループと考えられる。とありますが、日本臨床検査医学会標準化委員会の「学生用共通基準範囲の考え方と利用時の留意事項」のよりますと、学生用基準範囲として5.6未満(JDS値)、学生用備考には境界型=5.6-6.0%と記載されています。
境界型として、HbA1c(国際標準値)が5.6〜5.9%(HbA1c(JDS値)が5.2〜5.5%)の場合は含まれないのでしょうか。
5.2未満としていない根拠などありましたら、教えていただきたいとメールさせていただきました。よろしくお願いいたします。(福岡県 臨床検査技師)
(A.)
1)指摘の委員会報告でHbA1cに関しては、糖尿病の診断基準には糖尿病型としてHbA1c(国際標準値)≧6.5%があるだけで、正常型の規定がない。従って、糖尿病型でも正常型でもないということが定義の境界型は、HbA1cでは本来定義することが出来なく、診断フローチャートにおいても糖尿病型としてHbA1c(国際標準値)≧6.5%以外は判断基準に含まれていない。
(2)HbA1c(国際標準値)6.0〜6.4%の場合は,「糖尿病の疑いが否定できず」と明確に記載されているので、様々な病態を含むとする境界型として診断上留意する意味はあるけれど、HbA1c(国際標準値)が5.6〜5.9%の場合は,「現在糖尿病でなくとも」と記載されていて、つまり現在は糖尿病でないと診断すべき検査値領域と考えられる。
(3)「空腹時血糖値が 100〜109mg/dl または HbA1c (国際標準値)が 5.6〜5.9%の場合,それ未満の場合に比べ将来の糖尿病発症や動脈硬化発症リスクが高いと考えられるので、、、、」の記載から、空腹時血糖110 mg/dlはHbA1c (国際
標準値)5.9%、空腹時血糖100 mg/dlはHbA1c (国際標準値)5.6%に対応すると考えられ、空腹時血糖110 mg/dl未満は正常型との定義に従えば、HbA1c(国際標準値)が5.6〜5.9%は
正常型の高値領域と考えるのが相当である。
(4)何よりも、HbA1c(国際標準値)5.6%〜には本当の基準範囲で約半数の人が当てはまり、検査診断学上の価値を認めがたい。
[2011年12月28日 康 東天(九州大学)、前川真人(浜松医科大学)]