JACLaP WIRE No.17 1999.12.18 



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          JACLaP WIRE No.17 1999年12月18日
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============================≪ 目 次 ≫============================

[お知らせ]◆平成11年度第3回常任幹事・全国幹事会議事要旨の
       訂正について

[ニュース]◆第21回RIインビトロ検査全国コントロールサーベイ参加募集
[ニュース]◆エイズの流行は止まらない
            〈WHOトピックス Press Nov. 1999 WHO-127〉

[新規収載]◆デオキシピリジノリン
[新規収載]◆I型コラーゲン架橋N-テロペプチド (NTx)
[新規収載]◆シアル化糖鎖抗原KL-6
[新規収載]◆アスペルギルス抗原

[Q&A] ◆左房内に流入する血流
[Q&A] ◆術後に見られる奇異性運動
[Q&A] ◆臨床検査技師と経食道エコー検査

[編集後記]◆専門医のための超実践的知的所有権講座
 
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[お知らせ]◆平成11年度第3回常任幹事・全国幹事会議事要旨の
       訂正について
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 前号のNo.16でお届けした議事要旨の訂正をお知らせします。

○各種委員会報告の「3)資格審査委員会」の項

 「有効会員」→「有功会員」
                               以上

[1999年12月8日 会員資格審査委員長 戸谷誠之]
 
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[ニュース]◆第21回RIインビトロ検査全国コントロールサーベイ参加募集
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 (社)日本アイソトープ協会 医学・薬学部会では、イムノアッセイ研究
会、日本放射性医薬品協会の協賛のもと、第21回全国コントロールサーベイを
実施する。詳細は下記実施案内を参照のうえ、該当する施設は是非ご参加いた
だきたい。なお、このサーベイの測定法はRI、EIA、CLIAなどを対象としてい
る。

  【第21回RIインビトロ検査全国コントロールサーベイのご案内】

 (社)日本アイソトープ協会 医学・薬学部会では、第21回全国コントロー
ルサーベイをイムノアッセイ研究会、日本放射性医薬品協会の協賛のもと下記
の通り実施します。ぜひ、ご参加下さい。なお、このサーベイの測定法はRI、
EIA、CLIAなどを対象とします。
 対象項目はホルモン関連 (GH、ソマトメジンC、FSH、LH、プロラク
チン、TSH、T3、FreeT3、T4、Free T4、TBG、カルシトニン、インスリ
ン、C-ペプチド、グルカゴン、ガストリン、テストステロン、Free テストス
テロン、エストラジオール、プロゲステロン、βHCG、17α-ヒドロキシプ
ロゲステロン (17α-OHP)、アルドステロン、コルチゾール、DHEA-S、レ
ニン定量 (濃度)、IgE、ジゴキシン、α-フェトプロテイン)、腫瘍関連
(CEA、TPA、CA125、CA19-9 、CA15-3、PAP、PA (PSA)、
β2-マイクログロブリン、フェリチン、NSE)です。
 参加費用は項目数に応じて、10,000円 (5項目まで)、15,000円 (20項目ま
で)、 20,000円 (21項目以上) (税別)となります。
 実施スケジュールは2000年1月中旬に参加申込み締め切り、2000年1月下旬
に参加者へ試料血清送付、2月末に測定結果の提出期限、10月上旬に参加者へ
成績報告書を送付することになります。

申込先:日本アイソトープ協会学術課  横田
    〒113-8941東京都文京区本駒込2-28-45
    TEL: (03)5395-8081 FAX: (03)5395-8053
    E-mail:[email protected]

[1999年12月10日 副会長 森 三樹雄]
 
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[ニュース]◆エイズの流行は止まらない
            〈WHOトピックス Press Nov. 1999 WHO-127〉
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 エイズの流行が始まってから世界でHIV感染者は5000万人になり、そのう
ち3300万人は現在も生存し、1600万人が死亡したとWHOは1999年12月1日の
世界エイズデーにむけて発表した。本年度のエイズの死亡者は260万人に達
し、新規HIV感染者は560万人にもなる。HIV陽性患者は感染後、数年経
過するとエイズを発症し、このウイルスは人の免疫システムを攻撃して弱め、
肺炎、結核症、下痢、腫瘍などを引き起こす。サハラ砂漠南部にあるアフリカ
諸国では、HIV感染が男性よりも女性の数が多くなるという異変も見られ
た。この地域では感染成人の55%は女性である。WHOでは15〜49歳の年齢で
1999年末にはHIVに感染したアフリカ女性は1220万人、男性は1010万人に達
すると予想している。15〜19歳のアフリカの少女達のHIV感染者数は同年齢
の少年よりも5〜6倍も多い。アフリカ南部諸国における平均寿命は1950年代初
めには44歳であったのが、1990年代初めには59歳と増えたが、2005〜2010年に
はエイズ死亡により45歳にまで下がると予測されている。一方、ロシア国を始
めとする近隣諸国では、1999年になってHIV感染者が急増しており、注意が
必要である。インドではHIV感染者が400万人いる。いずれの国でも強力な
防止活動やキャンペーンが必要であり、フィリピンやタイでは効果をあげてい
る。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[新規収載]◆デオキシピリジノリン
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デオキシピリジノリン(準用先区分D001-13)(区分D-1)
平成11年12月1日より適用の尿中特殊物質定性定量検査
保険点数:210点 定量検査
基準範囲:男性 2.1〜5.4nM/mM Cr 女性 2.8〜7.6nM/mM Cr
直線性:3nM〜300nM
製品名:オステオリンクス「DPD」
製造元:Metra Biosystems, Inc. Mountain View, CA, USA
輸入・発売元:住友製薬(株) Tel 06-6229-5649
測定法:EIA法 96テスト/キット(シングル測定:80検体)
結果ができるまでの時間:3時間  自動化:可
同時再現性:1.4〜7.4%  日差再現性:4.2〜5.4%
検体:午前中の随時尿
【特徴】 抗デオキシピリジノリン(Dpd)モノクローナル抗体結合マイクロプ
レートに、尿検体中のDpd、酵素標識(アルカリフォスファターゼ)−Dpdを加え
る事で抗体に対して競合的に免疫複合体を形成させた後に、洗浄操作によりB/
F分離を行うEIA競合法である。
 尿中デオキシピリジノリン(Dpd)はEIA法によるキットで乳癌、肺癌、前立腺
癌患者の骨転移診断と計画的な治療管理、原発性副甲状腺機能亢進症の手術適
用の決定または副甲状腺機能亢進症手術後の治療効果判定の際に、既に保険が
適用(平成9年4月10日)されている。今回は骨粗鬆症への保険適用拡大の要望で
あり、承認されたものと同じキットである。骨吸収抑制剤(エストロゲン製
剤、ビスホスホネート製剤:エチドロネート)による骨粗鬆症の治療効果判定
についてDpdの有用性についての治験データが提出された。それによると閉経
後骨粗鬆症におけるエストロゲン療法での経過観察においてDpdの治療3か月後
での変化量と治療時の腰椎骨密度の9か月後の変化量の改善(エチドロネート治
療における経過観察ではDpdの治療開始後3か月の変化率は6か月後の腰椎骨密
度の改善)の指標として高い正確度を示すことから、治療効果予測および早期
効果判定に有用である。また、骨粗鬆症でDpdが高値を示す場合は、脊椎骨
折、大腿骨頚部骨折の可能性が高く、骨折の予測の指標としても有用である。
【保険請求上の注意】 デオキシピリジノリン特殊物質定性定量検査の「13」に
準じ、骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択時に1回に限り算定でき、その後6か月
以内の薬剤効果判定時に1回限り算定できる。なお、薬剤治療方針を変更した
ときは変更後6か月以内に1回に限り算定できる。ただし、デオキシピリジノ
リンとI型コラーゲン架橋N−テロペプチド(NTx)を併せて実施した場合は、
主たるもののみ算定する。
【文献】 中村 哲郎、他:閉経後骨粗鬆症に対するホルモン補充療法におけ
る腰椎骨密度および骨代謝マーカーの変化.ホルモンと臨床 44(9):125-
128、1996

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆I型コラーゲン架橋N-テロペプチド (NTx)
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I型コラーゲン架橋N-テロペプチド (NTx)(準用先区分D001-13)(区分D-1)
平成11年12月1日より適用の尿中特殊物質定性定量検査
保険点数:210点 定量検査
基準範囲:≦40nM BCE/mM Cr
直線性:20〜3,000nM BCE/mM Cr
製品名:オステオマーク
製造・販売元:持田製薬(株) Tel 03-3358-7211
測定法:ELISA法 96テスト/キット(ダブル測定)
結果がでるまでの時間:約2時間  自動化:可
同時再現性:3.1〜4.4% 日差再現性:2.9〜4.8%
検体:随時尿
【特徴】 ELISA法による測定試薬であり、酵素標識抗NTxモノクローナル抗体
に対して検体中のNTxとマイクロタイタープレートに結合したNTxとが競合反応
することによりNTx濃度を測定することができる。
 I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)はELISA法によるキットで乳癌、肺
癌、前立腺癌患者の骨転移診断と計画的な治療管理、原発性副甲状腺機能亢進
症の手術適用の決定または副甲状腺機能亢進症手術後の治療効果判定の際に、
既に保険が適用(平成9年8月9日)されている。今回は骨粗鬆症への保険適用拡
大の要望であり、承認されたものと同じキットである。骨粗鬆症患者に対する
薬物療法において、NTxの値は骨吸収を反映し、その変化率は骨塩量の変化率
と有意に相関し、NTx変化率の大きさは骨塩量の変化率に比べ大きい。骨粗鬆
症患者に対する薬物療法において、NTxの変化は骨塩量の変化を反映し、治療3
〜6か月目に有意な変化を示したことにより、治療法の効果判定の指標として
有用である。米国においての使用方法としては治療する前に測定して、基礎値
を把握し、薬剤を投与してから3〜6か月後にNTxを測定する。測定値が低下せ
ず、骨吸収が抑制されていないと考えられる場合は薬剤の効果を疑い、服薬の
コンプライアンス確認、薬剤の変更等を検討する。測定値が低下して、骨吸収
が抑制されている場合にはその後一年に一回の間隔でNTxを測定し、効果の持
続を確認する。
【保険請求上の注意】 特殊物質定性定量検査の「13」に準じ、骨粗鬆症の薬剤
治療方針の選択時に1回に限り算定でき、その後6か月以内の薬剤効果判定時
に1回に限り算定できる。なお、薬剤治療方針を変更した時は、変更後6か月
以内に1回に限り算定できる。ただし、デオキシピリジノリンとI型コラーゲ
ン架橋N-テロペプチド(NTx)と併せて実施した場合は、主たるもののみ算定す
る。
【文献】 井上 哲郎、他:骨粗鬆症患者に対する薬物治療の効果判定におけ
る尿中I型コラーゲン架橋N−テロペプチド(NTx)の有用性の検討.Geriat.
Med.、35:1441-1447、1997

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆シアル化糖鎖抗原KL-6
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シアル化糖鎖抗原KL-6(準用先区分D007-29)(区分D-2)
平成11年12月1日より適用の血液化学検査
保険点数:150点 定量検査
基準範囲:カットオフ値 500U/mL以上陽性 直線性:10,200U/mLまで
製品名:ピコルミKL-6
製造・発売元:三光純薬(株) TEL 03-3863-3271
測定法:ECLIA法 100テスト(96検体用)/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:約20分  自動化:専用の自動測定装置にて可
同時再現性:0.9〜7.1% 日差再現性:2.3〜4.1%
検体:血清
【特徴】 ビーズに固相化した抗KL-6マウスモノクローナル抗体(以下、抗KL-
6抗体)に検体中のシアル化糖鎖抗原KL-6 (以下、KL-6)を特異的に結合させ、
結合したKL-6にルテニウム標識抗KL-6抗体を結合させ、電気エネルギーを加え
ることによりルテニウム錯体を発光させ、検体中のKL-6濃度を定量するサンド
イッチ型電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)である。
 シアル化糖鎖抗原KL-6についてはマニュアル法操作によるEIA法が既に平成
11 年6月1日付けで承認されている。今回のキットは専用の自動測定装置(ピコ
ルミ8220)にて測定可能なECLIA法によるものである。KL-6はムチンの一種でII
型上皮細胞等に発現する糖蛋白抗原であり、間質性肺炎に特異性の高い血清
マーカーであることが知られている。本キットによる間質性肺炎の陽性率は78
%であり、間質性肺炎群(122例)と有疾患対照群(225例)における有病正診率、
無病正診率、診断効率はそれぞれ78%、91%、86%であった。また、活動性の
間質性肺炎群(65例)は非活動性の間質性肺炎群(57例)に比べて有意に高値で
あった(P<0.0001)。
 本キットと既承認EIA法との相関は、r=0.996,y=0.997x−5.565と良好で
ある。本キットはEIA法に比べ測定範囲が51〜10,200U/mLと広く、測定時間も
短時間(約20分)で測定できるという特徴を有する。
【保険請求上の注意】 SP-D(サーファクタントプロテインD)、シアル化糖鎖
抗原KL-6およびSP-A(サーファクタントプロテインA)のうちいずれか複数を合
わせて実施した場合は、主たるもののみ算定する
【文献】 河野 修興、他:電気化学発光免疫測定法によるKL-6測定キット
ED066の間質性肺炎に対する診断能.臨床と研究、75(5):217-222、1998

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆アスペルギルス抗原
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アスペルギルス抗原(準用先区分D012-22)(区分D-2)
平成11年12月1日より適用の感染症血清反応
保険点数:300点 定性検査
基準範囲:1 ng/mL以上
製品名:プラテリア アスペルギルス
製造元:Sanofi Diagnostics Pasteur, France
輸入元:サノフィ 富士レビオ ダイアグノステックス(株) Tel 03-5275-7331
発売元:富士レビオ(株) Tel 03-5695-9210 (検査薬学術部)
測定法:ELISA法 96テスト/キット(シングル測定)
結果がでるまでの時間:2時間30分  自動化:可(マイクロプレート用自動機
器)
同時再現性:CV 5.7±2.0% 日差再現性:CV 8.6±2.9%
検体:血清
【特徴】 本法は、1ステップサンドイッチ法により血清中のアスペルギルス
抗原(ガラクトマンナン)を検出するELISA法の試薬である。固相(マイクロプ
レート)及び酵素標識抗体には同一の抗ガラクトマンナンモノクローナル抗体
を使用している。
 本キットは、従来法からあるラテックス凝集法:パストレックス アスペル
ギルス(平成6年10月1日承認)の感度を高めたELISA法の試薬である。特異性の
優れた、従来法と同一の抗ガラクトマンナンモノクローナル抗体を使用してい
るが、測定感度は、ガラクトマンナン(GM)濃度として従来法の15ng/mLから
1ng/mLへと向上している。侵襲性アスペルギルス症は早期診断・早期治療が必
須であるが、本キットの使用により感染早期に抗原を検出できる。また、従来
法が目視判定であるのに対し、本法は吸光度測定によるため、客観的な判定が
可能となった。自動化については、現在数社から販売されているELISA(マイク
ロプレート)用自動機器で対応できる。
【保険請求上の注意】 アスペルギルス抗原は侵襲性肺アスペルギルス症の診
断のために実施した場合にのみ算定できる。
【文献】 木下承晧、他:侵襲性Aspergillus症におけるガラクトマンナン
enzyme linked immunosorbent assay (ELISA)の評価.医学検査、48:995-
999、1999

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[Q&A] ◆左房内に流入する血流
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(Q)心エコーで収縮末期から拡張期にかけて左房内に流入する、ドップラー
で2峰性のインフローの示す血流が見られました。何が考えられるでしょう
か。

(A)左房内に流入する血液ということで、肺静脈血流と思われます。条件良
く記録されれば、収縮期に2つあるいはそれらが重なって1つと、拡張期に1
つのピークのある波形で、拡張末期には心房収縮を反映する逆向きの血流が見
える可能性もあります。左房圧が高いとき収縮期速度/拡張期速度は小さくな
ることから、心機能の指標ともなります。

回答日:1999年12月16日
回答者:認定臨床検査医 幸村 近(No.445)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)]
 
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[Q&A] ◆術後に見られる奇異性運動
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(Q)心室中隔欠損症などの先天性心疾患を手術で治療した後でも、心エコー
で奇異性運動が見られるのはなぜでしょうか。(臨床検査技師)

(A)右心系の容量負荷のために心室中隔の奇異性運動がみられる疾患で、手
術により負荷がなくなったにもかかわらず奇異性運動が改善しないのは、心膜
切開の影響と思われます。即ち手術の際、切り開いた心膜は通常再縫合しない
ため、心臓全体が振り子様に動いて見かけ上奇異性運動になる可能性が考えら
れます。また、術前の肺高血圧の影響で心筋障害が残存しているような場合に
は、中隔の動きの回復の遅れが関係している可能性もあります。

回答日:1999年12月16日
回答者:認定臨床検査医 幸村 近(No.445)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)]
 
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[Q&A] ◆臨床検査技師と経食道エコー検査
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(Q)臨床検査技師が経食道エコーのプローブを操作することに、法律上の問
題はないのでしょうか。(臨床検査技師)

(A)政令で定める生理学的検査には内視鏡、心電図の食道誘導、筋電図の針
電極などは含まれておらず、臨床検査技師は実施できないことになっています
ので、経食道エコーについても同様と考えた方がよいでしょう。相当心エコー
の経験を積んだ臨床検査技師でも、あまり実施例はないようですので、すでに
患者さんが飲み込んでいるプローブについても、操作は医師に任せて記録だけ
を担当する方が無難と思われます。

回答日:1999年12月16日
回答者:認定臨床検査医 幸村 近(No.445)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)]
 
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[編集後記]◆専門医のための超実践的知的所有権講座
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 ヒューマンゲノムプロジェクトに対抗して、私企業が先回りして遺伝子の特
許出願しているというようなニュースに触れるにつけ、今後知的所有権の問題
が、我々の専門領域により深くかかわってくることは間違いありません。あら
ゆる臨床検査に企業の許諾が必要となり、我々の業界がPCRで飲まされた煮え
湯の、さらに何倍もの痛手を被る恐れもあります。それでも、知的所有権が問
題になるのは、誰もがあっと驚くような発明だけで、特許をとろうにも大変な
お金と手間がかかるし、我々には縁がない、と最初から諦めている方も多いの
ではないでしょうか。

 日本で知的所有権というと、どうも金儲けとか、権利侵害の賠償とか、およ
そ人間の欲望が前面に出てしまい、学問とは相容れないイメージで語られがち
です。しかしながら、特許制度の最も大切な目的は、発明者が懐手で儲けるこ
とではなく、有用な発明の実用化と普及を社会全体で後押しすることにありま
す。したがって、少なくとも社会から研究の機会を与えられている我々は、新
しい知的価値を生み出すだけではなく、金儲けにしか関心のない連中の良から
ぬ企みを防ぎつつ、そのメリットを正しく社会に還元するために、知的所有権
をうまく使いこなす社会的義務があるとも言えるのです。

 ここで基礎知識のおさらいをしておくと、知的所有権には著作権と工業所有
権があり、後者に商標、意匠、実用新案および特許があります。我々に関係の
深いのは最後の2つで、満たすべき要件は、何かの役に立つことと技術的創作
物であることの他、進歩性と新規性を備えていることです。進歩性について
は、特許については革新的であることが求められ、既にある技術から容易に導
くことができるものは、特許として認められません。新規性とは、公知でない
こと、即ち、誰もが知っていたり、既に発表されているものは認められないと
いうことです。

 ここでよく問題になるのは、学問的業績としてのプライオリティーを確保す
るために、学会や学術誌で発表した場合、新規性に抵触するかどうかです。日
本の場合、特定の条件を満たしている場合には、発表後一定期間内であれば、
後追いで出願すれば新規性は確保されます。ただし、その特許に関して請求項
として認められるのは、発表した範囲内に限られてしまうので、どの内容をど
こまで発表するかによって、特許そのものが重大な影響を受けることになりま
す。また、「私は特許などに固執しない。発表してしまえば特許にならないの
だから、皆が私の発明を自由に使えるようになるはずだ」とお考えの方もおら
れますが、お金を儲けたい人にとっては、アイデアだけを盗んで権利化するの
はいとも簡単なことです。下手をすると、許諾料を払わないと自分の発明を実
施できなくなる恐れがあり、ベテランの研究者の中には、今も悔しい思いをさ
れている方々が少なくありません。また、米国留学経験者の中には、論文には
共同研究者として名前が載ったものの、特許の書類から勝手に名前を外され、
未だに納得できない方もおられるでしょう。

 したがって、本当に世のためになる研究成果を得たら、発表の前に是非権利
化を検討すべきです。しかし、そこで障害になるのが、手間とお金の問題で
す。弁理士に委託すると、一件当たり最低50万円はかかりますし、外国に出
願すればさらにその数倍かかります。そこで研究者の中には、この費用を節約
するため、自分で書類の書き方を勉強し、出願する方もおられるようですが、
あまりお勧めできません。つまり、その発明が審査官に認められ、かつ権利侵
害を有効に防げるよう、必要十分な請求項を組み立てるためには、特許ビジネ
スに関する豊富な実地経験の裏付けが必要なのです。たとえ独力で出願した特
許が成立したとしても、いざ権利侵害に遭遇した際には、素人には手も足も出
ません。特許制度の本来の目的を達成するためには、発表前から優秀な弁理士
に相談し、権利化の可能性、発表の時期と内容、審査請求のタイミング、ビジ
ネス化の戦略、権利侵害への対策等につき、その都度アドバイスを受けること
が肝要なのです。

 そうは言っても、これまでは、特許になるかどうかもわからないのに、自ら
そんな大金を出す研究者は少なく、企業に権利を渡す代わりに、出願費用を負
担してもらうという形が一般的でした。しかし最近では、大学や公立研究所の
頭脳を、新産業の創出に積極的に活用するため、TLO等さまざまな支援制度が
整備されつつあります。なかでも我々研究者個人にとって、現在のところ最も
有利な制度は、科学技術振興事業団の有用特許取得制度です。これは簡単に言
うと、研究者が開発した技術を丸抱えで出願のうえ事業化も支援してくれて、
もし儲けが出願費用を超えれば、その時点で権利を全て研究者に返してくれる
という、大変美味しい制度です。詳しくは同事業団ホームページ(http://
www.jst.go.jp/)の技術移転(新技術開発)の項に、特許化支援事業として記
載されていますので、興味のある方は一度ご覧になるとよいでしょう。

 理念に沿った学術研究活動を着実に続けていくためには、「役に立つ」研究
の成果が生んだ価値で、次の研究の費用を賄うと同時に、その一部を「役に立
たない」研究にも回して、経済的に自立することが理想です。真理を追究すべ
き学問において、「役に立つ」ということは目的の一部に過ぎません。しか
し、今までは権威や論文といった、余りにも浮世離れしたものだけに、その評
価を頼り過ぎていたのではないでしょうか。そろそろ我々も、「役に立つ」研
究成果を正々堂々と自慢し合えるよう、意識改革が必要な時期に来ているのか
も知れません。

[編集担当 西堀眞弘]

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JACLaP WIRE No.17 1999年12月18日
■発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
■編集:JACLaP WIRE編集室■編集主幹:西堀眞弘
●記事・購読・広告等に関するお問い合わせ先:
 〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45
 東京医科歯科大学医学部附属病院検査部気付
 e-mail: [email protected]
 TEL: 03-5803-5628 FAX: 03-5803-0110
●日本臨床検査医会ホームページ: http://www.jaclap.org/
※JACLaP WIRE掲載記事の著作権は法律により保護されています。
※転載を希望される場合は上記お問い合わせ先にご一報ください。