JACLaP WIRE No.34 2001.1.12

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   本メールは日本臨床検査医会の発行する電子メール新聞です。
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============================≪  目  次  ≫============================
[寄    稿]◆検査医の未来ビジョン -余裕とカリスマ-
[お知らせ-1]◆第3回日本臨床検査医会常任幹事会・全国幹事会議
[お知らせ-2]◆会員動向(現在数  579名  認定臨床検査医401名)
[お知らせ-3]◆第6回アジア臨床病理学会に参加して
[お知らせ-4]◆第12回日本臨床微生物学会のご案内
[お知らせ-5]◆サイトメトリー技術者認定制度について
[お知らせ-6]◆国際セミナー開催のご案内
[ニュース]  ◆アフリカへの旅行者はマラリアの感染防御に注意が必要
        <WHOトピックス Press Dec.2000 WHO-143>
[Q&A]   ◆施設基準の免疫学検査
[Q&A]   ◆透析後のTP低下について
[Q&A]   ◆全血凝固時間廃止の説明
[Q&A]   ◆後天性第VIII因子欠乏症患者のAT、α2PI低下について
[Q&A]   ◆TTとへパプラスチンについて
[Q&A]   ◆DICにおける血小板とTATの相関
[Q&A]   ◆乳児におけるヘパプラスチンテスト
[声の広場-1]◆21世紀の臨床検査医に求められるもの
[声の広場-2]◆21世紀の検査医学への提言 -次世代の臨床検査情報-
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========================≪ JACLaP WIRE ≫============================
[寄 稿]◆検査医の未来ビジョン -余裕とカリスマ-
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 検査医(会)の未来ビジョン委員会が検査医会の常任委員会の一つとして新設さ
れた。若い(?)委員が真剣に討論を始めて1年が経過する。25〜30年前にも同
様な会が設立され、これが日本臨床検査医会の基になった。歴史は繰り返されてい
るのである。多くの委員の意見・訴えを聞いていると、その当時よりも政治的ある
いは情報を解析した意見が多い。インターネットなどにより医療情報・検査情報な
どが迅速かつ容易に入手できるようになった。当時は仲間同士で学術的に不足して
いる箇所を補えるように勉強会を開こう、時には雲の上の教授たちの愚痴を言いあ
おう、など田園的な内容が多かった。現在よりも医療状況は良く、経済も医療も右
肩上がりの時代であった。愚痴にも余裕があった。今は余裕がない。何かぎすぎす
している。「臨床検査は医療の余裕である」とは某先生の名言である。
検査医の未来にとってこれからの検査医一人ひとりの努力は欠くべからざるもの
であり、病院でカリスマになるべく行動して欲しい。多くはない人材がすべて全力
を出し切って、病院内で「検査のカリスマ」になるべきである。臨床病理学会(臨
床検査医学会と名称変更になったが)設立当時の教授にはカリスマがあった。しか
し、その人数は限られていたので、全国レベル、全国津々浦々までは臨床病理学が
浸透されはしなかった。当時は臨床検査専従医は全国で100〜200名のレベルで
あったが、現在は500余名であり、2〜3倍となった。一人ひとりがカリスマにな
ることで当時成し遂げられなかった検査医の認知がなされるであろう。「彼に聞け
ば、検査のことは何でも分かる」そんなカリスマにならなければならない。「すべ
ての検査室に検査医を」のスローガンは掲げておく必要がある。現在毎年50名余
の医師が我々の仲間になっている。2010年には念願の1,000名を超えて厚生省・
官庁へ訴えることができる。それも大切である。検体検査管理加算は検査医の必要
性を理解しているが、認知しているわけではない。この10年が正念場である。そ
れぞれの検査医がそれぞれの病院で「検査医」として認知されるべく行う余裕ある
努力が「臨床検査(医)の未来」を決定するであろう。
(日本臨床検査医会 常任幹事 高木 康)
 
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[お知らせ-1]◆第3回日本臨床検査医会常任幹事会・全国幹事会議事録
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1)日	時:平成12年11月1日	午前10: 00〜常任幹事会、11: 00〜全国幹事会
2)場	所:ビッグパレットふくしま・小会議室1
3)議	題
1報告
1)情報・出版委員会(森委員長)
・日本衛生検査所協会の広報誌「ラボ」の「検査の分かるページ」について
  来年3月で2年間の契約は終了するが、好評であり、新たに「検査からみた
  疾患」執筆依頼がきている。→執筆継続を承認した。
・JACLaP NEWSについて
  隔月、偶数月に順調に発行されている。
・会誌「Lab CP」について
  18巻1号は6月30日に、2号は10月25日に発行された。
  19巻については現在目次、執筆者を委員会で最終決定する予定である。
・JACLaP WIREについて月に2回位の割合でメール会員に送付している。
・要覧について
  2000年度版の要覧が完成し、6月に配付された。
2)教育・研修委員会(熊坂委員長)
・教育セミナーについて
・血液・免疫の教育セミナーは日大(3/05)で21人、大阪市立大学(3/19)で19人、
 精度管理・検査室管理の教育セミナーは昭和大学(4/15)で45名、微生物, 生化学,
 一般検査の教育セミナーは順天堂大学(6/04)で58名の参加で行われた。
・血液・免疫セミナーについては経費の関係もあり、関西在住の検査医会・員だけ
 で行うことができるかを決めて頂く。
・精度管理・検査室管理セミナーについては日衞協に「指導監督医」に受講するよ
 うに働きかけを持続する。
・GLMワークショップについて5/20、21日に自治医科大学でGLM ワークショ
 ップが14名の参加で行われた。
3)資格審査・会則改定委員会(渡邊委員長)全国幹事会で会長選出について審議を
 御願いする。
4)渉外委員会(村井委員長)振興会セミナーは7月7日に「検査室の運営方式の課
 題と将来展望」のテーマで行われ、150余名の参加があり、成功裏のうちに終了
 した。
5)検査医の未来ビジョン委員会(高木委員長)
・臨床検査医の未来を模索する「未来ビジョン委員会」が組織され、若手の委員を
 中心に検査医の未来をインターネット上で討議している。
6)会計報告(高木会計幹事)2000年度会計中間報告がなされた。
7)検査医会春季大会
・第10回の春季大会が4月21、22日札幌医大渡邊直樹大会長の主催で行われ、
80余名の参加があった。
・第11回は平成13年4月20、21日に巽典之(大阪市立大医学部)大会長のもと
 で開催される予定である。
2.審議事項
1)会長選出に関する会則改定について
・会則第15条	会長はA会員資格を持つ正会員を被選挙者として、正会員の選挙
 により有効投票数の過半数を以して選出し、幹事会の議を経て総会で承認する。
 ただし、過半数に達しない場合は上位2者の決選投票とする
・会則第15条 会長はA会員資格を持つ正会員を被選挙者として、正会員の選挙
 により有効投票数の最上位者を以して選出し、幹事会の議を経て総会で承認する。
・会則第15条 会長はA会員資格を持つ正会員のなかから、A会員10名以上の
 推薦を受けた者を立候補者として、正会員の選挙により選出し、幹事会の議を経
 て総会で承認する。
上記3案の内容について渡邊委員長から趣旨説明があり、第一案を可とした。→総
会で承認された。(11月1日付けで会則を改定する)
・有功会員・名誉会員の規定を定める時期にきているので検討して欲しい。
2)平成13年度予算案
平成13年度の予算案が提出され、承認された。収入の減少と会員増による経費の
増大があり、幹事会や事務経費などを切り詰める必要がある。
(常任幹事	高木	康)
 
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[お知らせ-2]◆会員動向(2000年12月末現在数)579名 認定臨床検査医401名
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−手続き順−
《入会》 村山寿彦 (国立熊本病院臨床検査科)
     倉辻忠俊 (国立国際医療センター臨床検査部)
《退会》 熊谷 宏 (青森市民病院臨床病理部)
     椎名晋一 (国民健康情報研究所)
     遠藤治郎 
     林  泰三 
 
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[お知らせ-3]◆第6回アジア臨床病理学会に参加して
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 第6回アジア臨床病理学会議は10月11日〜14日に韓国釜山市で開催された。こ
のアジア臨床病理学会議は日韓臨床病理学会議がその始まりであり、1975年韓国
ソウル第1回の会議が行われ、以後2年毎に韓国、日本で交互に開催された。その
後、台湾をはじめとするアジア各国の参加・入会があり、1990年第8回の日韓臨
床病理学会議は発展的に改組して「アジア臨床病理学会議」となり、第1回が札幌
で佐々木禎一、黒川一郎先生を会長として行われた。以後、第2回は韓国・済州島、
第3回は台湾・台北、第4回がインドネシア・Yogyakarta、第5回が高知で行われ、
今回第6回が順番として韓国・釜山で開催されたわけである。
 会長は釜山大学金教授、事務総長が孫教授で釜山市海雲台グランドホテルで開催さ
れた。今回は韓国医師のストライキにより韓国研修医の参加がなかったが、それで
も韓国医師210名、韓国以外の医師110名、それに企業150名、合計470名の参
加があった。日本からは58名が参加し、その他中国、インドネシア、マレーシア、
モンゴル、パキスタン、フィリピン、台湾、タイ、ウクライナ、ベトナムと文字ど
おりアジア全域から参加者があった。開会式では会長の金教授、釜山大学の朴学長、
それにWASPLaM次期会長の森教授の挨拶があった。森教授は韓国語で挨拶し、
参加者の喝采を浴びていた。韓国での医師のストライキという不慮の事故はあった
といえ、孫事務総長のもとで組織された学会は、2題の特別講演、2題の招待講演、
7つのシンポジウム、153題の口演・ポスター発表と充実した内容の会議であり、
参加者を十分満足させる大会であった。閉会式では発表のうち、座長が優れた内容
とした論文が表彰された。日本からは高橋伯夫先生(関西医科大学)と渡辺 卓先
生(杏林大学)が盛大な拍手のなか授賞された。
(常任幹事	高木	康)
 
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[お知らせ-4]◆第12回日本臨床微生物学会のご案内
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期日:平成13年2月3日(土)〜4日(日)
会場:長良川国際会議場(岐阜市)
会長:江崎孝行(岐阜大)
連絡先:岐阜大微生物学教室	TEL 058−265−1241
 
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[お知らせ-5]◆サイトメトリー技術者認定制度について
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 この度、日本サイトメトリー技術者認定制度が発足した。本制度は「サイトメト
リーに関する正しい知識と的確な操作技術により、真に医学・生物学の向上に寄与
することのできる技術者の育成」を目的として、日本サイトメトリー学会が中心と
なって設立された。実際の運営は、6学会(日本サイトメトリー学会、日本臨床検査
医学会、日本臨床衛生検査技師会、日本臨床病理同学院、日本臨床細胞学会、癌DNA
研究会)が組織するサイトメトリー技術者協議会によって推進される。
 本制度は医師、技師、その他の研究者を対象にしており、登録の際それぞれの資
格に応じてMD、MT、PhD といった称号を付記して区別する。また、当初はフロ
ーサイトメトリーのみが実際の対象となるが、将来的には他のサイトメトリー(例
えば共焦点レーザー走査型顕微鏡、FISH、CGHなど)も視野に入れて考えている
ため、その名称が「フローサイトメトリー技術者認定」ではなく、「サイトメトリ
ー技術者認定」となっている。
 本認定制度への申請資格としては、申請時において現在および通算して5年以上
上記6学会のいずれかの会員であること、ただし認定時には日本サイトメトリー学
会員であること、かつサイトメトリーの技術歴が1年以上あることが必要である。
資格取得のためには技術研修を受講し、その後筆記試験を受験して合格しなければ
ならない。認定証の有効期間は5年間で、引き続き認定を希望するものは更新申請
をしなければならない。更新資格としては、学会出席回数や論文数など一定の基準
を満たす必要がある。
 本制度の正式な発足は来年度からであるが、今年から暫定措置として、各学会か
ら一定の資格を満たしている者を推薦し、規定の講習を終了した者に認定証を発行
する予定である。以上の詳しい試料をご希望の方は、日本臨床検査医学会または
日本サイトメトリー学会事務局 (〒101-0062東京都千代田区神田駿河台1−8 
杏雲堂病院産婦人科内 TEL:(03)3292-2051, FAX:(03)3219-2755)
までお問い合わせ下さい。
(中原一彦  東京大学臨床検査医学 認定臨床検査医)
 
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[お知らせ-6]◆国際セミナー開催のご案内
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 このたびISIHS組織委員会では、国際臨床病理センター、在日米国商工会議所、欧
州ビジネス協会の後援をいただき、米国におけるDRG/PPSの経験、日本における
DRG/PPSの方向、そして日本でDRG/PPSが採用された場合、臨床検査へのイン
パクトはどのようなものになるか、などDRG/PPSをめぐる諸問題について、保健
医療システムの変革を考える国際セミナー「DRG/PPSの医療へのインパクト」と
題し、今回は特に「臨床検査発展への変革と道筋」を中心に、内外の専門家を招聘
し、別紙の通り国際セミナーを企画いたしました。
 DRG/PPSの医療へのインパクト―臨床検査発展への変革と道筋―保健医療シス
テムの変革を考えるセミナーが、2001年2月24日(土)午後1時30分〜4時30分
に、(財)社会文化会館 三宅坂ホール(東京都千代田区永田町1-8-1 
Tel 03-3592-7531) で下記のようなプログラムで開催される。資料代は
2,000円である。

・「日本における医療の変革はなぜ必要か」
  河合忠  国際臨床病理センター所長 自治医科大学名誉教授
・米国におけるDRG/PPSの経験と課題(仮題)
  エド・ヒューズ  ノースウエスタン大学教授
・DRG試行導入の計画状況と検査に係わる診療報酬改正の動向	
  井上 肇  厚生労働省保険局医療課 課長補佐
・日本版DRG/PPSの臨床検査へのインパクト(仮題)
  渡邊清明  慶応義塾大学医学部教授

本件に関する問い合わせ先:UPRゴリンハリス(セミナー事務局)
 藤沼、野口氏 Tel:03-5721-2653 Fax:03-5721-2591
 e-mail:[email protected][email protected]
(河合 忠  国際臨床病理センター所長 認定臨床検査医)
 
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[ニュース]◆アフリカへの旅行者はマラリアの感染防御に注意が必要
       <WHO トピックス Press Dec. 2000 WHO-143>
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 WHOによればアフリカへの旅行者は帰国後、マラリアに感染する事例が多数報
告されており、死亡者もでている。抗マラリア薬の使用と蚊に刺されを防止するこ
とにより大多数の死亡例は防ぐことができる。
 スペインやドイツからの旅行者は、セネガルやガンビアなどから帰国する寸前に
マラリアに感染している。WHOはMefloquineを予防薬として旅行3週間前に服
用することとし、出発前に服用できなかった場合には、Doxycyclineの毎日服用を
推奨している。マラリア感染地域に旅行する期間が極めて短い場合、旅行者はマラ
リア予防薬の服用が必要でないと誤解している。たとえに3分でも感染地域に入る
場合は、マラリア蚊に刺され感染する可能性があるとWHOは警告している。
 マラリアの初期には、発熱、疲労、カゼ様の症状を呈す。発熱の有無にかかわら
ず、頭痛、筋肉痛、筋脱力感、嘔吐、下痢、咳などがあった場合は、マラリア感染
を疑う必要がある。マラリアは早期に治療を開始すれば治癒できる病気である。毎
年100万人の患者(特にアフリカの子供)が死亡し、100か国で3億人の患者がいる
と推定されている。
(森 三樹雄	獨協医大越谷病院 認定臨床検査医)
 
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[Q&A]◆施設基準の免疫学検査
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(Q)検体検査管理加算(I)に関する施設基準の免疫学検査について、ABO式血
液型、Rh(D) 式血液型、クームス試験(直接・間接)が実施できる体制にあ
ることとなっていますが、以上3点の検査に必要な検査試薬は、最低何を用意すれ
ばよいでしょうか。不規則抗体スクリーニング用血球試薬は、必要でしょうか。一
応、次のとおりに揃えようと思っています。
・ABO式血液型
・抗A血清、抗B血清、A1血球試薬、B血球試薬
・Rh(D)式血液型
・抗D血清、Rh−hrコントロール
・クームス試験(直接・間接)
・クームス血清、クームスコントロール、インキュベーション
 メディウム、不規則抗体スクリーニング用血球試薬
(佐賀県 病院勤務 臨床検査技師 経験年数13年)

(A)「ABO式血液型、Rh(D) 式血液型、クームス試験(直接・間接)が実施で
きる」ということであれば、抗体スクリーニング用血球試薬はそろえる必要はあり
ません。しかし、輸血が施行されている施設でしたら、輸血前検査としてABO式
血液型、Rh(D) 式血液型、交差適合試験だけでなく抗体スクリーニングも実施して
いただきたいと思います。そのためには、抗体スクリーニング用血球試薬ならびに
不規則抗体同定用血球試薬が必要です。
また、ABO式血液型のウラ試験実施時には、できればO血球もあった方がよいと
思います。O血球に凝集がないことを確認する目的です。寒冷凝集、連戦形成、汎
凝集反応、不規則抗体の存在(ウラ試験で反応するのは主としてIgMですが)など
でO血球にも凝集が見られる場合は、A血球、B血球の反応態度をそのまま判定で
きないことがあります。抗体スクリーニング用血球は、ウラ試験のO血球に使用で
きます。
回答日:2000年11月20日
回答者:村上純子	日本大学臨床病理	認定臨床検査医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(免疫検査/輸血検査)] (ID20000824a)
 
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[Q&A]◆透析後のTP低下について
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(Q)私の質問について、透析後に除水され、濃縮されTPは上昇する患者が理論
的にマッチしていることは理解できました。それに対し、極まれではございますが、
低下したりする患者がいることがあります。この患者はどう説明できるのでしょう
か、教えてください。(臨床工学技士)

(A)再度のご質問ありがとうございます。
ご指摘のように、透析後にTPが低下する患者さんも現実にはいらっしゃいます。
このような患者さんは、以下のように考えることが出来ます。
1.血管内の水分量(循環血液量)が透析前よりも増加している
 残存腎機能がまだ保たれており、除水量があまり多くないときに生じやすいので
すが、透析液のナトリウム濃度が、血清よりも若干高めに設定されているため、血
管内外の浸透圧格差が大きくなります。そのため、透析中に細胞外液や間質からの
水の流入(plasma refilling)が除水量(すなわち、血管内より透析液に移動する
水分量)よりも大きくなって血管内の水分量が透析前よりも増加するため、蛋白濃
度はむしろ希釈され、TPが低下して見える、ということは考えられます。また、
同様のことは、生食の補液、高張性食塩水(10%NaClなど)の注入が透析終了
直前などに行われたときなど、にも起こり得ます。
2.サンプリングの問題(人為的な希釈)
 統制後の採血はどの様に行っているのでしょうか?もし、動脈側の穿刺針
からの採血であれば、回収中の静脈側に返血される生理的食塩水の一部が再循環し
て、検体の中に混入する、ということも考えられますし、返血終了後の静脈側の穿
刺針から、ということであれば、注射器による十分なポンピングを行っていないた
めに、やはり、洗浄用の生食の混入の可能性、を考えなくてはなりません。
 上記、1、2、どちらの場合もおそらく、TPが低下する場合は、ヘマトクリット
も低下しているはずです。もし、ヘマトクリットの低下を伴わない、という場合に
は、分析上の問題も考えなくてはならないでしょう。
回答日:2000年11月30日
回答者:矢内 充 日本大学臨床病理 認定臨床検査医、日本透析医学会認定医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)] (ID20001028)
 
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[Q&A]◆全血凝固時間廃止の説明
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(Q)手術前の検査から全血凝固時間を除いて、APTTに替えると言う話があるの
ですが、 麻酔科の医師が 「それは困る」と言ってきました。どうにかして、医者
を説得したいのですが、どうしたらいいのでしょうか? 時代の流れからなんて言
えないですよね。参考になる資料、文献などありましたら、紹介していただきたい
のですが。(不明)

(A)麻酔科の医師が「何が困るのか」、何の目的で全血凝固時間を要求するのか
理由を聴いて下さい。その医師が「全血」という言葉だけを捉えて、検査の目的の
意味を理解していないのではないでしょうか。麻酔科の医師の理由が漠然としたも
のであれば、全血凝固時間の以下の検査手順をまずは具体的に説明すべきでし
ょう。
 全血凝固時間の場合、注射器を穿刺し、血液が注射器に流入した瞬間に時間の測
定を始めます。血液を約3ml採取した後、あらかじめ保温しておいた試験管2本に
各々1ml入れ、恒温槽中に3分間静置後、1本ずつ凝固するまでの時間、すなわち
流動性が消失するまでの時間を測定します。以上の手順から判るように、手技の
影響を受け易く、捉えている時間も大雑把なものです。主に内因系の凝固異常を捉
えていますが、第VIII因子、第IX因子が10%以上の軽症例では正常値を示すこと
があります。そして外因系の第VII因子欠乏症では正常になります。災害時など
の試薬の入手が不可能な場合を除いて、感度と再現性のことを考えれば、APTTの
代わりに敢えて全血凝固時間を行う利点はありません。もし全血凝固時間の問題点
を指摘した文献を探すのであれば、この検査に代わって台頭してきた部分トロンボ
プラスチン時間(PTT)の当初のものから探されるとよいでしょう。
 例えばLangdell,R.D. :Effect of antihemophilic factor one-stage clotting time, 
J.Lab.Clin.Med.,47:637-647,1953、もしくはRodman,N.F.: Diagnosis and 
control of the hemophiloid states with the partial thromboplastin(PTT) test , 
Am.J.Clin.Path.,29:525-538.1958を調べてみてください。
回答日:2000年11月30日
回答者:腰原	公人	東京医大臨床病理	認定臨床検査医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)](ID19990220a)
 
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[Q&A]◆後天性第VIII因子欠乏症患者のAT、α2PI低下について
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(Q)後天性第VIII因子欠乏症の患者のインヒビター出現例において、ATIII、
α2PIが低下が見られました。これは、どのように解釈すればいいのでしょうか?
また、一般的におこり得ることなのでしょうか?(大阪府 薬剤師)

(A)第VIII因子に対する自己抗体が出現する基礎疾患としては以下のものが上げ
られます。慢性関節リウマチ、分娩後、悪性疾患(リンパ性白血病、悪性リンパ腫、
固形腫瘍、薬剤性(ペニシリン、アンピシリン、フェニトイン、クロラムフェニコ
ール)SLE、その他の自己免疫性疾患(側頭動脈炎、皮膚筋炎、潰瘍性大動脈炎、
筋無力症、多発性筋炎、シェーグレン症候)、皮膚疾患(乾癬、天疱瘡、剥離性皮
膚炎、遠心性環状紅斑)、気管支喘息、サルコイドーシス、呼吸不全、輸血、糖尿
病、肝炎、高グロブリン血症、糸球体腎炎、多血症などがあります。また半数近く
は基礎疾患が不明です。これらの疾患で出現するインヒビターはIgG4が優位で、抗
原1分子に抗体1分子が結合し、抗原複合体は格子形成、高分子化をきたしません。
機能的に単一に結合し、その活性を抑制しています。第VIII因子活性低下のみの
現象では影響が及ばないAT、α2PIまでも抑制することは考えられません。むしろ
肝機能障害や消費性の低下が基礎疾患から起きている可能性を考えるべきでしょう。
回答日:2000年11月30日
回答者:腰原	公人	東京医大臨床病理	認定臨床検査医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)](ID19990614a)
 
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[Q&A]◆TTとへパプラスチンについて
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(Q)トロンボテストがPIVKAの影響を受けて、ヘパプラスチンテストが影響を
受けない理由と、トロンボテストがどのような形でPIVKAの影響を受けるのかに
ついて教えてください。(広島県	臨床検査技師)

(A)経口抗凝血薬は肝でのビタミンKの代謝を阻害することによって、ビタミン
K依存性の4つの凝固因子のN末端ペプチド鎖におけるγ−カルボキシグルタミ
ン酸(Gla)の形成を阻害し、Gla形成以前の前駆段階の物質(protein induced by 
vitamin K antagonist, PIVKA)が蓄積します。PIVKA IIは、Xaによりトロンビ
ンへの活性化を受けません。しかも正常な因子の作用と拮抗することで、抗Xaの
作用を持つ異常プロトロンビン分子です。よって検体中のII,VII,X因子の凝固活性
を総合的に評価するトロンボテストでは影響が見られます。
 トロンボテスト試薬は内因子系を活性化する血小板第3因子(リン脂質)と
ウシ脳組織トロンボプラスチン試薬を混合し、これにウシの硫酸バリウム吸着血
漿(I,V,VIII,XI,XII因子源)、カルシウムが含まれています。へパプラスチンテス
ト試薬はトロンボテスト試薬中のウシ脳トロンボプラスチンの代わりに兎脳トロ
ンボプラスチンを用いており、これはPIVKAのX因子阻害作用の影響を受けにく
いものです。さらに試薬量に対する検体量が5分の1になるために、検体中の
PIVKAの影響は一層出難くなります。
回答日:2000年11月30日
回答者:腰原	公人	東京医大臨床病理	認定臨床検査医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)](ID19990910a)
 
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[Q&A]◆DICにおける血小板とTATの相関
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(Q)DICなどで、血小板の減少、TATの増加が起こる時、このふたつに相関関係
があるのでしょうか。私は動物の実験で、ラットDICモデルをおこなっているので
すが、きれいな相関関係がありません。ヒトについてはどうなのかと思って質問し
ました。(東京都 臨床検査技師)

(A)DICは感染症、悪性腫瘍、組織損傷、血管病変、ショックなどの様々な基礎
疾患によって惹起されます。血小板の減少に関しては、臨床の場合は骨髄造血能、
脾腫、出血性の消費などの要因も考慮しなければなりません。凝固活性化を鋭敏に
捉えるTATなどの分子マーカーは、血小板数が減少する前のDIC準備状態ですで
に動き出します。さらに病態が進行して、消費性凝固障害が加わったいわゆるDIC
の状態になって、血小板の減少が始まります。したがってこのステージ以降に、血
小板数とTATの逆相関の検討できるわけです。しかしながら臨床の現場では、こ
の時点ではすでに治療が開始されています。
 Gandoらによって基礎疾患として重症感染症の関与が多いSIRS
(systemic inflammatory response syndrome:全身性炎症症候群)においては、
DICスコアとTATの相関が報告されています(superscript: 1)(superscript: ))。
DICスコアは血小板数、FDP、フィブリノゲンといったマーカーを用いたスコアリ
ングです。人間ではありませんが、三重大学第二内科の和田英夫先生のヒヒでの大
腸菌(エンドトキシン)の投与実験では、投与24時間後に著明な血小板・フィブ
リノゲン・FDPの変化の見られたDIC群において、TATは投与2〜12時間後に著
しく上昇したとのことです(superscript: 2))。
参考文献)
1) Gando Skameue T et al.:Participation of tissue factor and thrombin in 
posttraumatic systemic inflammatory response syndrome. Crit Care Med,25:
1820−1826,1997.
2) 和田英夫:第44回SCC学術報告 subcommittee on DIC, 1998年度国際血栓
止血学会SCC 報告集:114−123,1999.
回答日:2000年11月30日
回答者:腰原	公人	東京医大臨床病理	認定臨床検査医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)](ID20000125a)
 
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[Q&A]◆乳児におけるヘパプラスチンテスト
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(Q)当院では乳児の一ヶ月検診の際、ヘパプラスチンテストを実施しております。
その際、足のかかとからヘパリン処理済の毛細管に採血しております。ヘパリン採
血による血漿を用いて、アズウェルのオプション2で測定しています。この時検量
線は、クエン酸ナトリウム採血による血漿用のものを使用いています。試薬はロシ
ュ・ダイアノスティックス株式会社の複合因子測定試薬「RD」です。
 先日ドクターから検査値が不安定であるという指摘を受けました。考えられる原
因はヘパリン採血か、組織液の混入です。ヘパリン採血による血漿とクエン酸ナト
リウム採血による血漿では、どのような違い があるのでしょうか。また、ヘパリン
採血はどのような影響を受けるのでしょうか。検量線はクエン酸ナトリウム採血に
よる血漿用のものを使用したのでよいのでしょうか。現在、全血による測定を検討
中です。他に良い方法があれば教えていただきたく思います。(愛媛県 臨床検査
技師)

(A)ヘパリンはATの有する抗トロンビン、抗Xa作用を促進させるものです。
すなわち活性型凝固因子を直接阻害しています。それに対してクエン酸ナトリウム
は、血液凝固に必須な血液中のカルシウムと結合しその働きを抑えることで、抗凝
固作用を発揮しています。3.2%クエン酸ナトリウムを用いて採血された検体とカル
シウムが含まれているヘパプラスチンテスト試薬を混和することで、凝固が開始さ
れるわけです。ヘパリン処理された毛細管での採血では、抗トロンビン作用が残り
ます。また組織液が混入しても結果は不安定になります。3.2%クエン酸ナトリウム
を用いた静脈採血法が最も適しています。静脈採血ができない場合は、乳児の足蹠
をメスで切開して、絞り出さずに毛細管を用いて採取しなければなりません。

回答日:2000年11月30日
回答者:腰原	公人	東京医大臨床病理	認定臨床検査医
[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)](ID20000803b)
 
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[声の広場-1]◆21世紀の臨床検査医に求められるもの
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 新世紀の臨床検査医のあるべき姿を考える際に問いかける問題点を整理すると、
1. 臨床検査の医療における役割の変化、
2. 画期的な検査項目の開発と臨床医への診療支援、
3. 臨床検査技師の進みつつある方向性の理解と病院検査部におけるその役割の変化、
4. 急速な進化を遂げている情報技術 (information technology=IT) の検査分野へ
  の積極的な導入とこれを利用した効率的な検査の臨床応用、
5. 臨床医に対する検査関連事項についての指導力の強化、
  などの課題が脳裡に浮かぶ。これらの点を十分考慮して臨床検査医のあり方を自
  問し、その目標に向かって臨床検査医の行動計画を考えたい。

臨床検査の医療における役割
 保険医療制度が経済的危機状況に陥っているために一過性の措置として検査費
用の抑制策が講じられている。しかし、国民総生産(GNP)に対する比率を考えると
日本国民は未だ欧米の半分強程度を医療費に支出しているのであり、抜本的な保険
医療制度の改革がされれば、少なくとも現在と同程度の臨床検査を用いる医療を存
続できるものと推測できる。このような見方が一般的であろう。検査を多用する医
療に馴染みすぎた日本の臨床医が、今後、診療の原点に立ち返って経験と五感に頼
り、ヨーロッパ方式の最小限の検査項目で医療を実施する方向に変化するとは想像
しがたい。しかし、現実に検査多用型の米国様式と検査をあまり用いないヨーロッ
パ型の二つの医療形態が存在しているのは事実であり、日本の医療が今後どちらの
道を選択するかについては部分的には臨床検査医の行動にかかっているとも言え
よう。すなわち、これまで以上に優れた客観的な情報を提供する検査項目を世に出
し、その精度管理と解釈の診療支援を徹底することで臨床検査の重要性を示せば、
臨床検査の分野が衰退することは考えられない。また、今後は医療経済学が真剣に
問われるはずであり、臨床検査のcost/effectivenessを問われれば、これが優れた
手法と認められるはずである。客観性が重視される現代においては、医療訴訟では
臨床検査値が最重要視されることは明らかであり、臨床検査なしではあまりに大き
なリスクを背負うことになりかねない。しかし、DRG/PPSなどの包括医療が本格
的に導入されれば、いずれにしても検査項目は医療の形態の変遷に合わせて淘汰さ
れていくことは間違いない。結論として、臨床検査は将来に向かって伸びるとして
も廃れることはないであろう。しかし、この場面でこそ臨床検査医の実質的な指導
力が求められる。果たして、このような場面で真正面から取り組める臨床検査医が
何人いるかが問題であろう。

臨床検査技師の変容と臨床検査医に求められる対応
 臨床検査技師(以下、MTと略す)の役割の変化を予測したい。今後、MTは摩
擦を避けてより協調して政界を含む各分野と連携を保つことで臨床検査業界のあ
らゆる場面での発言力を高めることになるものと考えている。今後、MTは採血業
務、緊急検査の繁用、生理機能検査の拡充などに伴って検査室から臨床の現場に顔
を出すことで、より疾病と臨床検査とのかかわりを実感し、医療をより深く学ぶ方
向に変化するであろう。従来、医師にしか与えられていなかった検査データの判断
(現実には診断)がMTの手によってなされることになる方向に進みつつある。す
なわち、生理機能検査では、例えスクリーニングであっても一定の診断をMTがす
ることで医療が始まる可能性があり、診断の行方を左右する重要な任務をMTが掌
ることになる。MTの知識欲は単に直接検査に関連したものに止まらず研究にも進
展するものと想像できる。また、そのような方向への変化を後押しする制度面の拡
充もなされるものと期待できる。すなわち、医療の中で働く業種間で互いにそれぞ
れの領域に入り組んで、複雑な構成に変化するものと想像される。当大学において
もMTが医学博士を目指して研究課程に入っているし、修士課程への入学を考えて
いるMTも存在する。このように、MTと臨床検査医との役割分担が不明瞭になり、
ボタンを掛け違うと両者間で摩擦を生じて、ゆくゆくは臨床検査医不要論が登場す
ることも視野に入れた行動が求められる。すなわち、後述するように臨床検査医の
社会的地位を確固たるものにする環境整備が遅れている現状を十分に認識して早
急な改変と充実が望まれる。

検査医の役割
 このような背景のもとで臨床検査医の役割が問われることになる。従来から存在
し、価値の薄まった検査の見直しに勇気を持って取り組み、思い切った取捨選択を
実行することがまず求められる。あらゆる検査には利点・欠点が存在し、その個々
の問題点を議論すればすべての検査が必要になるが、医療費の削減を念頭におけば
項目数を制限せざるをえない。現在進行中の evidence-based medicine (EBM) の
手法を用いた解析で一定の評価が得られなければ保険収載から除外すべきであろ
う。使用頻度の低い項目を残せばランニングコストが上昇し、医療費の高騰に反映
されるであろう。次に求められるのは新しい有用な検査項目の発掘である。国際・
国内学会は毎年増加の一途を辿っており、新たに発見される生理活性物質、代謝関
連物質は数多い。これをルーチンの臨床検査として測定する技術はほぼ確立されて
いるといっても過言ではないので、その有用性が確認されれば容易に臨床検査項目
となる。触手を幅広く広げて新しい検査項目の開発を行い、検査の淘汰を推し進め
るのは臨床検査医の役目である。しかし、この点においては、今後、MTとの間で
役割分担が問われることになるであろう。すなわち、新たな検査、陳腐になった検
査項目の排除などの具体的なデータはMTが創り出し、評価するだけの実力をつけ
てくる可能性が高く、この種の仕事の多くがもはや臨床検査医の仕事ではなくなる
可能性がある。常に高度の検査項目を探索し、測定法を吟味して、疾患への適応を
考えるのが検査医の仕事となるであろう。より実力を備えるMTにさらに磨きをか
けるような教育を行うのも検査医の責務である。検査部内での症例を中心にしたカ
ンファランスを頻回に行うことも重要である。院内に検査情報を開示することはこ
れからの検査医に最も期待される業務であろう。その延長にはクリニカル(クリテ
ィカル)〓パスがあり、より効率的な検査の運用を臨床医に教示する。このような
仕事で実力を最大限発揮できる手段がITであり、これを大いに利用することであ
る。多忙な臨床医が検査部を訪れて検査について相談することは困難である。病院
情報システムは、早晩すべての病院で整備されることは間違いない。電子カルテへ
の動きは急で、主な大学医学部附属病院では数年以内にこれを取り入れるものと思
われる。その際には、電子カルテが情報を集約する最も効率的な手段となるので、
これを用いて院内への広報を効率的に行う。検査情報室の設置は不必要かもしれな
いが、これを補完する情報システムの構築が必要である。DRG/PPSに伴う効率的
な検査項目の選択を指導することが検査医の重要な仕事になることが推測される。
最も効率的な検査項目の選択だけではなく疾患に特異的な検査情報、その際に必要
な患者の条件、採血手技の注意点、などを指導する。検査の包括的な精度管理が改
めて問われることになり、検査医の存在が大きくなる場面である。すでに、多くの
病院で実用化されているであろうが、臨床検査部のホームページを拡充して、検査
がスムーズに行えるように適切で詳細な情報を開示することは最も簡単で意義の
ある手法であろう。基準値とその算定基礎データの呈示、慣用単位からSI単位へ
の換算の支援、などもITが最も得意とする機能である。

指導者としての臨床検査医
 以上のような臨床検査医の業務を遂行するには医師個人に種々の要件が求められ
る。臨床医と異なり、患者、事務職員や看護婦だけでなく検査技師を初めとして多
くの職種の人々と交流し、指示を出す必要がある。時代を問うことなく必要なこと
であるが、これをスムーズに遂行するには職員の信頼を集め、組織をまとめること
ができる指導者としての素質が問われる。すなわち、検査業界においては常に医師
が指導的な立場に立たなくてはならないことは運命づけられており、管理能力を問
われることを覚悟して検査部運営にあたることが必要であることは言うまでもない。
検査医はこのことを常に自覚する必要がある。

臨床検査医の育成
 果たして、このような資質と行動力のある検査医が人材として得られるかが問わ
れる問題点である。現在の検査医学講座では、独立してこのような検査医を養成す
ることは困難である。すなわち、あらゆる分野の臨床に精通していなければならな
いとまでは言わないが、少なくとも内科的な1分野に精通しておれば多くの臨床の
分野についてもある程度の知識を持つ事になり、それで十分な臨床検査医となれる
であろう。しかるに、一部の検査医学講座の医師は基礎医学系(生化学、病理学)
であって、かつ、臨床医としての活動経験を持たないか、現に臨床を担当していな
い。すでに、私が JACLaP WIRE No. 27 および Laboratory and Clinical Practice 
18巻2号の紙面上で述べているので繰り返しは避けるが、臨床検査医として相応
しい人材の育成、検査医学講座ならびに検査学関連学会の在り方について抜本的な
対策をとることが21世紀の検査医学および検査医の存在を決定づける最も大切な
点であると確信している。
 本稿を起点として、臨床検査医のあり方が本格的に議論され、あるべき姿を浮き
彫りにして、早期に一致団結した体制の構築が実現することを切に祈念する。
(高橋伯夫	関西医大病態検査科	認定臨床検査医)
 
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[声の広場-2]◆21世紀の検査医学への提言−次世代の臨床検査情報−
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 臨床検査室に検査情報処理が可能なコンピューターが導入されたのは、80年代
であるが当時はデータの出力が中心で付加価値の高い検査情報の提供はできなか
った。80年代中頃から国立大学病院検査部に搬送システム結合型自動分析装置の
導入とともに、検査部門に大型コンピューターが入り始め、診療支援システムから
検査情報を提供出来る環境が整った。
 1986年佐賀医大検査部は臨床化学・血液等のデジタル情報、心電図・脳波等の
アナログ情報、病理・細胞診等の文字情報を患者ごとに管理する、「臨床検査情報
一元管理システム」を開発し、従来の検査情報の考え方に一石を投じた。
 1990年に入るとコンピューターの価格低下と性能向上により、高品質な画像を
含む2種類の情報提供が可能となった。一つは「遠隔医療」に対応する病理・細胞
診画像や心電図・脳波等の伝送である。もう一つはわが国の医学教育の貧困を補う
教育用検査情報提供システムである。
 聖路加看護大学の日野原重明学長は「日米の医学教育スタッフの比較と日米医師
の臨床能力の差について」で、ハーバート大学の内科系フルタイムの教官数は96
年の調査で1,480名、ジョンズ	ホプキンス大学は439名に達するが、わが国は京
都大学医学部で54名、佐賀医大は42名に過ぎないと報告した。このため、日本の
医学部では広い領域に跨る感染症や免疫疾患などの臨床教育を十分に行うことは
不可能に近い。ここで近未来の検査情報として必要になるのが、臨床医学教育を補
完する検査情報システムの開発と提供であると考える。
 98年佐賀医大検査部感染制御室は総合的感染症情報システム Dr. Fleming を開
発した。このシステムは検体の分析情報に加え、院内感染疫学情報、抗菌薬適正使
用情報、微生物情報、教育用画像情報など感染症に関するあらゆる情報を院内には
診療支援システムで、院外にはインターネットで提供するシステムである。
 私は21世紀の検査部の役割は臨床検査情報を一病院、一大学内での限定的提供
でなく、ITを使った全国的検査情報ネットワークによる情報提供システムの構築に
あると考える。このネットワークにより、各検査部は自分の得意とする分野の情報
を提供し、その対価として必要な情報を得ることが可能になり、日本の臨床医学教
育で不足している知識が補完され臨床検査医学と臨床医学の水準が上がることが
期待される。Dr.Flemingはhttp://www.virus.hosp.saga-med.ac.jpにアクセスし
てください。
(只野壽太郎	佐賀医大臨床検査医学	認定臨床検査医)

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☆JACLaP WIRE No.34 2001年1月12日
☆発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
☆編集:JACLaP WIRE編集室 編集主幹:森三樹雄
☆記事・購読・広告等に関するお問い合わせ先:
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