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JACLaP WIRE No.28 2000年7月27日
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============================≪ 目 次 ≫============================
[特別寄稿]◆「その他」から「中央診療部系」へ、258名の仲間と共に
[お知らせ]◆会員動向
[お知らせ]◆第2回アジア臨床検査標準化会議のお知らせ
[ニュース]◆日本臨床検査医会春季大会に参加して
[ニュース]◆外部精度管理での臨床化学検査の目標(解説)
[ニュース]◆医療関連サービスマーク制度におけるチェックリストの改定
[論壇] ◆旭川医科大学臨床検査医学教授就任で思うこと
―臨床検査医学を担う検査医とは―
[論壇] ◆検査医に要望すること
[声の広場]◆臨床検査医学講座の危機
[編集後記]◆沖縄サミットと病院検査部
* ========================≪ JACLaP WIRE ≫======================== *
[特別寄稿]◆「その他」から「中央診療部系」へ、258名の仲間と共に
日本臨床検査医会 常任幹事 熊坂 一成
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日本における卒後臨床研修プログラムの整備と各領域の専門医の認定制度
は、欧米に比べてかなり遅れている。各学会ごとに発足した認定医制度は呼称
や認定基準にも相当のバラツキがある。これらの問題を調整するために、学会
認定医制協議会(学認協)が発足してまもなく20年になる。本年4月に発行さ
れた学認協の既報によると、46の学会の認定医・専門医の延べ人数は23万
5,745人、このうち学認協、日本医師会および日本医学会の三者が承認する基
本的領域14学会の認定医・専門医の延べ人数は計14万1,664名である。この中
で、日本内科学会の認定医が最も多く3万8,196名、次いで日本外科学会の認定
医が2万7,478名、これに対して、わが日本臨床病理学会認定臨床検査医は258
名に過ぎない。ここ数年間で認定臨床検査医の仲間が急増し400名を突破した
が、内科医ないしは病理医などの認定医としてすでに三者承認を受けているた
めに認定臨床検査医への変更をされてないか、あるいは認定臨床検査として三
者承認を受ける社会的意義を十分に理解されていないのであろう方々が150名
以上もいる。学認協の基本的立場として、基本的な診療領域の承認は1医師1専
門医資格としているために、現時点ではやむをえない個人の判断なのかもしれ
ない。医療の受益者である国民にわかりやすい信頼される専門医制度をつくる
発想の転換が必要であるが、臨床検査医の存在を国民の方々に理解していただ
く戦略的プランニングも必要である。
今後の第4次医療法改正の嵐の中で、認定医・専門医を以下の3群に大別し、
専門医制度の確立と医療の体系化に結びつける構想が、いよいよ現実のものに
なるかどうかは予断を許さない。すなわち、1群は患者が最初に受診すること
が予想される診療科の認定医・専門医、2群は、1群に対して専門分化した診
療科の専門医、そして3群は他科からの依頼により業務を行う中央診療部門の
専門医である。今まで、学認協の中で「その他」と分類されていた、麻酔、医
学放射線、病理、臨床病理が「中央診療部系」と呼称の変更がされた。ともか
く、自分の使命を自覚し、自分の置かれている立場と誰が本当の顧客かを確認
できれば、自ずと進むべき方向は見つけることができる。大学病院所属の臨床
検査医の方々にはもう一度、なぜこの講座が設置されたのか、また、なぜいく
つかの大学では、講座閉鎖の危機に追い込まれているのかを考えていただきた
い。そして市中病院で毎日、病理.臨床病理の医療活動を生き生きとして実践
している若い仲間たちが少しずつ増えてきている事実に、将来の夢を託した
い。
[2000年7月14日 JACLaP NEWS No.53 巻頭言より]
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[お知らせ]◆会員動向
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《入会》
済生会新潟第二病院病理検査科 石原 法子
NTT東日本札幌病院臨床検査科 水無瀬 昂
川崎医科大学附属川崎病院病理部 物部 泰昌
和歌山県立医科大学臨床検査医学 三家 登喜夫
東京慈恵会医科大学臨床検査医学 海渡 健
大阪府立成人病センター臨床検査科 松永 隆
岐阜大学医学部臨床検査医学 和田 久泰
和歌山県立医科大学臨床検査医学 月山 雅之
国立姫路病院内科 嶋崎 明美
掛川市立総合病院検査部病理 新村 祐一郎
長岡赤十字病院検査部 薄田 浩幸
医療法人啓仁会咲花病院 井上 啓二
国立神戸病院研究検査科 中村 哲也
《退会》
杉山 敏郎、櫻川 信男、要 瑞穂、入 久巳
[2000年7月14日 総務・会計幹事 高木 康]
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[お知らせ]◆第2回アジア臨床検査標準化会議のお知らせ
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第2回アジア臨床検査標準化会議(2nd Asian Colloquium on
Standardization and Harmonization in Laboratory Medicine)が下記の要領
で開催されます。
日時:10月21日(土)9:00-17:00
場所:シスメックス社中央研究所大講堂(神戸地下鉄西神中央下車徒歩5分)
テーマ:臨床検査の新技術、アジア地区の臨床検査値標準化、国際的研究プロ
ジェクトの立案
演題:20題(口演のみ)
参加予定者:韓国、シンガポール、タイ、中国、インドネシア、マレーシア、
日本などの臨床病理学者
参加の方法:予め参加申し込みが必要
使用言語:英語
参加費:大学・病院関係者1,000円、業者の参加10,000円
申し込み先:巽 典之教授宛(大阪市立大学医学部臨床検査医学教室)
FAX : 06-6645-3880
E-mail : [email protected]
[2000年7月17日 副会長 森 三樹雄]
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[ニュース]◆日本臨床検査医会春季大会に参加して
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ようやく雪が融け始めた札幌で4月21・22両日に行われた臨床検査医会春季
大会に参加した。シンポジウム―臨床検査最新の進歩―では4名の演者(慶大
渡辺教授、大阪医大 清水教授、群馬大 小林教授、広大 神辺教授)の先
生方から各分野におけるトピックスを手短にまとめていただいた。午後は特別
講演から始まり、阪大網野教授による新症候発見の話(特にマイクロゾーム抗
体の測定から始まった出産後自己免疫性甲状腺症候群の発見)、鹿児島大 丸
山教授による臨床血管医学の話(血液凝固の仕組み研究から血管内でなぜ血液
は凝固しないのかと、逆転の発想で研究を始めた話)、そして大阪市大巽教授
の実践的な臨床血液検査医学の話、いずれもが演者・内容ともに充実したセッ
ションとなった。締めくくりは九大 濱崎教授の司会によるパネルディスカッ
ション―21世紀に向けて臨床検査医学に今何が求められているのか―であっ
た。演者の4名の先生方(関西医大 高橋教授、岐阜大 清島教授、山口大
日野田教授、弘前大 保嶋教授)には大学医学部における臨床検査医学「講
座」のあり方・運営について率直な悩みや問題点を披露していただいた。大学
で「検査医学のpriority」を確立する困難さ、研究内容と検査系雑誌のimpact
factorの問題、そしてそれらから繋がる後継者育成の問題。いずれをとっても
解決はなかなか困難であり、特に国立大学の臨床検査医学講座は諸々の問題を
内包している実態が報告された。確かに大学における検査医学のありかたや後
継者の問題は大きいが、フロアの市中病院検査医からは病院内における検査
医・病理医としての充実した生活の発表もあり、我々の将来は決して暗くな
く、むしろ市中病院では「幸せに」仕事ができる将来性のある分野であること
も感じられた。最後に今回大会長の労をとっていただき、会場から懇親会(札
幌ビール園でした)までお世話いただいた札幌医大の渡辺教授と、札幌医大臨
床検査医学講座の皆様にお礼を申し上げたい。
[2000年7月14日 JA三重厚生連鈴鹿中央総合病院中央検査科 村田 哲也]
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[ニュース]◆外部精度管理での臨床化学検査の目標(解説)
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外部精度管理で調査されている臨床化学領域の検査項目は、少なくとも3群
に分けて考えることができる。それらは、1)学会などから勧告法が提示され、
かつ一次標準物質が入手可能な項目、またはこれらのうちいずれかが提供され
ているもの、2)勧告法、標準物質は供給されていないが、外部精度管理調査で
施設間の変動が変動係数でほぼ5%以内に収束しているもの、3)施設間の変動
が5%以上と著しいもの、の3群である。
1)の項目では測定体系の概念を適用させ、日常分析で真値を追求することは
可能である。この群では日常分析で測定体系が正しく作動していれば(標準物
質の正しい利用など)、真値を追求することは可能であり、勧告法と標準物質
を正しく利用した基準検査室での計測値から目標値を設定したり、あるいは日
常分析を正しく実施している検査室の平均値から目標値を設定して、真値なら
びに施設間変動を3%程度以下に収束させることが可能である。極端にいえ
ば、施設内の変動と同じ水準で施設間のデータを評価・利用することが可能で
あることを意味する。2)の検査項目も、測定法を選択すれば、1)と同じように
施設間の変動を5%以内に収束させることは可能であると考えられるが、3)の
範疇に入る検査項目については、学会、協会などで勧告法、標準物質の供給を
急ぐことが肝要である。
このように測定体系の確立が可能になれば、臨床化学検査の領域では、施設
間の変動を5%以内に収束させることは可能であると考える。ただし、クレア
チニンの例のように測定法により測定している対象が異なる場合には、その点
を明らかにして測定体系を確立することが重要であろう。そのためには命名法
も考慮して、クレアチニンとクレアチニン様物質とに分けて考えることであ
る。それにしても、施設間の変動の目標を5%以内におくことは可能である。
さらに、この考え方は免疫化学領域にも適用すると考える。
[2000年7月14日 浜松医大臨床検査医学 菅野 剛史]
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[ニュース]◆医療関連サービスマーク制度におけるチェックリストの改定
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前回JACLaP NEWS No.52で「医療関連サービスマーク制度」の現状について
述べる機会を与えていただいた。引き続き今回は、前回述べた中の検査セン
ターの実地調査指導に用いる「チェックリスト」について、1999年7月1日に改
定が行われたのでそのポイントについて述べる。1998年、臨床検査技師、衛生
検査技師等に関する法律の改正に伴い衛生検査所指導要領の改正が行われ、こ
の改正にあわせて「チェックリスト」自体も改定を行った。日本臨床病理学会
(松尾 収二:天理よろず相談所病院臨床病理部長)、日本臨床衛生検査技師
会(朝山 均:市立岸和田市民病院技師長)、日本細胞病理学会(山片重房:
石切生喜病院院長)、日本衛生検査所協会(金村 茂:SRL精度保証部長)を
中心に筆者がまとめ役として、チェックリスト改定作業にあたった。当時の一
連の法改正は橋本内閣の規制緩和の旗印のもとにスタートしたため、衛生検査
所の法改正についても臨床検査医学の進歩に伴い必要となった新しい規制は全
く持ち込まれなかった。そのため、「チェックリスト」の改定では、法規制よ
り厳しい部分も追加された。膨大な改定内容をこの限られた紙面で述べること
は不可能であるので、法改正の要点(表1)とチェックリストの目次の新旧対
照表(表2)のみを示すが、書類の電子化や、遺伝子検査項目の増加にあわせ
た更なる見直しが必要であり、「チェックリスト」としても、まだまだ未熟な
ものである。現在検討中の、ISO 15189「臨床検査室のクオリティマネジメン
ト」の制定が国際的に行われれば、それに則した改定も必要となると考える。
表1 法改正の要点
衛生検査所精度管理の重要性に鑑み、精度管理の実施範囲を明文化すると共
に、精度管理責任者を中心とする実施体制の整備を開設者の義務とすることに
より、衛生検査所における精度管理の充実を図るものである。
また、一部の検査用機械器具も削除、擁護の適正化等を図ることにより、衛
生検査所の登録基準及び検体検査の業務委託に係る基準の改正を行うものであ
る。
1.衛生検査所の遵守事項について
衛生検査所の開設者は、管理者の下に精度管理責任者を中心とした精度管理
のための体制を整備することなどにより、検査にかかわるすべての作業を通
じて十分な精度管理が行われるように配慮しなければならないこととされた。
2.衛生検査所の登録基準
(1)衛生検査所の遵守事項
精度管理責任者の要件に「第九号に掲げる管理者」が加えられたこと。
(2)検査用機械器具の一部が削除された。(孵卵器、ピペット洗浄器)
(3)「基準値」←「正常参考値」
表2 チェックリスト目次
(旧)
I 検査業務(検査案内書関連事項)
II 内部精度管理
1. 検体の受領・搬送1
(受領及び最初の保管場所までの搬送)
2. 検体の搬送2
(一時保管場所から最終検査所迄の搬送)
3. 検体の受付・仕分け
4. 血清分離
5. 検査測定及び精度管理
1)検査室共通
2)微生物学的検査
3)血清学的検査
4)血液学的検査
5)病理学的検査(病理検査)
6)病理学的検査(細胞診)
7)寄生虫学的検査
8)生化学的検査
9)RI検査
10)その他
6. 検査の再外注委託(含む社内委託)及び受託
7. 検査結果の報告(検査情報処理システム)
III 苦情処理
IV 外部精度管理
V 管理組織
VI 構造設備
VII その他
(新)
I 検査案内書関連事項
II 検査前管理
1. 検体の受領・搬送1
(受領及び最初の保管場所までの搬送)
2. 検体の搬送2
(一時保管場所から最終検査所迄の搬送)
3. 検体の受付・仕分け
4. 血清分離
III. 検査測定
1. 生化学的検査
2. 血清学的検査
3. 血液学的検査
4. 微生物学的検査
5. 尿一般検査
6. 寄生虫学的検査
7. 病理学的検査(搬送業務及び再委託)
8. 病理学的検査(病理検査)
9. 病理学的検査(細胞診)
10. RI検査
11. 検査室共通
IV 検査結果の報告(検査情報処理システム)
V 検査の再外注委託(含む社内委託)及び受託
VI 過誤・苦情処理
VII 外部精度管理(コントロールサーベイ)
VIII 教育・研修
IX 管理組織
X 安全・衛生
(参考) 1 染色体検査 2 遺伝子検査
[2000年7月14日 日本医学臨床検査研究所 佐守 友博]
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[論壇] ◆旭川医科大学臨床検査医学教授就任で思うこと
―臨床検査医学を担う検査医とは―
旭川医大臨床検査医学 伊藤 喜久
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この度ご縁がありまして、4月16日付けで旭川医科大学臨床検査医学講座の
教授として赴任いたしました。自治医科大学時代には、検査医の皆さんには格
別のご指導、ご協力をいただきました。これまで培った考え方、経験を基礎
に、旭川から北海道、日本、世界に向けて臨床検査医学、教育、検査診療の独
自の新しい道を少しでも切り拓きたいと、願っております。これからも引き続
き、よろしくご支援、ご協力下さい。
大学において常に求められるものは、priority, originalityの高い研究の
論文発表、新しい学問、医療の進歩をいち早く採り入れ、共に考え学ぶ教育、
訓練実習、病院医療のニーズに積極的に応える検査、医療サービス、さらには
検査室の健全運営も今や日常的な課題です。繰り返し言われているように、こ
れらはバランス良く偏りがあってはなりません。個々の興味、価値観により異
なりますが、研究:教育診療=7:3から3:7の割合の間を一つの目安として考え
ています。これも当たり前のことですが、大学にあって他にないもの、それは
研究です。質の高い研究成果が持続的に発表できる素地を生み出さなければな
りません。まずは、これまでの灯火を絶やさないところからのスタートです。
北海道において数少ない臨床検査医の一人として、いかに臨床検査医学・医
療の良き伝統の上に、新たな息吹をこの地に広めることができるか、引き締ま
る思いで一杯です。ただ、特にこれまでとスタイルが変わるわけではありませ
ん。どの仕事においても、patient-oriented, student-oriented, academy-
oriented の姿勢を貫き、できる限り後世の批判に耐える永続的な成果の実現
を静かにめざし、このために誠意をもって努めることを、これからも心がける
所存です。
旭川は水の都、澄んだ雪解け水は名水、名酒など風味豊かな自然の恵みを数
多く与えくれています。全国の検査医会の皆さんをできる限り当地にお招きし
て(特に厳冬期が最適!)、学術、検査診療の交流の輪を広げたいと密かに
思っております。ある日、突然のお誘いの電話を楽しみにお待ち下さい。
[2000年7月14日 JACLaP NEWS No.53より]
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[論壇] ◆検査医に要望すること
(株)エスアールエル 窪田 規一
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これから21世紀の医療は、EBMとして語られているように根拠・論理が明確
であるとともに、効果的かつ効率的な医療供給体制が求められると考えられま
す。
そのような背景のもと、近年の臨床検査技術とくにPOCTの技術的進歩と医療
環境におけるITの導入は、臨床検査が担うべき役割分担を大きく変えようとし
ています。
私ども、民間検査センターは外注検査センターとして病院・検査室の機能を
補完する役割を担ってきました。さらに、病院ニーズの多様化に伴い、ここ最
近は検査室の共同運営パートナーとしての役割も求められつつあります。
しかし、どのような環境変化においても、民間検査センターは患者様と接
し、診断・治療に立ち会い、医療スタッフの一員としてお役に立つことはでき
ません。
さらに、経済的な側面から診療報酬点数上でも外注検査と院内検査は、区分
されようとしていますが、臨床検査を診療情報として、患者様の個人情報とし
て考えたとき、両者の違いなどないはずです。
医療サービスを受ける最終的なお客様は患者様です。今後、臨床検査はその
お客様に対してもっと身近な、理解しやすい情報として提供されることが必要
なのではないかと思っています。
もし、私ども、民間検査センターが単なる請け負い業ではなく、病院の医療
スタッフに準じた役割を担うことができたら…。
もし、生理検査の結果を通して、POCTのデータを通して、患者様の生の情報
に触れることができたならば、臨床検査のデータを単なる測定数値ではなく、
情報として加工したうえで、診療の先生方にそして、患者様に提供させていた
だける可能性があるのではないかと考えています。
私ども、民間検査センターはサービス業です。検査室に、医療現場に、そし
て患者様に、何らかの形で貢献できることがその存在価値だと思います。今
後、多様化するであろう臨床検査へのニーズに対して私ども、民間検査セン
ターが、的確な答えを出すには、臨床検査にそして診療に精通した検査医の先
生方のご指導は不可欠だと思います。
限られた医療資源の中で、医療情報としての臨床検査を活用するために、検
査医の先生方には今まで以上に民間検査センターの利用の仕方を考え、ご指導
賜わることをお願いしつつ、投稿とさせていただきます。
[2000年7月14日 JACLaP NEWS No.53より]
* ========================≪ JACLaP WIRE ≫======================== *
[声の広場]◆臨床検査医学講座の危機
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昨年の夏、臨床検査医認定医試験を受験し、学生時代より久方ぶりの筆記な
らびに口答試験に心身ともに相当に疲れはてましたが、諸先生方のご厚情をも
ちまして、無事認定医試験に合格させていただきました。以前より受けねばな
らないなと思いつつも、なかなか受験できませんでしたので、試験合格の喜び
もひとしおでした。クロスマッチやグラム染色など、実際に手取り足取り教え
ていただき、臨床的にも大変勉強になりました。しかしながら、認定医資格取
得の喜びに浸るのもつかの間、私の所属する京都府立医科大学臨床検査医学教
室の行く末が怪しくなってきました。すなわち、今年3月、吉村 学(前)教
授の定年退官後、当教室がそのままの形で存続するか否か、教授会で問題と
なったのです。関西を中心に吹き荒れている総合臨床医学教室設立の波が本学
にも押し寄せ、一時は、総合臨床医学を母体としてその中に検査学教室が組み
込まれることが決定する寸前までいきましたが、吉村先生のご尽力の結果その
計画は一時中断され、臨床検査医学教室のあり方について現在教授会で検討さ
れています。
臨床検査医学教室が何故ここまで軽く扱われてしまうのでしょうか? 臨床
検査医学講座廃絶派の方の言い分として主なものは、臨床検査部そのものは必
要だが、検査部の医者が何をしているのかわからない、というものです。もち
ろん当教室においても、検査医学の講義・実習とともに、各検査室に医師が配
属され、検査結果のcomment、技師とともに特殊検査・生体検査の施行に努力
しているのですが、いわば人目につかない縁の下の力持ち的な仕事が多いだけ
に、利益優先の病院医療の中では、臨床検査部の医師の役割は無視されてしま
うのではないでしょうか。研究面でも、吉村先生の適切なご指導により当教室
からの英語論文数は多く、他のmajorの臨床科と比べても決して劣りはしない
ものであるだけに、現在の臨床検査医学教室の取り扱われ方には非常に悔しい
思いをしております。
それでは、大学・病院のなかでその存在が認知され、かつ必要とされる臨床
検査学教室及び臨床検査医とはどのような姿なのでしょうか? Tailor-made
medicine が声高く叫ばれているなか、個人的には遺伝子検査を含めた検査診
断学への積極的な貢献が重要であろうと考えます。大学病院も含めて病院の生
存競争が厳しさを増している現在、臨床に役立つ検査医でないと病院内におい
て認知されないのは自明です。臨床の科とともに新しい検査の開発に努め、ま
た、日々の臨床に役立つように検査のcommentを工夫する、などの地道な努力
を実行していく以外に方法はないような気がします。自省とともに、自らの生
きる道を暗中模索しております。ご意見・ご指導などいただけましたら、有り
難く存じます。
[2000年7月14日 京都府立医大臨床検査医学 西村 眞人]
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[編集後記]◆沖縄サミットと病院検査部
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沖縄サミットが終わり、その評価が新聞上を賑わしています。沖縄振興も含
まれているとはいえ、前回サミットの約100倍の約800億という予算をつぎ込ん
だ贅沢な舞台で、発展途上国の貧困に対する具体的な支援の話題がしりすぼみ
状態となってしまったこと、沖縄という歴史的にしかも軍事上も重要な場所で
開かれたサミットで軍備や基地縮小などの具体的な成果や指導性を見いだせな
いまま、文化論に花を咲かせるだけで閉幕してしまったことに対しての落胆は
少なくないと思います。IT憲章における電子商取引の規制案など、利便性や経
済性を追求して進展しているものを自国の主義・主張の乱れる中で制御しよう
としてもどだい無理な話だったと言うべきでしょう。このような世界の大きな
動きに的確に対応できない我が国の政府の姿を、現在の検査部の反面教師とし
て捉えられるように思います。論壇でも提言されておりますが、存在価値のあ
る院内検査部としていかにあるべきかを模索している多くの検査部では、文化
論や精神論に終わるのではなく、何を求められ、どのように改革して発展すべ
きかを具体的に検討してゆく必要があると思います。
検査部の本質は、個々の患者の診療に直接・間接的に貢献するところにあり
ます。臨床に役立つ検査部・検査医でなければ世論や学内・院内の評価を得る
のが難しいことは自明です。その本質を見失わず、早速に具体的で積極的な行
動をおこし検査部は変わったという印象を与えることがまず必要と思います。
対策が遅れるほど、日本の政府に対して多くの民意が離れてしまっているよう
に、臨床側の評価も次第と得られにくくなってしまうのではないでしょうか。
そのような主導的な舵取りを検査医は求められていると思います。
[編集委員 石田 博]
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JACLaP WIRE No.28 2000年7月27日
■発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
■編集:JACLaP WIRE編集室■編集主幹:西堀眞弘
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