表1 臨床検査医学/臨床病理学分野の研究を重点的に助成する民間助成団体
表2 医療保健分野の研究助成を一般公募している主な民間研究助成団体
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[お知らせ-2]◆会員動向(2001年2月20日現在数)591名 臨床検査専門医401名
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−手続き順−
《入会》 伊東正博 (国立長崎中央病院臨床検査科)
大久保光夫 (埼玉医科大学総合医療センター輸血部)
重松和人 (長崎大学医学部第二病理学教室)
島松一秀 (公立八女総合病院病理検査科)
足立哲也 (秋田大学医学部臨床検査医学講座)
眞船直樹 (北海道大学大学院医学研究科病態医科学)
山田恭暉 (長崎大学医学部臨床検査医学講座)
梅田 遵 (群馬大学医学部臨床検査医学教室)
浅野 博 (天理よろづ相談所病院臨床病理部)
下条久志 (信州大学医学部病理学教室)
鷹野壽代 (雪の聖母会聖マリア病院輸血部)
小山祐康 (東京女子医科大学中央検査部臨床生化学科)
小林 晏 (大阪厚生年金病院病理科)
《退会》 山肩葉子
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[報告]◆日医外部精度管理調査シリーズ No.5 血液検査
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血液学検査における外部精度管理の目標
日本医師会の臨床検査外部精度管理調査の歴史は2000年で34回となり、その内
容は最初はヘモグロビンのみであったのが、現在では全血算、網赤血球、自動白血
球分類、PT、APTT、フィブリノゲンと自動分析が可能な全項目にわたっている。
そしてその調査結果はその歴史の重ねに応じた計測値の施設間差改善を著明に示し
ており、その改善は精度管理調査参加施設および機器・試薬メーカーの努力成果で
あると判断される。最近では赤血球系計測の施設間変動が3%以下、白血球が5%以
下、血小板が8%以下にまで低下している。この現状に計測精度にさらなる改善を求
めるのは工業技術的には可能であるが機器・試薬の高精度化が必要となりコスト高
となり、臨床検査室には利用できない装置・試薬となる可能性があるため、現在の
計測技術法を踏襲する限りは改善の余地は余り多くは残されていないようである。
現在の外部精度管理調査において最も望まれている点は、血液検査においてはタ
ーゲット値の設定と、ヘマトクリットおよび自動白血球分類を各社の装置の機能を
同じレベルで比較できる精度管理用物質の開発である。他方、凝固検査においては、
PT検査におけるINR値評価への集約、APTT計測値評価法の改善(例えばプロト
ロンビン比のような)、およびフィブリノゲン測定値の集約化である。中でもフィ
ブリノゲンは凝固活性計測法の基本となる部分であり、免疫酵素測定法と凝固活性
法との計測値の大きな乖離が問題であり、そのために両法間で共通した値を得られ
る標準測定法と標準物質の開発が急務であるとされる。幸いなことにこの作業は国
内外で実際に開始されており、近いうちに凝固活性が一定し現在の免疫酵素法にも
十分反応しうる標準物質が開発されそうである。他方、血栓症診断にDダイマーの
利用が盛んになるだろうから、その精度向上が求められ、また血漿FDP測定の精度
管理調査の実施が必要となるだろう。
(巽 典之 大阪市大臨床検査医学 臨床検査専門医)
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[ニュース]◆抗結核剤の少量投与が耐性菌の流行を阻止する
<WHOトピックス Press Jan.2001 WHO-144>
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全世界で毎年800万人の結核患者が発生し、少なくとも年間200万人が死亡する。
これらの結核の80%はアジアやアフリカの22の感染国で起こっている。現在、結
核の治療に使用されているのは数種類の薬剤併用療法である。結核患者には少なく
とも2か月間は1日につき16薬剤を服用させ、その後4〜6か月間は1日9錠投与
していた。大部分の患者はこのような長期投与に耐えかねて中止してしまい、これ
が結核菌の薬剤耐性が拡大する原因になっている。WHOでは4種類の薬剤を少量
16日間投与し、薬剤耐性菌の広がりを防止することにしている。
(森 三樹雄 獨協医大越谷病院 認定臨床検査医)
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[新規収載-1]◆ヘリコバクター・ピロリ抗体
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感染症血清反応
ヘリコバクター・ピロリ抗体(準用先区分D012-7)(D-2)
保険点数:70点 定性検査
基準範囲:1.00EU/mL以上陽性
製品名:ヘリテスト
製造元:Provalis Diagnostics Ltd Deeside, Flintsire, UK
輸入元:全薬工業(株) TEL 03-3946-1111
発売元:ゼリア新薬工業(株) TEL 03-3661-0277
測定法:金コロイド免疫測定法 1テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:15分 自動化:不可
検体:全血
【特徴】金コロイド免疫測定法により、全血中の抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗
体を定性的に検出する。ニトロセルロース製メンブランフィルター上に固定された
抗原と血液中の抗体の抗原抗体複合体を形成させ、これに金コロイド標識ヤギ抗ヒ
トIgG抗体(発色試薬)を作用させて、結合、発色させる。
ヘリコバクター・ピロリの除菌剤及び診断薬が承認され、保険適用されている。
ヘリテストは定性キットで特別な機器を必要とせず、簡単な操作で短時間。ELISA
法と比較しても感度、特異度、精度ともに遜色ない。除菌後診断には向かないが、
除菌前の感染診断として有用性がある。培養法を基準として本法との相関性を見た
ところ、有病正診率は96.2%(51/53例)、無病正診率は81.1%(30/37例)、
診断効率90.0%(81/90例)である。
【文献】奥井雅憲 他:全血を用いた血中抗Helicobacter pylori抗体検出キット
ZYC-101の有用性.基礎と臨床, 30 : 2093~2101, 1996
(森 三樹雄 獨協医大越谷病院 臨床検査専門医)
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[新規収載検査-2]◆アデノウイルス抗原精密測定
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感染症血清反応
アデノウイルス抗原精密測定(咽頭粘膜上皮細胞中)(準用区分D012-23)(区分D-1)
保険点数:270点 定性検査
基準範囲:1×104/mL以上のウイルス粒子
製品名:チェックAd
製造元:SAS Scientific, Inc. San Antonio, Texas 78240 U.S.A.
輸入元:大蔵製薬(株) TEL:0774-20-3250
発売元:明治乳業(株) TEL:03-3633-1557
発売元:未定
測定法:免疫クロマト法 10テスト/キット(シングル測定)
結果が出るまでの時間:15分 自動化:不可
検体:咽頭の拭い液
【特徴】金コロイド標識坑アデノウイルス抗体と展開面に固相化された坑アデノウ
イルス抗体により、検体中のアデノウイルス抗原をはさんで抗体―抗原―抗体のサ
ンドイッチ結合物が形成されることで現れた赤色の線を肉眼的に検知する。
アデノウイルスのヘキソタンパク中、属特異的タンパクに対するモノクロナール
抗体を利用した免疫クロマト法による定性検査で特別な機器を必要とせず、短時間
で結果が得られる。初診時に的確な診断を下すことができる。
学童の集団感染と重篤例の発生の防止にも有用である。本法と分離培養法の比較
では有病正診率72.6%(69/95)、無病正診率100%(74/74)であった。
【保険請求上の注意】アデノウイルス抗原精密測定(咽頭粘膜上皮細胞中)と本区
分「23」のアデノウイルス抗原精密測定(角結膜上皮細胞中)を併せて実施した
場合は、主たるもののみ算定する。
【文献】Hiroyuki T.et.al. : Immunochromatography Test for Rapid Diagnosis of
Adenovirus Respiratory Tract Infections:Comparison with Virus Isolation in
Tissue Culture: J Clin Microb, 37:2007-2009,1999
(森 三樹雄 獨協医大越谷病院 臨床検査専門医)
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[新規収載検査-3]◆黄色ブドウ球菌ペニシリン結合蛋白2'(PBP2')
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細菌培養同定検査
黄色ブドウ球菌ペニシリン結合蛋白2'(PBP2') (準用先区分D018-6)(区分D-1)
保険点数:70点 定性検査
製品名:MRSA-LA「生研」
製造・発売元:デンカ生研株式会社 TEL:03-3669-9091
測定法:ラテックス凝集法
50テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間: 15 分 自動化:不可
【特徴】黄色ブドウ球菌と同定された菌をアルカリ加熱処理し、MRSAの耐性因子
であるPBP2'を抽出する。抽出したPBP2'を、抗PBP2'モノクローナル抗体感作ラ
テックスを用いたスライドラテックス凝集法により検出する。
院内感染の原因菌としてしばしば検出されるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ
球菌)は、βラクタム剤をはじめとする種々の抗生物質に耐性を示す。MRSA感染
症患者に対して無効な抗生物質の投与を行うことは、かえってMRSAを選択的に増
加させ症状の悪化を引き起こす。従って、患者から分離された黄色ブドウ球菌が
MRSAか否かを迅速に判定することは治療薬の選択及びその効果上重要である。
MRSA−LA「生研」はMRSAの耐性因子であるペニシリン結合蛋白2'(PBP2')を
スライドラテックス凝集法により検出するもので、分離培養された黄色ブドウ球
菌から特別な装置を要せずに約15分間でPBP2'を検出することができる。
PCR法によるmecA遺伝子検出検査と本キットとの比較では感度96.9%(123/
127株)、特異性100%(46/46株)、一致率97.7%(169/173株)であった。
【保険請求上の注意】血液培養により黄色ブドウ球菌が検出された患者を対象とし
て測定した場合又は免疫不全状態であってMRSA感染が強く疑われる患者を対象と
して測定した場合のみ算定できる。黄色ブドウ球菌ペニシリン結合蛋白2'(PBP2')
と区分「D023」微生物核酸同定・定量検査「4」のブドウ球菌メチシリン耐性遺伝
子同定検査と併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
【文献】花木秀明、平松啓一:ラテックススライド凝集法によるペニシリン結合蛋
白2'検出用キットの臨床的有用性.医学と薬学,41:749〜754,1999
(森 三樹雄 獨協医大越谷病院 臨床検査専門医)
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[Q&A]◆血液凝固検査で、動脈血を使用しない理由
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(Q)血液凝固検査では、動脈血は一般的に使用されないということですが、どうし
てなのでしょうか。(埼玉県 臨床検査技師)
(A)血液凝固検査に動脈血を使っていけない理由はありません。しかし動脈血採血
は、静脈血採血に比較し痛みや出血の危険、動脈血栓の危険があり侵襲性の高い手
技と言えます。従って、静脈血採血が可能であれば、あえて侵襲性の高い動脈血採
血は行わないということなのではないでしょうか。
回答日:2000年11月30日
回答者:細川 直登 日本大学臨床病理 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)](20000604a)
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[Q&A]◆高Alp血症症例の診断
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(Q)下記の検査を実施したのですが、診断に苦慮しています。
GOT 49、GPT 24、ALP 380、γ-GTP 108、TG 221、血小板数38.6、蛋白
分画(βグロブリン)12.1%、ALPアイソザイム(ALP1 6.5%、ALP2 64.2%、
ALP3 29.3%)、腹部エコー異常なし、症状は特になし。
以上のデータより考えられる疾患をご教示下さい。(不明)
(A)当該検査施設の基準範囲が不明のためALPなどは判断しにくい面があります。
基準範囲の施設間差の大きい項目は範囲をお書き添えいただくと助かります。また、
小児と成人では大きく違うことがあるため、このデータは成人のものと仮定します。
一般的には、GOT(AST)は軽度の上昇、GPT(ALT)は上昇せず、γ-GTP (γ-GT)
が上昇しておりALPも軽度の上昇をしていると考えると、軽度の胆汁うっ滞型の肝
障害の存在が示唆されます。他のデータは、今回の項目どうしで組み合わせて特定
の病態を判断するものではないと考え、単独で解釈します。
TGは食事の影響を著しく受けるため空腹時採血かどうかで判断が異なります。
空腹時なら高いと判断できる値です。血小板は若干高めですが正常上限を少し上回
るくらいの値と考えられます。
蛋白分画はTPが示されなければ判断は出来ません。また何故βだけなのか理解に
苦しむ面もありますが、あえてTPが正常と考えるなら正常上限ほどでしょうか。
ALPアイソザイムはもとのALPがかなり高値でなければ臨床的には検査する価
値はないのではないかと思われますが、これもあえて判断するなら、ALP2 (肝型)
がALP3(骨型) に比して優位になっており成人だとしても軽度ですが胆汁うっ滞を
示唆する所見とも解釈できます。
以上が今回お示しのデータから予想できることであり軽度の胆汁うっ滞がある可
能性が示唆される以上のことは判断できません。従って疾患を明示することは困難
で、あえて言えば軽度の胆汁うっ滞をきたす疾患の多くが当てはまると考えられま
す。
検査の解釈は、検体がサンプリングされたときの条件により変わるものや、様々
な検査の組合せにより行うべきものが多数あります。また検査によって疾患の診断
をする際は、予想される疾患の検査前確率が検査後の確率に大きく影響します。ま
た予想される疾患に対する検査の感度と特異度を考慮し検査の項目を選択すること
が重要です。従って検査前にある程度鑑別疾患を予想し、その鑑別に有用な検査を
選択することが必要になります。
残念ながら今回のご質問のようにかなり断片的なデータからは病態をあまりシャ
ープに描き出すことは出来ないとご理解下さい。
回答日:2000年11月30日
回答者:細川 直登 日本大学臨床病理 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)](19990831a)
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[Q&A]◆VMAの異性体について
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(Q)新生児代謝異常スクリーニングの精度管理しておられるDr. より「バニリル
マンデル酸(VMA)には異性体が存在しているが生体内での比率を教えてほしい」
との質問を受けました。血液中、尿中のどちらでも構いませんので教えてください。
(東京都 臨床検査技師)
(A)VMAの基となる生体内物質であるエピネフリン(アドレナリン)はD型、L型
の異性体がありますが、自然界にあるエピネフリンはL型です。従って、その代謝
産物であるVMAもL型です。
文献; ハーパー生化学 原書19版 p.542 (丸善)
回答日:2000年11月30日
回答者:細川 直登 日本大学臨床病理 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)](20000527a)
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[Q&A]◆アナフィラキシーショックに特異的な検査項目
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(Q)臨床医からアナフィラキシーショックに特異的な検査項目は何かという質問
があり、
(1)血清IgE
(2)ヒスタミン遊離試験
(3)何らかのサイトカイン
(4)血中ヒスタミン濃度
等を候補として考えましたが、(1)(2)はアレルギーの検査として有効であっ
てもアナフィラキシー状態には必ずしも特異的ではなく、また(3)に関してはそ
の様なサイトカインが存在するか否か不明で、(4)に至っては測定可能かどうか
分かりません。どのように回答すればよいでしょうか。(長野県 臨床検査医)
(A)アナフィラキシーはIgE抗体の関与するI型アレルギーによって生じ、その1
症状として現れる蕁麻疹、血管浮腫は時に重篤な経過をとることがあります。
アナフィラキシーは、次のような経過で発症します。IgE抗体を産生しやすい遺伝
的体質を有する人(≒アトピー体質)が抗原物質に暴露されると、感作されてこれ
に対するIgE抗体(=特異的IgE抗体)を産生することがあります。特異的IgE抗
体は高親和性IgEレセプターを介して肥満細胞に結合します。このような状態で再
度抗原に暴露されると、肥満細胞表面のIgE抗体が抗原によって架橋され、細胞が
活性化されます。その結果、ヒスタミン、ロイコトリエン等のケミカルメディエー
ターが放出され、血管透過性亢進、毛細血管拡張、粘液分泌亢進、平滑筋攣縮など
が惹起されます。これらの現象による症状が全身におよび、血圧低下や呼吸困難な
ど重篤化したものをアナフィラキシーと称します。アナフィラキシーは抗原暴露後
数分から30分以内に生じます。
前置きが長くて恐縮ですが、IgEではなくIgG抗体、免疫複合体、補体等が関与し
ても同様な症状を呈する事がありますので、患者さんが起こした症状が「確かにア
ナフィラキシーかどうか」をまず確認してください。
アナフィラキシーの場合、原因となる抗原物質が存在します。しかも、反応は抗
原暴露後ごく短時間で生じますから、原因の特定はそう困難ではないでしょう。主
な原因物質としては、βラクタム環を有する抗生物質、ヨード造影剤、臓器・酵素
剤、抗血清・ワクチン、筋弛緩剤、局麻剤、NSAIDs等の薬剤、食物、ハチやヘビ
の毒、ラテックスなどが挙げられます。
検査法としては、in vivo とin vitroの2つに大別されます。前者には常に「抗原
再暴露の危険性」が伴っていることを銘記する必要があります。
in vivo検査
1)スクラッチ試験
抗原液(抗原によっては市販されていない)を皮膚に滴下し、針で掻把する。15
分後に局所の発赤、膨疹を測定する。
2)皮内テスト
前腕内側に抗原液を皮内注射し、15分後に発赤、膨疹を測定する。
3)負荷テスト、チャレンジテスト
危険性大!
in vitro検査
1)アレルゲン特異IgE抗体の測定
RASTに代表される、血清中の特異IgE抗体を測定する方法である。偽陰性を呈す
る事があるので注意する。とくに、激しい症状を生じた直後は、特異的IgE抗体が
消費されている可能性が高い。
従来のRASTより感度、特異度とも優れたものとして、CAP(ファルマシア・アッ
プジョン)、SIST(シオノギ製薬)、alaSTAT(日本DPC)、QAS(富士レビオ)、
MAST(日立化成)、LUMIWARD(シオノギ製薬)などがある。
2)血中ヒスタミン測定
血中半減期はわずか1〜2分なので、採血から測定まで迅速な対処が必要である。
3)試験管内ヒスタミン遊離試験
患者白血球に抗原を加え、遊離したヒスタミンを測定する。ルシカHRT等のキット
が市販されている。
1)、2)、3)はいずれも検査センターで受託している。
サイトカインについては、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNFα)やTh2型
サイトカイン(IL-4、IL-5)の関与が考えられますが、現状ではアナフィラキシー
診断上の有用性は乏しいと思います。
回答日:2000年11月30日
回答者:村上純子 日本大学臨床病理 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)](ID19991004a)
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[Q&A]◆Duと弱いD(+)の違い
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(Q)血液型の抗D検査で、Duの患者がいました。Duと弱いD (+)の違いについて
教えて下さい。また、憶測なのですが、同じ人で2年前にはD (+)、今年はDuと
変化することがあるのでしょうか。もし変化するならその要因も教えて下さい。
(福岡県 臨床検査技師)
(A)抗D血清を用いた従来法で凝集を認めない場合は、間接抗グロブリン試験を
行い、凝集(ー)ならD陰性、(+)ならDuとして分類してきました。Duのuは
抗原性がD陽性に比して未発達、つまり"undeveloped"という意味です。
近年、抗D血清としてポリクローナル抗D血清(PoAb)だけでなくモノクローナ
ル抗D血清(MoAb)が用いられるようになり、これまでDuと判定された血球に
は、D抗原の量が少ない(つまり量的バリアント)血球と、一部のD抗原エピトー
プを欠損している(つまり質的バリアント)血球が混在していることが明らかに
なりました。
最近では、前者を「Weak D」、後者を「Partial D」と称して区別しています。
ただし、D陰性と「Weak D」あるいは「Partial D」を判定するために行われる間
接抗グロブリン試験は、相変わらずDu試験と呼ばれていますので混乱しないよう
注意してください。
「Weak D」と「Partial D」を判別するためにはDu試験にPoAbとMoAbを併
用します。PoAb(ー)MoAb(ー)ならD陰性、PoAb(+)MoAb(+)ならWeak
D、PoAb(+)MoAb(ー〜±)ならPartial Dが疑われます。
「同じ人で2年前にはD(+)、今年はDuと変化することがあるのでしょうか。」
というご質問ですが、D陽性とWeak Dの差は、D抗原の量の多少だけですので、
日赤血液センターでは、半定量的な基準として、被検血球の被凝集価が、対照に
比して4管以上差があるものをWeak D、4管未満のものをD陽性としています。で
すから、血球の抗原量によっては、D陽性とWeak Dのボーダーラインケースで、
時によりDu(Weak D)になったりD陽性になったりするケースがあるかもしれま
せん。
さらに、Partial Dの場合には、使用したMoAbが、たまたま認識するエピトー
プを有する血球であればD陽性と判定され、認識するエピトープを有さず、反応し
なければDu(Partial D)と判定される可能性もあります。
回答日:2000年11月30日
回答者:村上純子 日本大学臨床病理 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(免疫学的検査)](ID20000623a)
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[Q&A]◆神経生理検査と心エコーの教科書
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(Q)筋電図などの神経生理検査と心エコーを担当する事になりました。これらの
検査に関する分かりやすい教科書と、バックボーンとなるようなできるだけ分かり
やすい医学書を探しています。できましたらご教示をお願いいたします。(福井県
臨床検査技師)
(A)医師の立場と技師では、判りやすいに差があるかもしれません。そこでそれぞ
れの分野を担当する当院の技師に推薦してもらいました。
神経生理学学的なものは、
入門書として
1. 脳波・筋電図検査の実際、日本臨床検査技師会ライブラリー 3,570円
(03-3230-0634に電話で注文)
ステップアップした人には
1. 筋電図検査の手引き 堀浩著 南山堂 5800円 1981年発行
2. 臨床脳波学 大熊輝雄著 医学書院 16000円 1991年発行
心エコーについては
入門編としては、
1. 心エコーのABC 日本医師会雑誌
また、はじめのうちは、普段持ち歩くのに便利な虎の巻として、
2. 心エコー法テクニカルガイド 木村満 HBJ出版
標準的な心エコーの教科書としては、
1. ◎臨床心エコー図学 吉川純一 文光堂
2. 心エコー図で診る 吉川純一 文光堂
3. 心臓超音波診断アトラス(成人編) 廣澤弘七朗
回答日:2000年11月30日
回答者:谷口 信行 自治医大 臨床検査医学
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)](ID19990922a)
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[Q&A]◆下大静脈と大動脈の超音波検査
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(Q)心エコー検査で腹部の下大静脈と大動脈を検査する目的と、判定基準を教え
て下さい。(東京都 臨床検査技師)
(A)ルーチンの心エコーで腹部大動脈の観察を行なうことは多くありませんが、
腹部に動脈瘤(含む動脈解離)が疑われる時、検査されることが多い。その直径は
肝背側から腎動脈分岐部までは2 cm程度までとされる。なお、大動脈弁逆流の重症
度を見るときに調べられることもあり、パルスドプラ法で逆流信号があれば重度と
考えられる。大動脈の拡張がある場合は、限局性のものか(動脈瘤)、尾方にまで
およんでいるか(その範囲)、動脈内にflapがないか(動脈解離)を確認する。下
大静脈は、肝背側で肝静脈とともに観察され、右不全、三尖弁閉鎖不全症で拡張が
見られる。ただし、年齢により差があるためかはっきりした基準値が示しにくいの
が実情である。そこで絶対的ではないが、最大前後径で15mm以上で、collapsibility
(虚脱)が悪いものが問題とされる。collapsibilityは、呼吸性変化に変化する下大
静脈の前後径で最小値が最大値の1/2以上(すなわちcollapsibility indexが0.5以
下)の場合には右心不全などが考えられるとする判断法を用いている。通常は、計
測しないでも呼吸変化がよく観察でき十分虚脱する(径0 mmまたはそれに近い)
場合には問題なしとしてよい。
回答日:2000年11月30日
回答者:谷口 信行 自治医大 臨床検査医学
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)](ID19991109a)
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[Q&A]◆心エコーによる心筋重量の測定
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(Q)現在、当院ではMモードで12 mm以上を心肥大と取っていますが、医師の
要望でMモードで心筋重量を計る方法を検討しています。しかし、求心性心肥大で
は値は低くなり、心拡大でも異常値となることがあります。色々文献等を調べます
が良い方法が見つかりません。また、正常値も正確にわかりませんので、できまし
たら教えて下さい。私自身としては、心肥大を見るのには心筋重量を測るより現在
の方法が良いのではと考えています。他の施設では心肥大の評価はどのようにして
いるのかも知りたいので、分かりましたらお教え願います。(大分県 臨床検査技
師)
(A)心肥大の観察として最も多く使用されているのは、ルーチンの検査では左室心
筋の厚さを計測し中隔側、後壁側ともに12 mm以上を肥厚とするものです。一般的
な心エコーの検査としてはこれで十分と思われますが、より詳しく心の状態特に心
筋重量(体積)を計測する目的で、MモードまたはBモードを使用して、心筋重量
が計測される場合があります。ルーチンの検査で行われる場合には前者が、特に興
味をもった循環器の専門家がいる施設では後者が行われてます。心筋をmassとし
て計測すると、同じ心筋の厚さでも心腔が大きいほどその重量(体積)が大きくな
り、肥大をより評価しやすくなる点で有利と考えられます。ただし実際に計測する
とわかる通り、測定誤差が大きい点が問題とされ、断層像で計測される方法の方が
推奨されていますが、煩雑な点が問題です。いくつかの論文を上げますので参考に
してください。
Daniel SR, et al.: J Am Coll Cardiol 1988; 12: 703-8.
Collins HW, et al.: J Am Coll Cardiol 1989; 14: 672-6.
Hammond IW, et al.: J Am Coll Cardiol 1986; 7: 639-50.
回答日:2000年11月30日
回答者:谷口 信行 自治医大 臨床検査医学
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)](ID20000318a)
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[Q&A]◆クレアチニン・クレアランス算定時の標準体表面積(1.48m2)について
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(Q)日本人の体型が大型化している今日、1.48m2という標準体表面積は疑問が有
ります。
また、国際化が進んでいることも有り、人種や、出身国が日本以外の方に対して
クレアチニン・クレアランス算定時に1.48m2をそのまま適用することに疑問を感
じております。
そこで質問ですが、
1.今後この値が見直される可能性があるのか
2.各国の標準体表面積値はいくらなのか
3.日本人であっても年齢別(20〜40歳台と、50〜70歳台など)別々の値を適
用する方向にあるのか
以上の点について御教示ください。(福井県 検査技師)
(A)まだ、最終報告がなされてはいなかったと思いますが、「日本腎臓学会腎機能
(GFR)・尿蛋白測定委員会」による中間報告をもとに、回答させていただきま
す。
そもそも、体表面積の補正は、体表面積とクリアランス値が相関することから、
腎機能の評価に用いられてきました。ご指摘のように我が国では、標準体表面積と
して1.48が用いられてきました。しかし、この体表面積は、1941年の藤本らの報
告以来長年にわたって用いられていますが、最近の日本人(25歳)の体表面積は、
男子で1.765、女子1.505となっており、体表面積で補正する場合は、国際的に用
いられている1.73を用いることが多くなってきています。しかし個人の体表面積の
増減とクリアランスの関係は報告されていないので、個々の症例の腎機能推移を見
る際には、体重補正は必要ない、ともいわれております。ただし、小児においては、
生後、急速に増加するが体表面積補正を行うと、2歳以降では成人に一致すること
から、成長期にある小児に対しては、体表面積補正(1.73を使用)は必要であると
されています。中間報告では、
1. 成人患者のクリアランス値の体表面積補正は、群間比較などの際には必要であ
るが、通常は用いなくとも良い。
2. 日本人の標準体表面積は、国際的に用いられている1.73 m2とする
3. 15歳以下の小児では体表面積補正をする。
ということが、提案されています。
回答日:2000年12月28日
回答者:矢内 充 日本大学臨床病理 臨床検査専門医、日本透析医学会認定医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)](ID20001127b)
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[Q&A]◆ABO式血液型試験
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(Q)36歳の初産婦の(輸血歴なし)ABO式血液型を調べたところ表試験抗A
血清(4+) 抗B血清(2+) A1レクチン(−) 裏試験A1血球(−) B
血球(1+) O血球(−)と言う結果を得て、判定保留となりました。こういう
場合どのように考えればよいのでしょうか。教えてください。(徳島県 医師)
(A)オモテ試験、ウラ試験の結果から、血液型はcisA2B3と考えられる。cisA2B3
は3点について知っておく必要がある。
1.血清学的反応
抗A,抗Bともに弱く反応するAB型で、血清中にある種の抗Bをもつ亜型である。
分泌型では、唾液中に型物質としてA,B,Hが認められるが、現行の方法ではA・B
型転移酵素は検出できない。輸血が必要な場合は、存在する不規則抗体との反応を
考慮して血液製剤と血液型を選択する必要がある。この症例では抗B抗体が認めら
れるので、A型の赤血球製剤(MAP血)を選択する。
2.遺伝的背景
通常「AB型とO型は親子たりえない」といわれるのは、ABO血液型が第9染色体
長腕の相同染色体上に存在するA、B、O3つの対立遺伝子の組み合わせで、Mendel
の法則に従って遺伝するためである。cisAB型は遺伝的に興味深く、代表的なcis
A2B3はA,B遺伝子が同一染色体上に乗って(cis-position:遺伝子型A2B3/O)遺
伝していると考えられ、cis A2B3からO型の児が生まれることがある。DNA解析に
より同定できる。
3.cisAB型は、地域偏在性があり、徳島県出身者に最も多く、次いで石川県、香
川県に多く報告されている。
回答日:2001年01月04日
回答者:竹中 道子 東京女子医大・輸血科(非常勤) 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(免疫学検査/血清検査/輸血検査)]
(ID20001209a)
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[Q&A]◆結節から採取した穿刺液
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(Q)この度整形外科の先生よりご質問を頂き、いろいろ調べましたがお答えしか
ねております。お忙しいところ恐縮ですが、ぜひ教えていただきたいと思いメール
を送らせて頂きました。
内容は「長期の透析によって出来た手の結節の内容物の同定をしてほしいが検査
できるか」というもので、質問頂いた先生はその成分はカルシウムではないか?と
おっしゃっています。文献ではβアミロイドが組織に沈着するということは紹介さ
れていますが、カルシウムについては特に触れられていません。今回は結節からと
った穿刺液での提出でした。透析によって出来た結節についてそのような検査をす
る意義があるのでしょうか?
また、当社では手根管症候群の患者さんの滑膜組織にβアミロイドの沈着がある
か調べるために免疫染色をして偏光観察していますが、その他の材料(例えば手に
できた結節の組織)、方法でβアミロイドの証明ができますか。(福岡県 臨床検査
技師)
(A)長期の透析によって出来た手の結節ということですが、このような状態で手な
どに結節を形成してくるとすれば、よく見られるものに(1)tumoral calcinosisと結
節形成は少ないものの結合組織に沈着することの多いB2-microglobulin 由来の
amyloid (B2MG amyloid)があります。(2)では穿刺で液状物として得られることは
ありませんので、(1)である可能性が高いと考えます。事実、質問者は「その成分
はcalciimではないか」と書いておられます。Tumoral calcinosisは原因不明として大
きな関節部(trochanteric or gluteal region や肩)に出現することが多いものの、その
他の部位(手、足、膝)にも発生します。また腎不全患者においても同様の場所に同様
の物質の沈着を見ることが知られており、tumoral calcinosis resulted from chronic
renal failure と呼ばれています。その他、secondary hyperparathyroidism で見ら
れることがあります。沈着物はhydoroxyapatite と考えられており、組織学的検査
では暗紫色の顆粒状物質の沈着巣からなり、時に周囲に異物型巨細胞が取り巻いて
います。組織学的にはこの組織像を見ることだけで診断されます。もちろん、化学
的分析を行っても良いと思います。Tumoral calcinosis は、一般に限局性の病変で、
腎不全であれば腎不全のみの治療されすれば、本病変に関しては、切除で治療は完
了です。Amyloidosisであれば透析膜を変えたり、腎移植を考慮する必要がありま
す。このままの状態ですと全身性のamyloidosisになって予後不良です。
第2点のご質問「手根管症候群の患者さんの滑膜組織にB2MG amyloidの沈着が
あるか調べるために免疫染色して偏光観察していますが、その他の材料、方法で
B2MG amyloidの証明が出来ますか」ですが、どのtypeのamyloidであれ、まず
congo red染色やdirect fast scarlet染色、Thioflavin染色などで染め陽性であり、
これに偏光をかけることでapple greenの birefringenceが得られることで確認する
必要があります。これによってamyloidの沈着ありと判定されます。このamyloid
がB2MG typeのamyloidであることを証明するためには、免疫組織学的にB2MG
を染めなければなりません。これが陽性であれば、B2MG由来のamyloidとされま
す。免疫染色材料での偏光はあまりよくありません。一方、免疫組織学的にB2MG
がamyloid fibrilになっていることをみるためにp-componentを平行して染めるこ
とがあります。つまり、p-componentはamyloid線維が形成される際には、必ず必
要とされるもので、これがその他のamyloid前駆物質が引き付けてamyloid fiber
にしていると考えられており、いずれのタイプのamyloidosisでも見られます。た
だ、免疫組織学的にはp-componentは弾性線維にも陽性となるため判定には注意を
要します。いずれにせよ、滑膜組織以外のものでも、これらの方法で証明できます。
回答日:2000年11月30日
回答者:川崎医科大学 病理学 教授 真鍋 俊明
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(病理検査)] (ID19990525c)
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[Q&A]◆糖尿病患者の神経伝導速度測定の質問
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(Q)糖尿病患者で神経伝導速度を測定する際、1)どの神経を測定したらよいので
しょうか。また、MCV、SCVどちらで測定するのが望ましいのでしょうか。2)糖尿
病患者では、速度、波形どのような変化が認められるのか。また、どの位の重症度
で変化が認められるのか。以上について教えて下さい。(岐阜県 臨床検査技師)
(A)1) どの神経を測定したらよいのでしょうか。また、MCV、SCVどちらで測
定するのが望ましいのでしょうか。
基本的には下肢末梢から病変が進行すると考えたほうがよいと思います。という
のは、体幹から遠いところほど障害されやすいからです。そこで、sural nerve SCV
がもっとも影響を受けやすいようです。もちろんtibial nerve MCVも同時に測定し
て変化を捉えておくのがよいでしょう。
2) 糖尿病患者では、速度、波形どのような変化が認められるのか。また、どの位の
重症度で変化が認められるのか。以上について教えて下さい。
糖尿病患者では初期には最高速度のNCVは低下しません。ところがMCVなど
では多相性となります。つまり、障害された神経は速度が遅く、まだ障害されてい
ない神経はほぼ正常の速度を保つからです。したがって多くの速度を持つ神経が反
応して複雑な波形を形成することになるわけです。
最高速度を測定する基本的NCV測定法では初期の以上は捕らえられませんが、反
応時間(持続時間)が延長することなどを十分に捕らえることが出来れば初期の異
常を捕らえることも可能です。
回答日:2000年12月6日
回答者:鳥取大学医学部臨床検査医学 下村登規夫 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)](ID20001130a)
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[Q&A]◆高HDLコレステロールについて
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(Q)健康診断でHDLコレステロールが120mg/dl以上の人が931人の女性の
中に7人いました。HDLコレステロールの基準値には上限が設定されているときと
上限がない場合とがありますが高HDLコレステロールの臨床的意義はどうなって
いるのでしょうか? (千葉県 臨床検査技師)
(A)諸外国で行われてきた多数の疫学調査では、HDLコレステロール値が高いほ
ど動脈硬化症性疾患の発生が少なく、かつ長寿命であることが示されています。し
たがって国際的には、HDLコレステロールは高ければ高いほど良く、したがって上
限値も設定する必要がないと理解されています。ところが最近になって、諸外国に
比べわが国には高HDLコレステロール血症例の多いことがわかり、その原因が
HDL代謝に重要な意味を持つコレステロールエステル転送タンパク(CETP)の欠損
であることがわかりました。しかも、このCETP欠損例では寿命が少し短いことを
示す疫学調査の結果が出てきました。
ただし、CETP欠損症は諸外国での報告例がほとんどなく、わが国に固有の遺伝
子異常と思われます。そのためもあって、疫学調査の報告もまだ1つしかなく、結
論を出せるような状態にはありません。かつ、高HDLコレステロール血症の総てが
CETP欠損によるものとも限りません。したがって当分の間は、HDLコレステロー
ルの上限値は定めることができませんし、その必要もないように思われます。
回答日:2000年12月05日
回答者:岡田正彦 新潟大学医学部検査診断学教授
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(臨床化学)](ID20001130)
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[Q&A]◆ホルマリンの廃液の処理法
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(Q)当施設では組織固定用にWAKOの20%緩衝ホルマリン・マイルドを使用し
ています。使用済み廃液は業者に引き取ってもらっています。資料によると水酸化
カルシウムを加えることで、下水に流すことが出きるとのこと。早速試してみまし
たが、全く着色しません。臭気は1週間ほどで大分とれたみたいです。資料には20
%ホルマリン水となっていましたが、当施設で使用している20%緩衝ホルマリン・
マイルドとは、どう違うのでしょうか? 何か良い方法があれば教えてください。
再生も考えましたが、装置が高価なためちょっと無理なようです。(富山県 臨床
検査技師)
(A)20%緩衝ホルマリン・マイルドに消石灰を加えても、文献にあるように液が
着色して糖に変化しないのはなぜか,という質問ですね。質問者も言っているよう
に、文献のホルマリンは20%の通常のホルマリンです。この場合は100mlのホル
マリンに対して3gの消石灰を加えることで液が褐色に変化し、ホルムアルデヒド
はほとんどなくなってしまいます(文献1)。しかし他の文献によると10%中性緩衝
ホルマリンでは、ホルマリン臭はなくなるが、着色の程度が悪くホルムアルデヒド
はなかなか減らないようです。20%液ならさらに反応が遅くなると思われます。そ
の理由は緩衝剤が反応を邪魔してホルムアルデヒドが糖へ変化しないためと考えら
れています。反応が早く進むためにはpHが弱アルカリ側である必要があるので、
もしも液のpHを弱アルカリ側に変えられれば反応することでしょう(文献2)。武藤
化学から新しく発売された簡易ホルマリン処理剤ホルムクリーンは、緩衝ホルマリ
ン系も処理できるそうです。当施設ではまだ試していませんが、廃液業者に頼むよ
りも若干安価です。これは通常の消石灰法と異なり、沈殿物がなくpHも5,7,7
〜8に調節でき、処理時間は2時間と短く、短時間での廃液が可能です。武藤化学
に訊いてみるとよいでしょう。
参考文献
1.江尻晴博ら:消石灰を用いたホルマリン廃液処理法.病理技術,1998 56:7-8
2.高橋勝美ら:ホルマリン廃液処理に関する基礎検討―消石灰による糖合成反応の
利用.臨床検査,1998, 42:1695-1697
回答日:2001年2月5日
回答者:水口 國雄 帝京大学医学部附属溝口病院 臨床病理科 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(病理検査)](ID20001126a)
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[Q&A]◆気管支肺胞洗浄液の細胞数算定方法
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(Q)気管支肺胞洗浄液の細胞数算定方法を教えてください。(千葉県 臨床検査
技師)
(A)気管支肺胞洗浄(Bronchoalveolar lavage, BAL)液中の細胞数算定法という
質問ですが、せっかくの機会ですので、BAL液の処理法も含めて説明します。
BAL液の処理法には様々な方法が開発されていますが、処理法が違うと結果が変動
することが指摘され、このため1990年に厚生省特定疾患研究班によりガイドライ
ンが作成されました。その内容は以下の通りです。
A.BAL液の採取法
一回注入量50mlで3回洗浄する(総量150ml)方法が標準とされています。第1
液は汚れが多いので棄てるという施設もありますが、ガイドラインではファルコン
チューブに回収した全液量を検査材料とします。採取後1時間以内であれば室温保
存も可能ですが、できるだけ早く処理することが推奨されます。採取したBAL液を
二枚重ねのガーゼで濾過し粘液等を除去します(BAL原液)。
B.細胞数計測
細胞計測法には次の二つの方法があります。
1.BAL原液のままで処理する方法
BAL原液は細胞密度が低いので、通常の赤血球計算盤では細胞数を正確に算定でき
ません。このためFuchs-Rosenthal計算盤を用います。やり方は、濾過したBAL
液200μlにチュルク液400μlを加え、赤血球を溶解させてから計算盤に流し込
み、2チェンバー内の有核細胞をカウントし、その平均値を出します。これを1ml
当たりの細胞数に換算(X×104/mlで表す)します。
2.BAL液を遠心する方法
BAL液を240Gで10分間遠心し、沈渣に緩衝液またはRPNI液(細胞培養液)を
1ml加え再浮遊させ、これを白血球用メランジュールで目盛り1まで吸い、さらに
チュルク液を11まで吸って白血球カウントと同じ要領(通常のBurker-Turkの計
算盤を用いる)ですべての有核細胞を4視野カウントします。
B.スライド標本作製
細胞の種類を分類するスライド標本作製法には、細胞遠心法・細胞沈降法・フィル
ター法・塗沫法などがありますが、前二者を標準法としています。塗沫法では引き
終わりにマクロファージが集まるため推奨できません。遠心する場合、遠心器を事
前に4度Cに冷却しておきます。細胞遠心法にはサイトスピン法とオートスメア法
があり、いずれも細胞数を1〜2×105/ml程度に調整し4度Cで70〜90Gで5分
間遠心します。遠心後、上清は生化学検査に使用するかもしれないので冷蔵庫に保
存します。沈渣は2回洗浄し再遠心後、沈渣をよく攪拌して塗抹標本を3〜4枚作成
します。そのうち1〜2枚を15〜30分間自然乾燥させギムザ液2倍希釈のMay-
Grunwald GiemsaまたはWright-Giemsa染色標本とし、残りは未染標本として
保存します。染色標本は光顕で500〜1000個の細胞を数えて、細胞腫類の比率を
算定します。
回答日:2001年2月5日
回答者:水口國雄 帝京大学医学部附属溝口病院 臨床病理科 臨床検査専門医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(細胞診検査)](ID20001117a)
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[声の広場-1]◆R-CPC連載(日本臨床検査医会会誌)から思うこと
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私はこの数年、日本臨床検査医会会誌 Lab. Clin. Pract. にR-CPC を掲載してい
ただいています(悪性高熱症 16: 27〜31, 1998、肺癌肝転移 17: 38〜43,
1999、甲状腺クリーゼ 18: 29〜35, 2000)。本人はそのつもりではないので
すが、いつの間にか連載となってしまいました。甲状腺クリーゼは日本大学医学
部臨床病理学教室の症例をお借りしましたが、他は名古屋大学医学部附属病院と
名古屋掖済会病院で経験した症例です。私はこれまで臨床検査技師を対象に毎月
R-CPCを行ってきました。症例としては玉石混淆ですが、その中からピックアッ
プして学生実習や研修会、Lab. Clin. Pract. への掲載などに利用しています。
R-CPCで私が臨床検査技師に期待しているのは
1.病気・病態の理解
2.検査データを評価する際の留意点? 感度・特異度、pre-analytical phase error、
測定法の理解、標準化
3.検査データの相互関係の理解・総合的な解釈
4.検査の有効利用、保険診療の理解などです。
これからの臨床検査技師にとって病気・病態を理解することは医療チームの一員と
しての活動に不可欠です。病気・病態と検査データの理解による過誤の防止も期待
できます(この病気でこんなデータを示すわけがない! という感覚を磨くことが
必要です)。また、データ乖離からの病態の発見(例えば、ミオグロビン尿やBJP)
は診断に大きな貢献をします。
検査のパートーナーとしての優れた臨床検査技師の育成は臨床検査医の責務です
(研修医も対象としたいのですが、当院ではまだ体制が整っていません)。また、
R-CPCに適当な症例を選択し、自分なりに解析し、配付資料を作成するという毎月
の作業は私自身の臨床検査医としてのトレーニングにもなっています。新しく臨床
検査医となられた先生方にもR-CPCの実践をお勧めして稿を終えます。
(深津俊明 名古屋掖済会病院中央検査部 臨床検査専門医)
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[声の広場-2]◆浜松医大に戻って
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2000年の4月から、約6年ぶりに浜松医大に帰りました。東京という都会、国立
がんセンター中央病院といういろんな意味で大きな病院で6年という歳月を費やし、
非常に勉強になりました。まず、東京という立地、国立がんセンターであることか
ら、海外からの研究者のセミナーが頻繁に開かれていたこと、新しい病院の新築、
新システムの構築に携わることができたこと、厚生技官として、厚生省のがん研究
助成金をいただいて研究ができたこと、医局制でいろんな科の先生と交流を持てた
こと、など、ある意味ではいろいろ刺激されることも多かったと思います。
大学病院とは異なる一般病院(といえるかどうか)の臨床検査部だったわけです
が、専任のスタッフは自分一人であること、いろんな面で、管理・運営もしなけれ
ばなりませんでした。何とか、研究費などもいただき、研究らしきことも行うこと
ができました。それまでの研究テーマとは異なり、がんという第一線の研究テーマ
に取り組み、いろいろ勉強できました。考え方なども広がったと思っています。た
だ? 今の日本の病院の検査室を考えると、生き残るためには、「人数が少ないの
でできません」ではすまなくなってきています。むしろ、逆にどんどん可能性を求
めて拡大していかなければ、現在の人員も維持できないようになってくる危険性も
あります。今までのルーチン検査にあぐらをかいているのではなく、広く高度先進
医療に携わっていく必要があるものと思います。少ない人員でどうするか、それは
マネージャーの腕のみせどころになるのではないでしょうか。
浜松医大・臨床検査医学の助教授、そして附属病院検査部の副部長としての現在
の立場で、少ないスタッフでいかに運営していくか、いろいろ悩んでみたいと思い
ます。どうぞ宜しくお願いいたします。
(前川真人 浜松医大臨床検査医学 臨床検査専門医)
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☆ JACLaP WIRE No.35 2001年02月20日
☆発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
☆編集:JACLaP WIRE編集室 編集主幹:森三樹雄
☆記事・購読・広告等に関するお問い合わせ先:
〒343-8555 越谷市南越谷2-1-50
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