JACLaP WIRE No.31 2000.10.31 



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         JACLaP WIRE No.31 2000年10月31日
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[ニュース]◆第17回認定臨床検査医認定試験合格者
[ニュース]◆第6回アジア臨床病理学会
[ニュース]◆第2回アジア臨床検査標準化コロキアム

[Q&A] ◆臨床的意義のある異型リンパ球の割合
[Q&A] ◆検体検査管理加算(II)とブランチラボ・FMS
[Q&A] ◆表計算ソフトによるツインプロットグラフの作成
[Q&A] ◆インフルエンザにおける血小板増多
[Q&A] ◆産婦人科検体に見られる幼若顆粒球
[Q&A] ◆重心動揺検査
[Q&A] ◆小児などの体表面積の求め方
[Q&A] ◆24時間クレアチニンクリアランスが著増を示す原因
[Q&A] ◆透析後の総蛋白濃度上昇の原因
[Q&A] ◆定期健診用検体によるレニン活性の測定
[Q&A] ◆透析後採血のタイミング
[Q&A] ◆臨床検査技師と病理解剖

[編集後記]◆(会長の指示により削除しました)
 
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[ニュース]◆第17回認定臨床検査医認定試験合格者
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 第17回認定臨床検査医認定試験の合格者が日本臨床病理学会より以下の通
り発表された。

  氏 名     所   属
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 安東 由喜雄  熊本大学大学医学部 臨床検査医学
 飯沼 由嗣   名古屋大学医学部付属病院 検査部
 伊藤  章   横浜市立大学医学部付属病院
 岡部 英俊   滋賀医科大学 臨床検査医学講座
 緒方  衝   海上自衛隊潜水医学実験隊
 小野 順子   福岡大学医学部 臨床検査医学
 海渡  健   東京慈恵会医科大学付属病院 中央検査部
 加藤  圭   防衛医科大学校病院 検査部
 加藤 元一   京都第二赤十字病院 病理科
 亀井 敏昭   山口県立中央病院 病理科
 岸川 正大   愛知県コロニー発達障害研究所
 北本 康則   熊本大学医学部 第三内科
 木村 孝穂   群馬大学医学部附属病院 臨床検査医学
 小林 佳美   秋田大学医学部附属病院 中央検査部
 小杉 眞司   京都大学医学部付属病院 検査部
 齋藤 勝彦   富山市立富山市民病院 中央研究検査部病理科
 佐々木 なおみ 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院 臨床病理科
 三家 登喜夫  和歌山県立医科大学 臨床検査医学
 庄司  優   弘前大学医学部 臨床検査医学講座
 白石 泰三   三重大学医学部 病理学第二講座
 鷹巣 晃昌   京都市立病院 検査科
 千葉 仁志   北海道大学医学部付属病院 検査部
 月山 雅之   山本病院
 辻本 正彦   大阪警察病院 臨床検査科
 津田 博子   中村学園大学 家政学部
 早川 清順   愛知県厚生農業協同組合連合会 更生病院 病理科
 原田  大   札幌医科大学 第一病理学教室
 日野田 裕治  山口大学医学部 臨床検査医学講座
 廣川 満良   徳島大学医学部 第1病理
 藤原 久美   医療法人里仁会 興生総会病院 病理
 藤原 睦憲   日本赤十字社医療センター 検査部
 藤原  恵   広島赤十字原爆病院 病理部
 益子 貴臣   北里大学医学部 臨床病理学教室
 松熊  晋   自衛隊中央病院 研究検査部 病理課
 松永  隆   大阪府立成人病センター 臨床検査科
 宮崎 彩子   大阪医科大学 病態検査学教室
 物部 泰昌   川崎病院 病理部
 森野 英男   関西労災病院 病理科・第2検査科
 山田 鉄也   岐阜市民病院 中央検査部
 山鳥 一郎   国立岡山病院 臨床検査科
 横山 繁生   大分医科大学 病理学講座
 渡辺 伸一郎  東京女子医科大学 臨床生化学科
 和田 久泰   岐阜大学医学部 臨床検査医学講座
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(合計43名)
                            以上

[2000年10月10日 編集委員 西堀 眞弘]
 
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[ニュース]◆第6回アジア臨床病理学会
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 第6回アジア臨床病理学会が平成12年10月11日から13日まで韓国のプサン郊
外にあるHaeundae(海雲台)Grand Hotelで開催された。世界14カ国より約360
名が参加し、展示は35社と盛大であった。韓国では医薬分業に反対して医師が
ストライキをしているため、韓国の臨床病理学のレジデント約40名が参加でき
なかったのは大変残念なことである。特別講演は2題で米国のペンシルバニア
州立大学のDemers教授によるFinancialManagement and Clinical Laboratory
とスクップス研究所のChan助教授によるAutoantibodies in Systemic
Rheumatic Diseases and Cancerの講演が行われた。その他、シンポジウムと
して次の7題、アジアにおける薬剤耐性、Point of CareTestingと中検の全自
動化、脂質の最近の進歩、徴生物学の最近の話題、フローサイトメトリーの最
近の進歩、分子診断の最近の進歩、輸血検査の精度保証などがとり上げられ、
活発に討論された。企業がスポンサーとなったワークショップが4テーマに分
かれ開催された。日本の臨床検査医の諸先生方が司会や演者として活躍した。

 10月10日午後7時から開催されたALCP会議(アジア臨床病理学会代表者会議)
では、次回の第7回アジア臨床病理学会が2002年に台湾臨床病理学会が主催す
ることに決定した。今後、アジア臨床病理学会の規約を作成し、国際学会とし
て運営することになった。また新たに中国が加盟を申請し、認められた。今
後、フィリピン、モンゴルも加盟する意向である。

[2000年10月22日 獨協医大越谷病院 森 三樹雄]
 
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[ニュース]◆第2回アジア臨床検査標準化コロキアム
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 本会(The 2nd Asian Colloquium on Standardization and Harmonization
in Laboratory Medicine)の第1回は1999年2月に日本学術振興会の主催のも
と、インドネシア大学(ジャカルタ)で開催され、第2回総会が2000年10月
21-22日の2日間、神戸に於いて開催された。参加国はアジア地区7ヶ国(イン
ドネシア、韓国、シンガポール、米国、タイ、フィリッピンおよび日本)から
88名の参加を得ることができた。本会では主題の如く、(1)臨床検査のアジア
地区の標準化とハーモナイゼーション、(2)アジア地区臨床検査国際的外部精
度評価、(3)検査室運営、(4)各国の臨床検査レベルの実状分析、(5)臨床検査
新技術、(6)情報化技術の展開などが討議の中心であり、主としてEQAに携わる
各国代表の方々が参加された。わが国からは三輪史朗日本学術振興会理事、河
合忠国際臨床病理センター所長、森三樹雄WASPaLM次期会長を始め多くの先生
方の参加を得ることができ、国際交流と意見交換の実を挙げることが出来た。

 次回は2001年にシンガポールで開催することが採択され、盛会裡に終了する
ことができた。なお本プロシーディングは神戸大学国際医学交流センター学術
年報に掲載される事になっている。本会の運営に対する多くの方々のご尽力に
対して深く感謝したい。

[2000年10月25日 第2回総会長 巽 典之(大阪市立大学)]
 
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[Q&A] ◆臨床的意義のある異型リンパ球の割合
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(Q)血液塗抹標本で、異型リンパ球の割合はどの程度で臨床的意義があるの
でしょうか。また逆に、どの程度であれば健常人にも認められるのでしょう
か。(大阪府 大学病院検査部所属 臨床検査技師 経験年数半年)

(A)解答の前に貴方の施設では白血球塗抹標本をどの様に作成しているの
か、そしてどの様に分析しているのかを明確にする必要があります。具体的に
は採血直後にウェッジ法で塗抹乾燥し、ギムザ染色法を実施し、観察は至適部
位を選定しているのか、倍率はどうか顕微鏡の種類はどうか、そして異型リン
パ球の出てきた標本の臨床的背景、全血算はどうであったかなどを検討した上
でその異型リンパ球の妥当性を決定しなければなりません。さら重要なのは観
察する技師のリンパ球分析能力がどうかです。米国のNCCLS-H20-Aでも個人能
力評価を重視しています。すなわち技術的問題、検体特性、そして個人特性を
総合するべきでしょう。例えば末梢血には可成りの数の幹細胞が流れていま
す。

 異型リンパ球は反応性リンパ球ですから個人の環境で出現は当然大きく変動
する事になりますので常に一定比率流れていると判断出来ないことになりま
す。自動白血球分類は電気的あるいは光学的性状の分析ですのでギムザの分類
には一致しない細胞が出現するのは当然です。

回答日:2000年10月5日
回答者:認定臨床検査医 巽 典之(No.387)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)]
 
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[Q&A] ◆検体検査管理加算(II)とブランチラボ・FMS
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(Q)今回の改訂で検体検査管理加算(I)および(II)が設定されましたが、より
高水準の検査が求められるべき(II)該当の施設においてのみ、ブランチラボや
FMS方式にかかわらず算定できるような形になったのは、なぜでしょうか。
(病院検査科勤務 臨床検査技師)

(A)厚生省等からの正式な回答ではなく、あくまで私の個人的な見解として
お答えします。

 「検体検査管理加算(II)」は昨年度まであった「検体検査管理加算」であ
り、 200点から220点に増点しましたが、これは元々ブランチラボやFMS方式な
どと無関係に算定できたものです。これを行政として変更するにはそれなりの
理由が必要なので、恐らく従来通りとの解釈ではないかと推察します。また今
回「検体検査管理加算 (I)」が新規収載された背景には、新たに院内検査を評
価しようとの行政の意図が窺われるので、このこと自体は、院内検査に従事す
る者としては喜ばしいことだと思います。

 さらに、「検体検査管理加算(II)」を算定できるほとんどの施設において
は、入院患者には(II)を、外来患者には (I)を算定していると考えられますの
で、敢えて入院患者の検査だけをブランチラボやFMS方式で実施することは少
ないでしょう。加えて(II)を算定できる施設は大変少ないので、全体から見た
影響も少ないとも言えます。

 ただし、(I)と(II)の違いは「臨床検査を専ら担当する常勤の医師が1名以上
いること」だけですので、ブランチラボやFMS方式をとっている施設では、医
師がいるだけでなぜ(II)が算定できるのか、という点だけに注目した場合、私
にはその理由は分かりません。

回答日:2000年10月6日
回答者:認定臨床検査医 渡辺 清明(No.297)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(診療報酬)]
 
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[Q&A] ◆表計算ソフトによるツインプロットグラフの作成
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(Q)複数の施設によるミニサーベイのレポート資料として、ツインプロット
グラフ上に等確率楕円を描きたいのですが、表計算ソフトを利用して作成でき
ないでしょうか。(岩手県 臨床検査技師)

(A)StatFlexというソフトを使い、表計算ソフトのデータを貼り付けます
と、自動的に相関図上に等確率楕円を描いてくれます。http://
www.StatFlex.net/にあるホームページでお試し版(無料)をご請求下さい。
保存機能以外の全機能を利用できます。

 なお、ご自分でプログラムされる場合は、次のような方法で、y=の形で通
過点を連続的に求めることができます。Visual Basic による楕円上のx座標
からy座標を求めるプログラムを例示します。計算には、x,yの分布の平均値
(mx,my)、標準偏差(sx,sy)、相関係数rを指定し、かつ信頼区間確率Pに相当す
る、自由度2のχ2分布の値(chi_val)を指定します。例えば、P=0.95のとき、
χ2=5.99などとなります。この関数を、xを小刻みに動かして、それに相当す
るy1,y2を求めて下さい。

'*********************************************************************
'   xを順に指定して、yを返す関数
' x       : 計算したい値
' y1, y2  : xに対するyの値、大小2つ求まります
' mx, my  : x, y の平均値
' sx, sy  : x, y の標準偏差
' r       : 単相関係数
' chi_val : χ2値
' 戻り値:計算できたときは0を、できないときは-1を関数の戻り値とする

'   Program by K Ichihara( Kawasaki Medical School ) 2000.10-07
'*********************************************************************

Function Ellipse( x, y1, y2, r_mode, mx, my, sx, sy, r, chi_val )
As Double
 Dim X, k   ' X,は標準化値
 y1=0
 y2=0
 X=(x-mx)/sx  ' x を基準化

 If X*X >= chi_val Then
  Ellipse=-1
  Exit Function  ' 値無し
 End If
 k = Sqr( (1.0-r*r)*( chi_val - X*X ) );

 y1 = (r*X + k)*sy + my
 y2 = (r*X - k)*sy + my

 Ellipse=0

End Function
'*********************************************************************

回答日:2000年10月9日
回答者:認定臨床検査医 市原 清志(No.182)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(その他)]
 
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[Q&A] ◆インフルエンザにおける血小板増多
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(Q)近頃インフルエンザの疑いで受診される患者の中に血小板が増加してる
人が多いのですが、インフルエンザと何か関係があるのですか。(熊本県 臨
床検査技師)

(A)二次性血小板増多症は種々の病態で起こりえますが、感染症の時もそう
です。特に急性相反応性蛋白質が増加するような急性期には、インターロイキ
ン-6をはじめとする炎症性サイトカインの作用により血小板増多が認められる
ことはよくあることです。40-60万/μl程度であることが大部分で、100万/μl
を越えることはまずありません。従って、インフルエンザにおいても当然血小
板増多は起こりえますが、他の感染症と比較して特にこれが起きやすいとする
報告はないと思います。実際、MEDLINEで、infuenzaとthrombocytosis
(thrombocythemia)を掛け合わせて検索しても、該当する文献はありません
でした。インフルエンザと血小板増多に特異的な関係を考慮する必要はないと
思われます。なお、二次性血小板増多症の大部分は予後良好でこれに対して治
療が必要になることはほとんどないことを付け加えておきます。

回答日:2000年10月13日
回答者:認定臨床検査医 矢冨 裕(No.371)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)]
 
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[Q&A] ◆産婦人科検体に見られる幼若顆粒球
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(Q)産婦人科から出てくる血算で、自動血球装置のIMチャンネルで幼若顆
粒球を示すフラグを示す事が多く、念のため血液像をみてみると、正常者では
考えられない割合で幼若顆粒球が見られます。ただ単に造血機能が亢進してい
るためなのか、妊婦には髄外造血が起こっているのか、本当に骨髄の疾患なの
か、教えてください。(群馬県 臨床検査技師)

(A)残念ながら、検体の臨床的な背景が不明ですので、具体的な解答は困難
です。一般的には、標本で幼若球が有るとの事ですので、IMのフラッグは正し
い情報を伝えている事になります。検査室では検体のその結果だけを伝えるこ
とでその責任は終わることになりますので、その後は医師の方で考える必要が
あります。産婦人科といっても産科と婦人科により、また病院の診療背景で判
断の結果が大いに異なります。唯ひとつ言えることは、妊婦で一般的に髄外造
血が起こると結論づけるのは危険であるということです。

回答日:2000年10月15日
回答者:認定臨床検査医 巽 典之(No.387)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)]
 
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[Q&A] ◆重心動揺検査
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(Q)重心動揺検査の導入を検討中ですが、臨床的意義および検査結果の解釈
について御教示ください。(鹿児島県 臨床検査技師)

(A)重心動揺検査は直立姿勢時の重心の位置を経時的に記録し、直立姿勢の
制御機構や平衡機能の解析、めまいあるいは平衡機能異常の診断および経過観
察に用いるものです。重心動揺計の規格および標準的検査法は日本平衡神経科
学会により定められたものがありますので、詳しくは下記文献[1]をご覧下さ
い。

【参考文献】
[1] 日本平衡神経科学会編:平衡機能検査の実際 第2版、南山堂 1992

回答日:2000年10月15日
回答者:認定臨床検査医 西堀眞弘(No.269)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)]
 
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[Q&A] ◆小児などの体表面積の求め方
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(Q)クレアチニンクリアランスに必要な体表面積の求め方がよく解りませ
ん。現在DuBoisの式による表を使っているのですが、小児など表に当てはまら
ないことがあります。簡単に求められる計算式があれば、お教え下さい。

(A) 一般的にはご存じのDuBoisの式が体表面積の算出に広く用いられてお
り、以下のような計算式で、表されます。

 体表面積=0.007184 x BW(kg)^0.425 x Ht(cm)^0.725

 この式は非常に古い式ですが、現在でもいまだに使用されており、この計算
式をもとに、体表面積を求める表も作成されています。確かに小児では、表に
入らない場合もありますが、この場合は計算式を用いる必要があるかもしれま
せん。私の知っている範囲では、「小児ICUマニュアル」(26ページ、宮崎正
夫監修、田中義文編集、永井書店刊)に小児用の体表面積の表があります。

回答日:2000年10月27日
回答者:認定臨床検査医 矢内 充(No.473)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆24時間クレアチニンクリアランスが著増を示す原因
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(Q)24時間クリアランスに直すと非常に大きな値を示す患者がいます。身長
169.0cm、体重73.0kg、ピクリン酸法U-CRE 284mg/dl、酵素法U-CRE 289mg/
dl、血清 CRE 0.74mg/dl、尿量2200ml/day、24Ccr 676.8で、1カ月前もほぼ
同様の結果でした。どのような原因が考えられますか。

(A)ご質問の内容から、貴施設におけるクレアチニンクリアランスの結果全
体が高値傾向を示しているものではなく、ある特定の患者さんのみが異常な高
値を示している、という前提でお答えします。

 測定上の問題点として、酵素法による測定では、蓄尿中に防腐剤であるアジ
化ナトリウムが入っている場合は、クレアチンを測りこんでしまうために、高
値になります。さらに、アンモニアの影響も受けるため、正誤差を生じている
可能性があります。一方、ピクリン酸法(Jaffe法)では、真のクレアチニン
は4分の3程度であり、4分の1程度はアセトン体やアスコルビン酸などによ
る影響で非特異的な反応を含んでいると言われています。

 しかし本症例では、その両者で同じような値をとっており、両者に同時に正
誤差が生じる可能性は低いと考えられます。

 この患者さんの場合、2回とも尿量は2000ml以上あります。この結果より算
出される24時間あたりのクレアチニン排泄量は、それぞれ6.4g/day, 7.4g/
dayでとなり、体重60kgの人であったとしても、100mg/kg/dayと非常に大き
な値となってしまいます。このような場合には、測定上に問題がないとすれ
ば、蓄尿がきちんと行われているかどうかのチェックが必要です。例えば、す
べての尿ためずにその一部を蓄尿しているような場合は、一部が正確に取れて
いない可能性があり、また、全量をためる場合でも、完全排尿した後に蓄尿を
開始することなどを患者に確認する必要があります。

回答日:2000年10月27日
回答者:認定臨床検査医 矢内 充(No.473)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆透析後の総蛋白濃度上昇の原因
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(Q)透析後のTPが透析前のTPより増加するのはなぜですか。

(A)ひと言でいうと、血液が濃縮されるためです。慢性腎不全による透析患
者さんでは、透析導入後1年くらいの間をのぞいて、尿量の減少が見られ、最
終的には無尿に近い状態になります。このような場合、透析終了後から次の透
析までに、摂取した水分のうち、本来は尿として排泄されるべき水分量が体内
に蓄積することになります。血液透析では、体内に蓄積した尿素やクレアチニ
ンなど、いわゆる尿毒症物質の除去の他、透析間でたまった水分の除去も行わ
なくてはなりません(除水)。そのため、血管内での水分の濃縮が起こり、見
かけ上TPの上昇が見られます。すなわち、この上昇は血液中の蛋白の絶対量が
増加するわけではありません。その他ヘマトクリットなども透析後には上昇し
ますし、血圧の低下なども血管内の水分が除水されるために起こる現象です。

回答日:2000年10月27日
回答者:認定臨床検査医 矢内 充(No.473)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆定期健診用検体によるレニン活性の測定
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(Q)食生活がレニン活性と高血圧に及ぼす影響の差を見るため、2年前の定
期健診時の空腹時に採取した血液を使って、血漿レニン活性を測定しても問題
ないでしょうか。またEDTA入りの全血を放置後採取した血漿、あるいは血清を
用いて測定しても問題ないでしょうか。(愛知県 公衆衛生学 看護婦、大学
院3年)

(A)レニンは、体位や塩分摂取量に大きく影響されることが知られておりま
す。特に体位の問題は重要であり、そのため、立位と臥位基準値を変えている
施設もあります。条件を一定にするため、採血時には、30分以上の安静臥床後
の採血が一般的には推奨されています。また、日内変動もあり、早朝に高く、
夕方に低くなります。このような点をふまえますと、健康診断時での採血によ
るレニンの測定では、高血圧と食生活の関連、よりも採血時の要因の方が大き
な因子として反映されてしまう可能性があります。

 血漿レニン活性の場合、採血からの分離までの24時間までは、室温放置に
ても測定値に影響を及ばさず、血漿の冷凍結保存では1ヶ月までは測定値に大
きな変動を及ぼすことはないと報告されています。しかし、年単位で保存され
たものに関しては、少々問題があるかもしれません。ただし、EDTA入りの全血
を凍結保存したものでは、溶血してしまっていますので、血漿の分離は不可能
と思われます。また、私の調べた範囲では、血清ではやはり、低値傾向を示す
という報告が大部分でした。

回答日:2000年10月27日
回答者:認定臨床検査医 矢内 充(No.473)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆透析後採血のタイミング
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(Q)透析後のデータを見る採血はいつ採取すればいいのでしょうか。理想的
には透析終了後10分ほどたってからシャントとは逆の腕から採血すべきかと思
いますが、現状では難しいと思います。現実的にどのタイミングでどのように
採血すればいいか、シングルニードルの場合と2本刺しの場合について教えて
下さい。(石川県 臨床検査技師)

(A)透析後の採血に関しては、何が「理想」的なものか、というのは非常に
難しい問題です。透析後というのは非常に不安定な状態であり、細胞内外での
水分や尿素の移動はその後約1時間かけて定常状態になりますし、クレアチニ
ンの場合はさらに長い時間が必要です。ご質問の点ですが、このようないわゆ
るリバウンドを無視した、透析直後の血液中の状態を把握するためには、時間
をおくことは不要と思われます。透析後にシャントの反対側からとるのも一法
でしょう。しかし現実的には、患者さんにさらに針を刺して採血するのは抵抗
があるのではないかと思われます。

 患者さんに負担をかけないで採血するには、回路からの採血が良いのです
が、静脈側の回路からでは全く無意味ですし、動脈側の回路からでは、静脈側
に返血された血液の混入(recirculation、再循環)が問題となります。そこ
で推奨するのは、すべてが返血された後に、静脈側の穿刺針のみ残し、
20ml程度の注射器を接続して、何回かシリンジ内で血液を静かにポンピン
グした後、検体の採取を行う、という方法です。これであれば、反対側からの
採血を行わなくてもほぼ同等の効果があります。シングルニードルの場合も同
様の方法で可能です。

回答日:2000年10月27日
回答者:認定臨床検査医 矢内 充(No.473)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆臨床検査技師と病理解剖
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(Q)私は解剖介助の名の下に、実際には解剖そのものを行っていますが、こ
のような行為は法律に違反しないのでしょうか。また解剖介助の手当が
1100円ときわめて低額ですが、厚生省や技師会の考えを教えていただきた
いと存じます。(新潟県 病院臨床検査科勤務 臨床検査技師・細胞検査士)

(A)病理解剖指針(厚生省健康政策局長、健政発第693号、昭和63年
11月18日)において、病理解剖医の責務の指針が示されています。即ち、
「病理解剖医は自ら死体の切開及び臓器の摘出を行わなければならない。な
お、臨床検査技師、看護婦等医学的知識及び技能を有する者(以下「臨床検査
技師等」という。)が解頭等に際し、その一部の行為につき解剖補助者として
解剖の補助を行う場合には、病理解剖医は、死因叉は病因及び病態を究明する
と言う病理解剖の目的が十分達せられるよう、これらの者に適切な指導監督を
行わなければならない。また、血液等の採取、摘出した臓器からの肉眼標本の
作製や縫合等の医学的行為については、臨床検査技師等以外を解剖にかかわら
せることのないよう十分注意しなければならない」となっています。この指針
は、臨床検査技師は病理解剖医(病理医)の指導のもと解剖介助を行いうるこ
とを示しています。しかし、あくまで建て前としては病理医の指導監督で行う
べきことと規定しています。

 また、解剖介助の手当ての金額の妥当性については、施設間の格差がかなり
あるようです。また、介助手当ては厚生省や技師会が直接関わるべき問題では
ないように思われます。いくつかの施設の解剖介助手当てを以下に示しますの
で参考にして下さい。

A病院(中規模市中病院)日祭日出勤(解剖があった場合) 6500円
            日祭日オンコール(自宅待機)  3500円
            夜間剖検介助(5:00以降)    7000円
B病院(大学付属病院) 日祭日出勤(解剖があった場合)11500円
            日祭日オンコール(自宅待機)  5500円
            夜間剖検介助(5:00以降)    11000円
C病院(市中大規模病院)解剖手当て(平日昼夜を問わず)1500円/体
            オンコール手当て(解剖がない場合)1000円
            夜間、休日勤務(別途算定、基本給により異なる)

回答日:2000年10月27日
回答者:認定臨床検査医 根本 則道(No.344)

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[編集後記]◆(会長の指示により削除しました)
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JACLaP WIRE No.31 2000年10月31日
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