JACLaP WIRE No.9 1999.08.26 



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          JACLaP WIRE No.9 1999年8月26日
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│本メールは日本臨床検査医会の発行する電子メール新聞です。なるべく等|
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│におられましたら、お手数ですが回覧をお願いします。配信申込、アドレ|
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============================≪ 目 次 ≫============================

[お知らせ]◆RCPC記事リストをホームページで公開
[お知らせ]◆日本臨床検査医会ホームページのレイアウト全面改訂
[お知らせ]◆平成11年度第2回常任幹事会・全国幹事会議事要旨
[お知らせ]◆ようこそ!新入会員紹介

[ニュース]◆第2回国際実験診断学学術交流・教学検討会の参加者募集
[ニュース]◆第13回JCCLS学術集会でISO/TC212の作業状況を紹介
[ニュース]◆臨床検査ネットQ&AのページがCD-ROM付の本に
[ニュース]◆臨床検査関連団体協議会が政府与党などに要望書を提出
[ニュース]◆第17回日本臨床検査医会振興会セミナー開催
[ニュース]◆日本臨床検査医会教育セミナーは初の関西会場にも多数参加
[ニュース]◆発展途上国における堕胎
      〈WHOトピックス Press May 1999 WHO-118〉
[ニュース]◆ポリオ
      〈WHOトピックス Fact May 1999 WHO-117〉
[ニュース]◆ヨード欠乏症(IDD)の対策
      〈WHOトピックス Press May 1999 WHO-116〉
[ニュース]◆職業病
      〈WHOトピックス Fact Jun. 1999 WHO-115〉
[ニュース]◆葉巻とパイプでふかす刻みタバコは紙巻タバコと
        同じように危険
      〈WHOトピックス Fact Apr. 1999 WHO-114〉
[ニュース]◆各種疾患の中で精神・神経障害が
        経済的・社会的な負担を増大させている
      〈WHOトピックス Fact Apr. 1999 WHO-113〉
[ニュース]◆らい病の撲滅が近未来に実現か
      〈WHOトピックス Press Apr. 1999 WHO-112〉

[特別寄稿]◆感染症のピットフォール(連載第4回)

[新規収載]◆抗糸球体基底膜抗体精密測定
[新規収載]◆フリーPSA/トータルPSA比精密測定
[新規収載]◆尿中NMP22精密測定
[新規収載]◆SP-D(サーファクタントプロテインD)
[新規収載]◆シアル化糖鎖抗原KL-6
[新規収載]◆BAP(骨型アルカリフォスファターゼ)
[新規収載]◆HIV-1, 2抗体価
[新規収載]◆抗ガラクト−ス欠損IgG抗体精密測定

[Q&A] ◆網赤血球染色で見られる網状物質と紛らわしい小体の鑑別
[Q&A] ◆唾液中コルチゾールの測定キット
[Q&A] ◆術中迅速細胞診の指針
[Q&A] ◆自動解析心電計によるQTc延長の判定
[Q&A] ◆乳び、溶血、色調の解釈
[Q&A] ◆Rh不適合妊娠予防グロプリン投与時のクームス検査
[Q&A] ◆ATL以外のCD3弱陽性細胞出現疾患
[Q&A] ◆2,5-ヘキサンジオン高値受診者への対処
[Q&A] ◆臨床検査の仕事と臨床検査技師の資格
[Q&A] ◆臨床検査技師になるための専門的学習
[Q&A] ◆臨床検査技師の公務員試験受験
[Q&A] ◆保育器用加湿器の感染対策
[Q&A] ◆Pseudomonas aeruginosaのメタロβラクタマーゼ検出法
[Q&A] ◆外注検査の判断料算定
[Q&A] ◆MRSA保菌患者のリハビリテーション
[Q&A] ◆ALPの異常低値
[Q&A] ◆INR表示導入の実際
[Q&A] ◆ホルター心電図計の異なるメーカー間での精度管理
[Q&A] ◆左心系のエアー様エコー所見

[論壇]  ◆春季大会演者インタビュー

[声の広場]◆JACLaP NEWS No.47の会員の声について

[求人]  ◆東京の病院が内科常勤医師を募集

[編集後記]◆続:偉大な国アメリカ
 
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[お知らせ]◆RCPC記事リストをホームページで公開
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 この度、ホームページの「臨床検査医のためのデータバンク」にRCPC記事リ
ストの掲載を開始しました。学会誌、雑誌、著書、ホームページ等に掲載され
たRCPCを一覧できるリストです。日本臨床検査医会にとって貴重なRCPC記事の
散逸を防ぎ、会員の有効利用に資することを目的に編集されていますので、是
非有効にご活用下さい。皆様からお寄せいただいた情報も掲載します。

[1999年8月7日 情報・出版委員会]
 
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[お知らせ]◆日本臨床検査医会ホームページのレイアウト全面改訂
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 日本臨床検査医会のホームページを専用サーバに移設し、いままで会員有志
のページとして独立していた「臨床検査医のページ」を統合すると共に、レイ
アウトを全面的に改訂しました。これに伴い、「臨床検査医のページ」に直接
リンクを設定していた方は、恐れ入りますがアドレス(URL)を
 に変更して下さい。なお、これまでこのドメイン
ネームでアクセスできるのはトップページに限られていましたが、今後はサー
バが変更されても同じアドレスが維持されるため、最後のスラッシュの後にデ
ィレクトリやファイル名を続けて、個別のページを指定することができます。

[1999年7月19日 情報・出版委員会]
 
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[お知らせ]◆平成11年度第2回常任幹事会・全国幹事会議事要旨
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 日時:平成11年5月29日(土) 12:00〜13:00
 場所:慶應義塾大学病院
 議題:
  1.報告
  ・各種委員会
   1)情報・出版委員会
    ・会誌(LAB-CP)の発行がおくれているが、会報(JACLap
     News)は予定どおり発行されている。
    ・臨床検査Q&Aは「臨床検査ネットQ&A」として5月
     中に発刊予定。
    ・新委員:山口一郎(山形大学)、石田博(川崎医大)の
     加入が承認された。
   2)教育・研修委員会
    ・第34、35回「輸血・骨髄・免疫電気泳動」の教育セミナ
     ー、第36回「精度管理・検査室管理」の教育セミナーが
     開催され、多数の参加者があった。
    ・第7回Good Laboratory Managementに関するワークショ
     ップが開催され、15名が参加した。
    ・第37回教育セミナー「生化学・一般検査・微生物検査」
     が6月6日に開催される。
   3)資格審査委員会
    ・名誉会員規定、会長・監事等の選挙の在り方についての
     検討事項の進捗状況、本年総会に会則改訂案を提示する
     などが報告された。
   4)渉外委員会
    第17回振興会セミナー
    日時:平成11年7月9日(金)13:30〜16:30
    特別講演:医療経営からみた臨床検査−医療行政、内部管
    理、将来展望− 高橋淑郎(国際医療福祉大学)
    学術講演:1.肥満と臨床検査 篠宮正樹(済生会船橋病院)
        2.スポーツと臨床検査 高波嘉一(東京医科大学)
  ・会員動向
    平成10年度新会員:77名、平成11年度新会員(5月28日
    現在):38名  総会員:532名
  2.審議事項
   1)平成11年度日本臨床検査医会総会・講演会
    講演内容・講演者
    ・中島、水口幹事に一任し、臨床検査領域での病理医に
     ついて講演者、演題名を決定してもらうこととした。
    ・次回春季大会会長については次回幹事会までに候補者を
     絞ることとした。
   2)「日本臨床検査医会総合政策研究所」案について
    ・新世代における臨床検査医など臨床検査医が直面する諸
     問題について討議する場所あるいは機関が欲しい主旨の
     説明があり、後日詳細を西堀幹事からに全国幹事に回覧
     した後、検討することとなった。
   3)臨床関連団体協議会(六者懇)について
    ・日本臨床病理学会、日本臨床衛生検査技師会、日本衛生
     検査所協会、日本臨床検査薬協会、日本臨床検査薬卸協
     議会と本会からなる6者による協議会が開催され、「平
     成12年度診療報酬抜本改訂での臨床検査に対する要望書」
     のとりまとめが行われている。
   4)「ラボ」での日衛協との契約について
    ・協会「ラボ」を650部寄贈し、著者に5,000円の図書券を
     贈呈する
    ・有効期間は2年間とする
    ・著作権は日本衛生検査所協会が所有する
    などを骨子とした覚え書きについて了承され、署名・捺印
    された

  3.その他
   1)要覧の件
    ・要覧は最終校正を終えており近日発行する運びとなって
     いる。
   2)ホームページの件
    ・会員動向、特に教授・助教授については迅速な情報とな
     るように西堀幹事に努力してもらうこととなった。

[1999年5月29日 庶務・会計幹事 高木 康]
 
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[お知らせ]◆ようこそ!新入会員紹介
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 新しく入会された会員等をご紹介します。

《新入会員》(入会手続き順)
南口早智子 京都大学医学部附属病院病理部
明石 高明 名古屋大学医学部臨床検査医学
加藤 元一 京都第二赤十字病院中央検査部
原田  大 飯田市立病院臨床病理科
米山 彰子 東京大学医学部附属病院検査部
宗像 靖彦 東北大学医学部附属病院検査部
羽田  悟 長野赤十字病院検査部
草野 展周 琉球大学医学部附属病院検査部
北本 康則 熊本大学医学部第三内科・中検
後藤 峰弘 愛知医科大学臨床検査医学
津田 博子 九州大学医学部附属病院検査部
中村 康寛 聖マリア病院病理部
幸村  近 旭川医科大学検査部
中川 俊正 大阪医科大学病態検査部
毛利  博 横浜市立大学医学部第一内科
岩佐 葉子 大津赤十字病院検査部
出原 賢治 九州大学医学部臨床検査医学
中澤  功 信州大学医学部病理学第一
佐藤 仁哉 自衛隊中央病院研究検査部病理課

《退 会》
丹羽 豊郎
藪 由紀子
山下 精彦

[1999年5月28日現在 庶務会計幹事 高木 康]
 
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[ニュース]◆第2回国際実験診断学学術交流・教学検討会の参加者募集
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 第2回国際実験診断学学術交流・教学検討会(The 2nd International
Conference on Laboratory Diagnosis and Teaching Research (ICLD))が平
成11年11月1日(月)から同5日(金)まで、中国の上海市で開催され
る。応募期限は8月30日までであるが、それまでにメールで演題の概要を送
れば、その後詳しい情報が通知されるとのことである。検査医会ホームページ
に招待状の写しが掲載されているので、是非ご一読のうえご参加いただきた
い。なお、送付先は下記の通りである。

 TEL: +86-21-64370045 EXT. 665541
 FAX: +86-21-64333548
 E-mail: [email protected]

[1999年8月25日 獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[ニュース]◆第13回JCCLS学術集会でISO/TC212の作業状況を紹介
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 日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の第13回学術集会が、1999年8月21日に
東京医科歯科大学で開催された。今回はISO(国際標準化機構)で唯一臨床検
査分野の規格を検討している、ISO/TC212(「臨床検査と体外診断検査システ
ム」専門委員会)の作業状況が詳しく紹介された。
 作業は3つのWG(ワークグループ)に分けられており、WG1は臨床検査室の
管理、WG2は測定法と標準物質、WG3は体外診断用機器についてそれぞれ何本か
の標準規格を担当している。現状では用語の統一や規格の遵守に伴うコスト
アップなどの課題が残っており、各グループの進行段階にも大きな差が見られ
る。しかし関係者の尽力によって作業は着実に進んでおり、国際標準として認
められるのは時間の問題との印象を受けた。
 ただし、河合忠国内検討委員長による最後のまとめの中で、いざ規格が成立
したとしても、我国にはそれを運用する十分な体制がないという問題点が提起
され、各規格の認証を別々の組織が縦割りに実施するのではなく、できるだけ
互いに連携できるような形で整備することが急務であるとの見方が示された。

《問い合わせ先》 日本臨床検査標準協議会事務局
         〒103-0008 東京都中央区日本橋中洲1-1
         TEL/FAX 03-3669-9110

[1999年8月21日 西堀編集委員]
 
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[ニュース]◆臨床検査ネットQ&AのページがCD-ROM付の本に
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 日本臨床検査医会のホームページの中でも、特に人気のある「臨床検査ネッ
トQ&A」のページが、好評に応え遂に書籍として出版される運びとなった。
以前より教科書などをホームページに掲載する試みはあったが、これはその逆
であり、まさにネットワーク時代を象徴する出来事と言える。
 開設以来本年3月1日までにホームページに掲載された質疑応答が全て網羅
され、最新の検索機能を搭載したCD-ROMも付属しているが、臨床検査医の活動
をできるだけ多くの方に知っていただけるよう、価格は低めに押さえられてい
る。
 教育あるいは実務の現場で即戦力となる知識が満載されており、臨床検査技
師、医師、学生などの他、検査医自身の生涯学習にも役立つ内容となってい
る。

臨床検査ネットQ&A 1999
編集 日本臨床検査医会 情報・出版委員会
薬事日報社
B5版 214ページ
定価 2,400円(税別)

[1999年7月26日 情報・出版委員会]
 
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[ニュース]◆臨床検査関連団体協議会が政府与党などに要望書を提出
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 DRG/PPSに対応した体制固めのため、日本臨床病理学会、日本臨床検査医会
、日本臨床衛生検査技師会、日本衛生検査所協会、日本臨床検査薬協会、日本
臨床検査薬卸協議会が結成した臨床検査関連団体協議会(6者協議会)が、平
成12年度診療報酬抜本改訂に対する要望書を厚生省、日本医師会および自由民
主党に提出した。要望には、検体検査判断料や検体検査管理加算の維持拡充、
実施料の実額請求、新技術の優遇の他、混合診療の導入など、従来の発想を根
本から覆す内容も含まれている。全文が日本臨床検査医会のホームページで公
開されているので、ご参照いただきたい。

[1999年7月23日 獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[ニュース]◆第17回日本臨床検査医会振興会セミナー開催
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 第17回振興会セミナーは次のプログラムで盛会裡に開催された。

 日  時: 平成11年7月9日(金) 13:30〜16:30
 場  所: 東京ガーデンパレス(湯島会館)3階 平安の間
       東京都文京区湯島1-7-5 TEL:03-3813-6211

 開会の挨拶 13:30               日本臨床検査医会会長    大場康寛

 特別講演  13:40〜14:50(講演60分、質疑10分) 司会  大場康寛
    「医療経営から見た臨床検査
         ―医療行政、内部管理、将来展望―」
            国際医療福祉大学医療福祉学部
                医療経営管理学科教授    高橋淑郎

 休  憩  14:50〜15:00 コーヒーブレイク

 学術講演1 15:00〜15:40(講演30分、質疑10分) 司会   森三樹雄
    「肥満と臨床検査」
                    済生会船橋病院院長    篠宮正樹

 学術講演2 15:40〜16:20(講演30分、質疑10分) 司会   桑島 実
        「スポーツと臨床検査」
         東京医科大学衛生学・公衆衛生学講師     高波嘉一

 閉会の挨拶 16:20      日本臨床検査医会副会長     桑島 実

 懇親会   16:30〜18:30 東京ガーデンパレス 2階 羽衣の間

[1999年7月9日 渉外委員会]
 
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[ニュース]◆日本臨床検査医会教育セミナーは初の関西会場にも多数参加
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 年々参加者増が著しい教育セミナーであるが、本年は初めて開催された関西
会場にも多数の参加があった。第34回教育セミナー(1999年3月7日、日本大学
)には30名、第35回教育セミナー(1999年3月21日、大阪医科大学)には25名
、第36回教育セミナー(1999年4月17日、昭和大学)には60名が参加した。
(追加情報:第37回教育セミナーは1999年6月6日(日)に順天堂大学で開催さ
れ、54名が参加した。)

[1999年5月29日 教育研修委員会]
 
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[ニュース]◆発展途上国における堕胎
      〈WHOトピックス Press May 1999 WHO-118〉
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 世界では毎年約5000万例の堕胎が行われ、そのうち2000万例は危険な状態で
行われている。危険な状態での堕胎の90%は発展途上国で行われ、そのうち94
%の国は堕胎が法律で規制されている。そのため、危険な状態での堕胎による
死亡者は先進国では3700例に1例であるのに対し、発展途上国では250例に1例
と多い。毎年、危険な状態での堕胎により7万人の女性が死亡し、堕胎を受け
た多くの女性が不妊症、慢性疾患、身体の機能障害などになっている。ネパー
ルやドミニカ共和国でも避妊具を用いないため、子供が出来るケースが多い。
WHOでは各種の避妊法を普及させ、堕胎を少なくするよう努力している。堕
胎の原因は家族計画が実施されていないこと、郊外から都会への人口移動、貧
困、婚外性交の増加、年少者の性交、避妊をしない性交などによる。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[ニュース]◆ポリオ
      〈WHOトピックス Fact May 1999 WHO-117〉
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 ポリオはポリオウイルスによる感染症で主に3歳以下の子供に感染する。中
枢神経系に浸潤し、麻痺を起こす。ポリオウイルスには3型あるが、1型が最
も多く毒性も強い。ポリオウイルスは経口感染し、発熱、易疲労性、頭痛、嘔
吐、頚部硬直、四肢痛などである。ポリオに感染すると200例中1例は四肢麻
痺を起こす。5〜10%は呼吸筋が麻痺するために死亡する。1998年には約5000
例のポリオが報告されているが、実際の数字は5〜10倍の数になると思われ
る。WHOでは1998年からポリオ撲滅を目指し活動しているが、ここ10年間で
ポリオ患者は85%減少している。1988年には5大大陸に広く流行していたが、
現在はアフリカとインドに限局している。2005年にはポリオが存在しない世界
を目標にしている。現在の3大感染地域は南アジア(アフガニスタン、バング
ラデシュ、インド、ネパール、パキスタン)、西・中央アフリカ(アンゴラ、コ
ンゴ、ナイジェリア)およびアフリカ南端である。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[ニュース]◆ヨード欠乏症(IDD)の対策
      〈WHOトピックス Press May 1999 WHO-116〉
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 一年間に世界中で7億4000万人がヨード欠乏症(IDD)にかかり、脳障害、
クレチン病、流産、甲状腺腫などを起こす。IDDは知能障害の最も重要な原
因と考えられている。WHOでは胎児、乳児、小児の脳障害を防ぐためにヨー
ド含有食塩やヨードを与えるよう指導している。2005年までにIDDによる各
種疾患の撲滅を目指している。多くの国でヨード含有食塩摂取プログラムを取
り入れた国が1990年の46か国から1998年には93か国に増えている。IDDが多
発する国では家庭の3分の2はヨード含有食塩を摂取している。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[ニュース]◆職業病
      〈WHOトピックス Fact Jun. 1999 WHO-115〉
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 職業病として外傷や病気に罹患し死亡する人が、世界で毎年約110万人いる
が、その数はマラリアの死亡者数とほぼ同じである。この内訳は癌34%、外傷
25%、慢性呼吸器疾患21%、循環器疾患15%、その他5%となっている。毎
年、2億5000万人が職業人として事故に遭遇し30万人が死亡している。毎年、1
億6000万人が職業病に羅患しているが、その内訳は呼吸器疾患、循環器疾患、
癌、聾、筋肉・骨格疾患、生殖器疾患、精神・神経疾患などである。職場で適
切な医療サービスを受けている職業人は発展途上国では5〜10%、先進国でも
20〜50%に過ぎない。ILO(国連・国際労働機関)によれば1997年の統計で職
業病としての外傷や病気による経済的損失は、世界の国民総生産の約4%に当
たる。現在60才以上の高齢者は5億9000万人いるが、2020年には10億人以上に
なると予想されており、職業病も増加する。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[ニュース]◆葉巻とパイプでふかす刻みタバコは紙巻タバコと
        同じように危険
      〈WHOトピックス Fact Apr. 1999 WHO-114〉
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 フランスのリオンにある国際癌研究所(IARC)は葉巻とパイプでふかす刻
みタバコが紙巻タバコと同じように致死的な危険性があると報告した。今回の
調査では葉巻とパイプでふかす刻みタバコを通常より厳重に抑制することが必
要であると述べている。ドイツ、イタリー、スウェーデンなどにあるIARC
の7つの研究所で5621例の肺癌患者と7255例の肺癌のない人を対象に
調査したところ、葉巻喫煙者は非喫煙者よりも肺癌の発生率が9倍高く、パイ
プでふかす刻みタバコ喫煙者も8倍高かった。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[ニュース]◆各種疾患の中で精神・神経障害が
        経済的・社会的な負担を増大させている
      〈WHOトピックス Fact Apr. 1999 WHO-113〉
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 発展途上国、先進国のいずれの国でも、健康と病気に関する解析方法が必要
となっている。そこで障害者として生活する年数(DALY:Disability Ajusted
Life Year)の概念としてとらえるようになってきた。DALYは、死亡者数、未熟
児死亡、障害者を考慮して、疾患の位置づけを解析している。1DALYというの
は、健康的な生活を失い障害者になった1年間を意味する。この方法で各種疾
患を当てはめてみると、次のようになる。
 1990年度の統計を用いDALYをパーセントで表すと、寄生虫を含む感染症22.9
%、予期せぬ外傷11.0%、精神・神経障害10.5%、循環器疾患9.7%、呼吸器
感染症8.5%、周産期疾患6.7%、悪性腫瘍が5.1%となり精神・神経障害が重
要な問題となっていることがわかる。精神・神経障害には、精神病、てんか
ん、痴呆、パーキンソン病、多発性硬化症、薬物依存症、アルコール依存症、
外傷後ストレス症、強迫症、精神病となり、精神・神経障害が各国で経済的・
社会的な負担を増大させ問題になっている。
 コンゴ、エジプト、インドなどでは平均寿命が40才から66才に著しく延びた
にも関わらず、精神・神経障害が大きな問題点として浮上している。世界の精
神・神経障害の患者数は、うつ病3億4000万人、アルコール依存症2億8800万
人、機能障害6000万人、てんかん4000万人、アルツハイマー病を含む痴呆2900
万人、精神分裂病4500万人、自殺未遂1000万〜2000万人、自殺100万人にな
る。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[ニュース]◆らい病の撲滅が近未来に実現か
      〈WHOトピックス Press Apr. 1999 WHO-112〉
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 世界で最も恐れられている病気の一つであるらい病の撲滅は近いとWHOは
発表した。しかし2000年末になっても、人口1万人につきらい病患者1例以下の
目標を上回る国が約10か国ある。1985年に始まったMDT薬剤投与によるらい
病患者の治癒により、地球上から85%のらい病患者が減少した。らい病患者
が、人口1万人につき1例以上存在する国の数も、1985年の122か国から28か国
に減少した。1985年には500万人のらい病患者がいたが、現在は80万人に著減
している。1995年以来71か国にいる400万人のらい病患者にMDT薬剤が投与
された。現時点では200〜300万人のらい病患者が治療を受けている。らい病患
者に対する今後の戦略は、WHOは患者数が到達目標に達していない国に、緊
急処置を追加して2000年までに基準を達成するよう勧告している。らい病の流
行地域は人里離れているため、診断したりMDT薬剤を投与したりするのに困
難な場合が多い。
 今後2〜3年で200万人のらい病患者が出現すると予想されているが、その患
者の90%はアフリカ、南米、アジアなどの13か国に住んでおり、1999年の時点
でこれらの国の罹患率は1万人につき4.4人である。この13か国を上から順あげ
ると、インド、ブラジル、インドネシア、ミャンマー、マダカスカル、ナイ
ジェリア、モザンビーク、ネパール、エチオピア、コンゴ、ニジェール、ギア
ナ、カンボジアとなっている。MDT薬剤の無料投与については日本財団が5
年間に亘り、莫大な資金をWHOに寄付している。

[ホームページ/世界の保健医療ニュース]
 
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[特別寄稿]◆感染症のピットフォール(連載第4回)
                  佐賀医科大学検査部 田島 裕
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6.「消毒の落とし穴」とは何か?  (その1)
  まず第1に、褥瘡の手当の問題を取り上げてみたい。大抵の教科書には「患
部の消毒をしなさい」と書いてあるが、これ自体が「大きな誤り」ではないか
と考えている。確かに患部は壊死に陥った部分であるので、培養検査をすれ
ば、当然のことながら何がしらの菌は陽性に出ることが多い。しかし、強力な
消毒剤を使用すれば、菌は陰性化するかも知れないが(注9)、ただでさえ生
活能力の乏しい組織に対しては、それ以上の「打撃・損失」を与えている気が
してならない(注10) [5]。患部に強力な消毒剤を用いて、せっせと消毒に励
めば、組織の侵食は確実に進行するのである(注11)。極論すれば、「消毒を
して治癒する創傷」とは、消毒剤による破壊作用より自然治癒力の方が格段に
優っている場合のみである。以下に、褥瘡治療のポイントを羅列してみた。

・患部からMRSAが出たとしても、表層に留まっている限りは、消毒はなる
べく行わない。1時的には菌が消えるかも知れないが、患部が完全に再上皮化
して治癒しない限り、除菌の試みは徒労に終わる(注9)。即ち、菌などすぐ
に付いてしまうので、これを駆逐しようとして執拗に迫ると、却って患部を拡
大してしまうのである。
・その代わりに、温生食で患部をよく洗浄する。この際に、構造物を無理に剥
がしてはならない。この下に肉芽が形成されるので、乱暴に扱うと、物理的に
組織を壊してしまう。
・洗浄が終了したら、刺激の少ない(柔らかい)軟膏を厚く塗布する(=安価
なものでよい)。この軟膏には、必ずしも抗菌作用を持つ薬物を含んでいる必
要はないが(例;抗生物質)、血管拡張作用のある薬物を含んだ軟膏をいくら
か混ぜておくと、良い結果が得られることがある(注12)。この上にガーゼを
当てて操作を終了するが、さらに、患者に高蛋白食を摂取させるとよい
(「5」を参照のこと)。
・軟膏を厚く塗布する理由は、これが薄いとガーゼが傷口にベッタリと張り付
いてしまい、せっかく伸長してきた肉芽組織を、ガーゼ交換の際に機械的に破
壊してしまうためである。また、こうしておくと、患部の乾燥を防ぐと共に、
外部からの汚染や刺激を(物理的に)シャットアウトできる利点もある。
・これは蛇足であるが、(褥瘡)局所の状態に対して不釣り合いな発熱が長期
に見られる場合には、患者が菌血症から骨髄炎を併発した可能性があり、この
点が多く見逃されている。
  以上述べたことは、一般の創傷(例;手術創、ドレーン挿入孔)にも当ては
まると考える。

・即ち、強力な消毒薬を頻回に傷部に用いるのも考えもので、消毒剤の殺菌能
力が強ければ、同時に人体の細胞をも傷つけていることにも注意する必要があ
る。例えば、消化管の吻合の際に、消毒剤を塗ったままの断端を(デブリドせ
ずに)縫合すれば、縫合面に壊死層を挟むことになる。
・抵抗力のある肉芽組織であれば、頻回の消毒は不要で、刺激の少ない軟膏を
厚めにぬり、物理的に雑菌の侵入を阻止すれば十分である。
・頻回に包帯交換を行うと、それだけ菌が侵入するチャンスを多く与えている
ことになる(=「十分に治療している」との錯覚に陥っているだけである)。
手術創の感染は、多くは病室に戻ってきた後に生じている(=手術室で感染し
たのではない)。
・創部が完全に上皮化した後は、消毒は全く不要である(菌が陽性に出ても、
それは表面に付着しているだけである)。
・血液凝固第XIII因子が欠乏していると、創傷治癒が遷延することは、よく知
られるようになった。しかし、白血球の異物処理能力に欠陥がある場合にも、
同様に創傷治癒は不良となるが(例;慢性肉芽腫症)、この点が極めて多く見
逃されている。特に、高齢者の場合には、食細胞の機能に何らかの欠陥が見ら
れることが決して少なくない(「4」を参照のこと)。

7.「消毒の落とし穴」とは何か?  (その2)
  ここで、もう1つ「消毒の落とし穴」について言及してみたい。我々は、患
者に何か侵襲行為を加えようとする際には(例;手術)、患者の皮膚を消毒
し、なおかつ術者の手指も洗い清めて手袋などを装着する。この操作は決して
誤りなどではないが、皮膚の表面ばかり熱心に洗い清めてもあまり意味をなさ
ず、健康な皮膚であれば、その表面にはそれほど多くの菌は検出されないもの
である(注13)。
  即ち、「菌の温床」と化しているのは「毛穴・汗腺・皮脂腺」などの部位で
あって、ここに薬液が到達しないような消毒の仕方では、全く意味を持たな
い。ところが、このような部位は、総じて皮膚の陥凹部に位置しており、皮膚
の表面を単に機械的に擦るだけでは、殆ど目的を達せられないと考える。従っ
て、これらの部位に潜む細菌を除菌できるか否かは、「薬剤が局所に拡散・浸
透できるか否か」にかかっていると言えよう。ところが、消毒液や薬剤があま
りに「親水性」であると、そのような部位には容易には到達できない。即ち、
成分に全く有機溶媒や界面活性剤を含まないような消毒液では、十分に消毒操
作を行ったつもりでも、皮膚のごく表層のみの除菌に終始している可能性があ
る(注14)。
  検査室の側から見てみると、IVHのカテーテルの先端から培養が陽性にな
ることは、それほど珍しいことではない。しかし、それらの事例の多くは、患
者が敗血症を起こしていたり、IVHのラインから侵入したものではなく、む
しろ、消毒が不十分な皮膚からの「巻き込み」である可能性が高いように思わ
れる(注15)。患者の臨床経過と会わない「カテーテル菌血症」の場合には、
皮膚の消毒操作が本当に当を得たものであるのかどうかを、1度は検討してみ
る必要があろう。


注9:菌が「陰性」になっても、完全に除菌されたという保証はなく、単に
「検出限界以下」になっただけのことが、圧倒的に多い。従って、検査結果は
「陽性」と「陰性」を繰り返す。

注10:この点を強調した書物はいくつかあるが(例;文献5)、書かれてある
ことが守られていないことが多い。

注11:筆者が目撃した最も悲惨な例は、臀部に生じた褥瘡を強力な消毒剤を用
いて毎日処置していった所、患部の(消毒剤による!)侵食が進行して、とう
とうピンセットの先が大腿部の内側まで貫通してしまったという老婆であっ
た。これを見た瞬間に、筆者は「褥瘡部位の消毒は誤りである」と確信するよ
うになり、「親身で熱心な看護婦ほど組織の破壊度が大きい」という皮肉な結
果が生じていることに気が付いたのである。大体、自分の目に入れてひどく痛
むような(刺激の強い)薬剤が、傷ついた組織に対して「愛護的」であるハズ
がない。このことは、是非、御一考頂きたいと考える。なお、「どの消毒剤が
どの位害があるか」という点については、(製造メーカーの営業妨害にあたる
恐れがあるため)ここでは述べないが、菌を化学的に殺傷する性質の薬物は、
程度の差こそあれ、いずれも組織を破壊してしまうのである(決して、気管内
に散布などしてはならない)。

注12:抗生物質などを含んでいる軟膏を使用しても、かかる費用の割合に実際
に得られる効果は思わしくないが、血管拡張作用を有する軟膏(例;サイク
リックAMPの誘導体を含有)を塗布して、患者が「ヒリヒリする」と訴えれ
ば、生活能力が保たれている肉芽組織だと考えてよい(=治癒することがあ
る)。

注13:皮膚の表面には、約10^3/cm2ほどしか菌がいないが、毛穴や汗腺には、
この百〜千倍は菌が潜んでいる。口腔内の菌数は(〜10^8/ml)、糞便中の菌数
(〜10^11/ml)と大して変わりがない。「キス」よりは「握手」のほうが、遥
かに「清潔な挨拶」である。

注14:毛穴や汗腺の消毒に最も適している消毒剤は、「ヨードチンキ(=ヨウ
素のエタノール溶解物)」であると思われる。但し、これを用いると皮膚は荒
れ、接触性皮膚炎も多発する。

【参考文献】

[4] 田島 裕:低カリウム血症の軽考と大錯. 臨床診断のピットフォール
(只野 壽太郎・松井 征男 編), 医歯薬出版, 東京, pp.187-192, 1998

[5] 第14章 褥瘡. 高齢者医療 メルクマニュアル(原書 第2版, 日本語版 第
1版, 福島 雅典 編), メディカルブックサービス, 名古屋, pp.163-177,
1997

(編集部より:この記事に関するご意見は電子メールでアドレス
 [email protected] までお寄せ下さい。必ず著者にお届けします。)
 
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[新規収載]◆抗糸球体基底膜抗体精密測定
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平成11年8月1日より適用の自己抗体検査
保険点数:480点
カットオフ値:20EU
直線性:300EU
製品名:ネフロスカラー・GBM
製造元:輸入元:EURO-DIAGNOSTICA  AB, SWEDEN
輸入元:(株)ニッショー TEL 06-372-2331
発売元:(株)ニプロ TEL 06-373-3155
測定法:ELISA法 43テスト/キット(ダブル測定)
結果がでるまでの時間:3時間30分  自動化:可
同時再現性:0.97〜5.28% 日差再現性:6.71〜9.98%
検体:血清
【特徴】 マイクロプレートに抗原を固定させたELISA法による。検体をプ
レートに添加して免疫反応を行わせ、その後、酵素標識抗体を加える。反応
後、基質を添加して発色系に導き、吸光度を求める。標準品から標準曲線を作
成し、検体中の抗GBM抗体量を求める。
 抗GBM抗体腎炎及びグッドパスチャー症候群は、急速進行性腎炎症候群に
属し、臨床的症状として、血尿及び蛋白尿がみられ、急速に腎障害が進行す
る。強力な血漿交換による抗体の除去や免疫抑制治療による抗体産生の抑制に
成功しない限り、患者の約70%は短期間に腎不全または死に至る。グッドパス
チャー症候群は抗GBM抗体腎炎に肺出血が加わるため、予後はさらに悪い。
 抗GBM抗体腎炎及びグッドパスチャー症候群の診断は、従来から症状と生
検材料の組織所見によって行なわれていた。本キットはELISA法で血清中
の抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)を検出することにより簡便に診断でき
る。
 抗GBM抗体の測定(カットオフ値20EU)による、抗GBM抗体腎炎及び
グッドパスチャー症候群の有病正診率は100%(15/15例)、無病正診率は99.3%
(269/271例)と良好であった。抗GBM抗体価は抗GBM抗体腎炎及びグッド
パスチャー症候群の重症度との相関、発症による陽性化、症状の改善による低
下、治癒による沈静化、などがみられるため経過観察及び治療判定の効果に有
用である。患者の予後を考えると、抗GBM抗体でできるだけ早期に診断し、
直ちに血漿交換や免疫抑制療法などを開始することが重要である。
【保険請求上の注意】 抗糸球体基底膜抗体精密測定は、抗糸球体基底膜抗体
腎炎およびグッドパスチャー症候群の診断又は治療方針の決定を目的として
行った場合に限り、区分「D014」自己抗体検査の「18」に準じて算定する。
【文献】 長澤俊彦、他:抗GBM抗体.腎と透析、臨時増刊号:669-671、1997

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆フリーPSA/トータルPSA比精密測定
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平成11年8月1日より適用の腫瘍マーカー
保険点数:240点
カットオフ値: 20%
製品名:フリーPSA・ダイナパック/PSA・ダイナパック
製造元:Abbott Laboratories. Abbott Park Road, Abbott Park, IL, U.S.A.

輸入・発売元:ダイナボット(株)  TEL 03-3589-9580
測定法:EIA法 100テスト/キット(シングル測定)
結果が出るまでの時間:約20分  自動化:可
同時再現性:2.1〜8.1% 日差再現性:1.0〜2.9%
検体:血清
【特徴】 2ステップサンドイッチ法に基づくEIA法である。検体中のフリー
PSAは、抗PSAモノクローナル抗体固定化マイクロパーティクル及び酵素標識抗
フリーPSAモノクローナル抗体と結合する。基質添加後、発生する蛍光強度を
測定することによりフリーPSA濃度が算出される。
 現在、前立腺癌腫瘍マーカーとしてトータルPSAが使用されているが、特異
度に問題があり、特にグレーゾーン領域の値を示す症例では、前立腺癌と非癌
例を鑑別することが困難である。このグレーゾーンの症例について F/T比
を測定することにより、前立腺癌患者と非癌患者を効率よく鑑別することがで
きる。すなわちグレーゾーン(4〜10 ng/mL)の症例では、F/T比の測定と
単独トータルPSA測定において前立腺癌と非癌を鑑別診断すると、有病正診率
はそれぞれ89.3%/100%、無病正診率は44.4%/0%となり、F/T比が効率よく
鑑別することがわかった。F/T比を測定することにより、今まで非癌患者に
実施されてきた生検の約44%を省略することも可能となる。
 また、専用装置を用いることにより、トータルPSAがグレーゾーンの症例に
ついて、選択的にフリーPSAを測定し、自動的にF/T比を算出することも可能
である。
【保険請求上の注意】 フリーPSA/トータルPSA比精密測定は、診療および他
の検査(PA精密測定など)の結果から前立腺癌患者であることが強く疑われる者
に対して行った場合に限り、区分「D009」腫瘍マーカーの「9」に準じて算定
する。
【文献】 大堀 理、頴川 晋、小柴 健:Free/total前立腺特異抗原比(%)
は不必要な前立腺生検を減らせるか? 泌尿器外科、10:1305〜
1309、1997

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆尿中NMP22精密測定
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平成11年7月1日より適用の腫瘍マーカー
保険点数:230点
基準範囲:12U/mL未満(カットオフ値として)
直線性:2〜120U/mL
製品名:コニカ Matritech UNMP22 テストキット
製造元:Matritech Inc. Newton, Ma USA
輸入・発売元:コニカ(株) TEL 03-3349-5175
測定法:ELISA法 96テスト/キット(82測定) シングル測定
結果がでるまでの時間:4時間  自動化:可
同時再現性:0.6〜6.7% 日差再現性:2.7〜6.3%
検体:随時尿
【特徴】 プレートに結合した抗NMP22モノクローナル抗体及びジゴキシ
ゲニン結合抗NMP22モノクローナル抗体とにより、尿中NMP22との免
疫複合体を形成させる。この免疫複合体にペルオキシダーゼ標識抗ジゴキシゲ
ニンヒツジポリクローナル抗体を反応させ、ペルオキシダーゼの酵素活性よ
り、尿中のNMP22量を測定する。
 わが国では泌尿・生殖器系の癌のうち頻度が最も高いのが膀胱癌である。膀
胱癌患者は年間約8,400人発生すると考えられている。好発年令は60〜70歳代
で、男性が女性に比べ3〜4倍多い。死亡率は男女とも漸増傾向にあり、1950年
と1990年を比較すると人口10万人当たり、男性0.5人から3.5人に、女性0.5人
から1.5人と増加している。組織型は移行上皮癌が90〜95%と圧倒的に多く、
その他、扁平上皮癌や腺癌がわずか見られる。膀胱癌は再発率が75%と高く、
2年以内に再発することが多い。そこで再発を早期発見、早期治療により患者
の生存期間を延長させることができる。現在、膀胱癌の診断や再発の経過観察
は、膀胱鏡検査、生検、尿細胞診などによって行われてきた。
 尿中NMP22精密測定の膀胱癌における有病正診率は61.1%であり、尿細
胞診の33.3%に比べ約2倍、また腫瘍径が10mm未満の膀胱癌での有病正診率は
42.3%であり、尿細胞診の11.5%に比べ約4倍高い値を示し、尿細胞診陰性群か
ら多数の膀胱癌を検出した。顕微鏡的血尿患者からの尿路上皮癌の診断におけ
るプロスペクティブな検討では、尿中NMP22の尿路上皮癌の有病正診率
は、85.7%を示した。尿中NMP22が陰性の場合は、尿路上皮癌の可能性は
低く、従来の診断法に比べ経過観察となる尿路上皮癌の患者数を減らすことが
できる。尿中NMP22の値は、年齢や性別の影響を受けない。
【保険請求上の注意】 尿中NMP22精密測定は、区分「D002」尿沈渣
顕微鏡検査により赤血球が認められ、尿路上皮癌の患者であることが強く疑わ
れる者に対して行なった場合に限り、区分「D009」腫瘍マーカーの「8」
に準じて算定する。なお、尿中NMP22精密測定については、悪性腫瘍の診
断が確定した後に行なった場合であっても、悪性腫瘍特異物質治療管理料は算
定できない。
【文献】 赤座 英之,他:尿路上皮癌における尿中NMP22(Nuclear
Matrix Protein 22)の臨床的検討(第1報)〜膀胱癌における尿中NMP22の
感受性試験および経過観察での有用性.癌と化学療法、24:829〜836、1998

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆SP-D(サーファクタントプロテインD)
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SP-D(サーファクタントプロテインD)(準用先区分D007-29)(区分D-
1)
平成11年6月1日より適用の血液化学検査
保険点数:150 点
基準範囲:110 ng/ml未満
直線性:1.56〜100 ng/ml
製品名:SP-Dキット「ヤマサ」EIA
製造・発売元:ヤマサ醤油(株) TEL 03-3668-8558
測定法:EIA法  100 テスト/キット(40 検体/キット)(ダブル測定)
結果が出るまでの時間:24 時間  自動化:不可
同時再現性:2.9〜15.2 % 日差再現性:6.7〜8.6 %
検体:血清
【特徴】 抗ヒトSP-Dモノクローナル抗体を96穴マイクロプレートに固相
化し、一方、認識部位の異なるペルオキシダーゼ標識抗ヒトSP-Dモノク
ローナル抗体とで反応させる固相サンドイッチの原理に基づくEIA法であ
る。
 肺特異性のマーカーで、特発性間質性肺炎や膠原病性間質性肺炎の補助的診
断に有用である。肺サーファクタントは肺胞II型上皮細胞から産生・分泌さ
れ、SP-A、SP-B、SP-C、SP-Dの4種類が存在する。このうち、
SP-Dは水溶性のため血清中での定量が可能であり、特発性間質性肺炎にお
いて著明に増加することが明らかになってきた。
 厚生省研究班による特発性間質性肺炎の診断基準は主要症状、肺機能検査所
見、胸部X線所見、生検病理検査よりなり、その他に臨床検査所見として赤沈
の促進、LDHの上昇が記載されている。しかし、赤沈およびLDHは特発性
間質性肺炎に特異的な検査ではなく、より特異性の高い検査として血清SP-
Dが開発された。血清SP-DとLDHについて比較すると、それぞれ有病正
診率は88.0/50.0%、無病正診率は95.7/93.1%、診断効率は93.2/73.3%と血
清SP-Dが良好であった。
 各種疾患における血清SP-Dの有病正診率は、特発性間質肺炎88.0%、肺
胞蛋白症71.4%、膠原病性間質性肺炎71.1%、塵肺45.5%、気管支拡張症31.6
%、サルコイドーシス27.3%、結核26.3%、細菌性肺炎22.2%、慢性肺気腫
20.0%、びまん性汎細気管支炎14.3%、健常人4.3%であった。
 その他、特発性間質性肺炎でステロイド有効例では血清SP-Dが低下し、
急性増悪例では上昇するなど病態を反映するという報告例も多い。血清SP-
Dの間質性肺疾患の診断そのものにおける特異性には肺結核、び慢性汎細気管
支炎(DPB)などの他疾患との鑑別の点ではやや不充分であるが、その臨床的
活動性の評価には治療方針の決定に当たっての従来の指標に勝る有用性があ
る。
【保険請求上の注意】 SP-Dとシアル化糖鎖抗原KL-6を併せて実施した
場合は、主たるもののみ算定する。
【文献】 本田  泰人,他:肺疾患の診断における肺サーファクタント蛋白質
D(SP-D)血清濃度測定キット「ヤマサ」の有用性.医学と薬学 36:809
〜815、1996

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆シアル化糖鎖抗原KL-6
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シアル化糖鎖抗原KL-6(準用先区分D007-29)(区分D-1)
平成11年6月1日より適用の血液化学検査
保険点数:150点
基準範囲:カットオフ値 500U/mL以上陽性
直線性:4020U/mLまで
製品名:エイテストKL-6
製造・発売元:三光純薬(株) TEL 03-3863-3271
測定法:EIA法  96テスト(84検体用)/キット (シングル測定)
結果がでるまでの時間:約3時間30分  自動化:プレートEIA自動汎用機
にて可
同時再現性:0.7〜9.2% 日差再現性:6.3〜6.9%
検体:血清
【特徴】 カップに固相化した抗KL-6マウスモノクローナル抗体(以下 抗
KL-6抗体)に検体中のシアル化糖鎖抗原KL-6(以下 KL-6)を特異的に
結合させた後、結合したKL-6に酵素標識抗KL-6抗体を結合させ、酵素_基
質反応により、検体中のKL-6量を定量するサンドイッチ型EIA法である。
 間質性肺炎は、肺の間質(肺胞隔壁)に炎症細胞浸潤を呈する疾患(特発性間
質性肺炎、過敏性肺炎、膠原病性間質性肺炎)の総称であり、持続する肺胞炎
とその結果として惹起される肺の線維化を特徴としている。予後は一般に不良
である。間質性肺炎では、血清中のシアル化糖鎖抗原KL-6(KL-6)が上昇
することが知られている。このKL-6はムチンの一種で間質性肺炎により損
害を受けて再生されたII型肺胞上皮細胞に発現し、肺の線維化に関与している
ことがわかっている。特に原因不明の間質性肺炎である特発性間質性肺炎は、
1995年1月より公費負担の厚生省特定疾患として指定されている。
 間質性肺炎群における有病正診率は特発性間質性肺炎で81%、過敏性肺炎で
70%、膠原病性間質性肺炎で48%であった。これに対し他の肺疾患群では肺胞
性肺炎4%、肺気腫6%、気管支拡張症7%に陽性であったが、肺結核では29%
が陽性であった。間質性肺炎における、KL-6、LDH、赤沈、CRPの検
査についてみると、それぞれ、有病正診率は85%/63%/85%/87%、無病正
診率は96%/74%/45%/27%、診断効率は88%/66%/73%/70%となり、
KL-6が無病正診率、診断効率で優れていた。このように本キットは間質性
肺炎に特異性の高い血清マーカーであり、他の肺疾患との鑑別診断に有用であ
る。KL-6の間質性肺疾患の診断そのものにおける特異性には肺結核、び慢
性汎細気管支炎(DPB)などの他疾患との鑑別の点ではやや不充分であるが、
その臨床的活動性の評価には治療方針の決定に当たっての従来の指標に勝る有
用性がある。
【保険請求上の注意】 SP-Dとシアル化精鎖抗原KL-6を併せて実施した
場合は、主たるもののみ算定する。
【文献】 小林 淳、他:間質性肺炎の血清マーカーKL-6抗原の基準範囲、
カットオフ値の設定に関する研究.臨床病理、44:653〜658,1996.

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆BAP(骨型アルカリフォスファターゼ)
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BAP(骨型アルカリフォスファターゼ)(準用先区分D007-35)(区分D-1)
平成11年6月1日より適用の血液化学検査
保険点数:200点
基準範囲:男性13.0〜33.9U/L 女性9.6〜35.4U/L
直線性:2〜140U/L
製品名:オステオリンクス「BAP」
製造元:Metra Biosystems In,Mountain View, CA,U.S.A
輸入・発売元:住友製薬(株) Tel 06-6229-5649
測定法:EIA 96テスト/キット( シングル測定:80検体)
結果がでるまでの時間:3時間30分  自動化:可
同時再現性:1.29〜4.82% 日差再現性:4.4〜6.1%
検体:血清
【特徴】 抗骨型アルカリフォスファターゼモノクローナル抗体結合マイクロ
プレートに、血清検体中のBAP(骨型ALP)を加え免疫複合体を形成させた後に、
洗浄操作後に捕捉されたBAPの酵素活性をEIA法で測定する。
 血清中のBAP(骨型ALP)は、ALPアイソザイムの1つで、骨の形成を担う骨
芽細胞の細胞膜酵素である。BAPは、骨代謝回転の指標、骨形成マーカーと
しての骨代謝疾患、癌の骨転移などで利用される。その他、慢性腎不全の中で
続発性(腎性)副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症における腎性骨異栄養
症などの病勢をよく反映し、その鑑別診断や骨代謝回転の指標として有用であ
る。さらに、原発性副甲状腺機能亢進症の診断や経過観察にも有用である。ま
た前立腺癌、乳癌、肺癌の骨転移の診断と病態・治療経過判定の指標としても
有用である。
【保険請求上の注意】 本検査と同区分の「35」のアルカリフォスファター
ゼ・アイソザイム精密測定と併せて実施した場合には、主たるもののみ算定す
る。
【文献】 小泉 満、他:転移性骨腫瘍臨床評価における骨形成マーカー 血清
骨型アルカリフォスファターゼの有用性の検討. ホルモンと臨床、45:1091
〜1098、1997

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆HIV-1, 2抗体価
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HIV-1, 2抗体価(準用先区分D012-14)(区分D-2)
平成11年6月1日より適用の感染症血清反応
保険点数:190点
製品名:ダイナスクリーン・HIV-1/2
製造・発売元:ダイナボット(株) TEL 03-3589-9441
測定法:イムノクロマトグラフィー法定性検査 100テスト/キット(シングル
測定)
結果が出るまでの時間:約15分  自動化:不可
検体:血清、血漿(EDTA)、全血
【特徴】 本試薬はイムノクロマトグラフィー法による抗HIV-1抗体及び抗
HIV-2抗体検出試薬であり、検体中の抗HIV抗体がシート下部に固相化されたセ
レニウムコロイド標識HIV抗原に結合してシート上を上方向に移動する。さら
にシート上部に固相化されたHIV抗原と結合してサンドイッチ型の免疫複合物
を生成することにより抗HIV抗体を検出する。
 血中のHIV抗体のスクリーニング用検査としては、EIA法やPA法が用
いられている。本キットはスクリーニング用のHIV抗体検査として開発さ
れ、簡便で迅速に結果が判定できる。ウエスタンブロット法でHIV抗体陽性
検体に対する本キットの感度は、100%(308/308検体)と良好であった。ま
た、EIA法でHIV抗体陰性と判定された1575例について本キットで検査し
たところ、1572検体が陰性で特異性が99.8%と良好であった。本キットはサン
ドイッチイムノアッセイ法を用いたイムノクロマトグラフィー法により血液検
体中の抗HIV-1抗体および抗HIV-2抗体を検出する。本キットは検体滴下
15分後にシート上に現れる赤色のラインの有無で結果を目視で判定できる。通
常、HIVに感染してから血液中にHIV抗体が出現するまで平均6〜8週間を
要する。本試薬は、イムノクロマトグラフィー法を利用しており、従来法(EIA
法又はPA法)と比較して、より簡便に、より迅速に、HIV抗体検査を行うことが
できる。本試薬の性能について、現行のPA法との相関性を検討した結果、陽性
502例及び陰性1575例の計2077例において、一致率99.85%(2074/2077)と良好
であった。また、現行のEIA法との相関性についても検討した結果、陽性69例
及び陰性516例の計585例において、一致率99.5%(582/585)であった。本試薬
の臨床的感度は100%(571/571)、臨床的特異性は99.7%(2085/2091)と良好で
あった。
【保険請求上の注意】 特になし
【文献】 柏木征三郎,他:イムノクロマトグラフィー法を利用した血中抗
HIV-1/2抗体検出用キット「ダイナスクリーン・HIV-1/2」の基礎的、臨床的検
討.新薬と臨床、48:111〜118、1999

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[新規収載]◆抗ガラクトース欠損IgG抗体精密測定
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抗ガラクトース欠損IgG抗体精密測定(準用先区分D014-6)(区分D-1)
平成11年6月1日より適用の自己抗体検査
保険点数:190点
基準範囲:6AU/mL以上陽性 直線性:3.125〜50AU/mL
製品名:エイテストCA・RF
製造・発売元:エーザイ(株) TEL 03-3817-3939
販売元:三光純薬(株) TEL 03-3851-1672
測定法:レクチンEIA法 84テスト/キット(96回測定) シングル測定
結果がでるまでの時間:3時間30分  自動化:可
同時再現性:2〜9.8% 日差再現性:0.7〜2.2%
検体:血清
【特徴】 ガラクトース欠損IgGを抗原に、血清中の抗ガラクトース欠損IgG抗
体を結合させ、各種免疫グロブリンに共通に認められる糖鎖(ガラクトース残
基)に特異的なレクチン(RCA120)を用いて、すべてのクラスの抗体を測定す
るレクチンEIA法を原理とする。
 RA(慢性関節リウマチ)患者の血清中にRF(リウマチ因子)が高頻度に出現
することが知られている。本キットはガラクトース欠損IgGに対するリウマ
チ因子類似の自己抗体を検出するものである。RA患者の血清中IgG糖鎖
は、健常者IgG糖鎖と比較し、ガラクトースを顕著に欠損し、糖鎖異常を起
こしている。RA発症初期からガラクトース欠損IgGが産生され、これに対
する自己抗体がRAにおける関節炎などの発症に関与している。
 本キットは、糖鎖工学的にガラクトース欠損IgG抗原として血清中の抗ガ
ラクトース欠損IgG抗体をEIA法で精密測定するものであるが、本キット
と同じ原理の抗ガラクトース欠損IgG抗体の定性キットが本年2月に保険収
載されている。
 RA患者において、本キットとLN(レザーネフェロメトリー)法による有病
正診率、無病正診率、診断効率はそれぞれ、84.3/67.3%、79.0/84.7%、
81.9/75.3%と本キットが有病正診率と診断効率で優れていた。
 さらに、早期RA患者で、本法とLN法における有病正診率を比較すると
90.6% (163/180例)と70.6%(127/180例)と本法が有意に優れていた(P<
0.01)。また、LN法とTIA(免疫比濁)法によりRFが偽陰性のRA患者を
本キットで測定したところ、それぞれ52.0%と59.4%が陽性となり、従来法で
陰性となったRA患者を本キットでは検出することが可能である。
【保険請求上の注意】 IgG型リウマチ因子精密測定と「17」および「19」に掲
げる検査ならびに抗ガラクトース欠損IgG抗体精密測定のうち2項目以上を併せ
て実施した場合においては、主たる点数のみを算定する。
【文献】 田窪 伸夫、他:早期RA患者における抗ガラクトース欠損IgG抗体
測定の意義.リウマチ科、17:228-234、1997

[獨協医大越谷病院 森三樹雄]
 
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[Q&A] ◆網赤血球染色で見られる網状物質と紛らわしい小体の鑑別
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(Q)ニューメチレンブルー染色で、網赤血球の網状物質と、ハウエル・ジョ
リー小体あるいはその他の紛らわしい小体との見分け方を教えて下さい。

(A)ハウエル・ジョリー小体はDNAで構成される核断片ですから、その染
まり方は白血球核と同じで、非常に薄くしか染め出されませんので、容易に区
別できます。ただし、Heinz小体はニューメチレンブルー染色で網状物質より
やや淡い青色に染まり、区別できないこともあります。疑わしい場合は、ブリ
リアント緑で染色すると、Heinz小体だけを染めることができます。

回答日:1999年8月26日
回答者:認定臨床検査医 巽 典之(No.387)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)]
 
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[Q&A] ◆唾液中コルチゾールの測定キット
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(Q)唾液中コルチゾールの測定キットの入手方法を教えて下さい。

(A)唾液中のコルチゾール(saliva cortisol)の測定は、簡便で非侵襲的な
検査として最近外国で注目を浴び始めています。当初は血清中のコルチゾール
測定キットが流用されていましたが、現在では唾液用として低濃度域を測れる
ように感度を改良したキットが発売されています。ただし日本ではまだ一般的
に普及しておらず、扱っている会社もありません。
 以下にキットの種類と製造元をまとめておきますので、詳細については直接
お問い合わせ下さい。

Coat-a-Count RIA Kit
Dignostic Products Corp., Los Angels

a coated tube assay for cortisol adapted for use with saliva
the Pantex, Santa Monica, CA

double antibody cortisol RIA modified for use with saliva
the University of Minnesota Hospital Endocrinology Laboratory,
Minnesota

Magic Cortisol RIA kit
the Corning, Walpole, MA

a coated-tube assay
Dr Kirschbaum, Universitat Trier, Dietrichstrasse 10-11 54290 Trier,
Germany

回答日:1999年8月25日
回答者:認定臨床検査医 中井利昭(No.188)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆術中迅速細胞診の指針
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(Q)術中迅速細胞診にはまだ標準操作法がないようですが、指針となる方法
があれば教えて下さい。(臨床検査技師)

(A)最近、腹水の術中細胞診の検体が増加しており、これについての質問や
疑問が増えているように思います。通常の術中細胞診はこれまでも行われてい
るので、問題になっているのは腹水または腹腔洗浄細胞診の取り扱い方でしょ
う。これらの検体が増えた理由は最新の「胃癌取り扱い規約」の中で、術中腹
水または腹腔洗浄液の細胞診の実施が定められたからです。以下、私たちの施
設でやっている方法を中心に説明します。

1.遠心法: しっかり遠心するため2000回転・3分でやっています。

2.固定法: 湿固定と乾燥固定で固定液や方法はルチン法と同じです。ただ
固定時間は当然短く30秒から1分位です。細胞を落とさないためにスプレー
した方がいいですが、それだけ時間がかかります。細胞の剥離を防止するため
にシランやMASコートスライドを使用することをお勧めします。

3.染色法: パパニコロウ染色とギムザ染色をやりますが、前者の場合、各
染色過程が30秒位で、10分以内で鏡検できます。ギムザ染色の替わりにディフ
クィックを使ってもよいでしょう。免疫染色は癌細胞の確認にはいいのです
が、迅速向きではないので使用していません。必要な症例を選んで後日実施し
ています。細胞を落とさないように、染色操作を静かにすすめることも大事で
す。

4.判定法: 癌細胞が多数、集塊で出ている場合は問題ありません。難しい
のは癌細胞が中皮と紛らわしい結合をする場合と、孤立性に出現する場合で
す。逆に中皮細胞が活動性の場合も注意が必要です。鑑別の仕方は成書や文献
を参照して下さい。癌細胞が極端に少ない場合がありますので見逃さないよう
にしましょう。

5.誤判定の原因: 少数例の見落としは論外としても、癌細胞と中皮細胞の
区別が難しい場合や、細胞の変性が強い場合に誤陽性・誤陰性が出やすいで
す。また、標本の作製技術が悪い時や、心に余裕がない場合、判断を誤ること
があります。平常心でよい標本を判定することが大事です。難しい例について
は無理に結論を出さなくてもよいでしょう。臨床との話が通っていれば、「詳
細は後日に」ということでよいと思います。自信をもって「難しい」と言える
ようになりましょう。

6.腹腔洗浄細胞診: 生理食塩水で洗浄するので、変性が強く、通常の腹水
の細胞像とは異なってきます。特に、染色性が変化して癌細胞の特徴が弱く
なったり、細胞が膨化変性したりします。対策としては採取後できるだけ早く
処理することと、遠心した後の沈渣に正常ヒト血清を一滴加えるとよいという
報告もあります。

 以上です。大事なのは、条件のよい標本で落ち着いて判定することです。上
記の「規約」も術中標本を作製せよと書いてあるだけで「迅速診断」せよとは
言ってません。迅速の必要性がどれくらいあるのかを臨床と話し合う必要があ
るでしょう。腹水迅速細胞診の方法は、施設によって異なっていますので、こ
れに対する適切な標準化が必要な時期に来ていると思います。

回答日:1999年8月25日
回答者:認定臨床検査医 水口國雄(No.143)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(病理検査)]
 
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[Q&A] ◆自動解析心電計によるQTc延長の判定
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(Q)自動解析心電計では紙送り速度をいくら調節しても、QTc延長という診断
が出やすいように思いますが、何故ですか。(臨床検査技師)

(A)デジタル心電計は、0.5msecで電位差をサンプリングし、2msecごとに電
位差の平均値を求め、これを記録している機種が多いようです。そして、この
2msecごとの記録を基に自動診断を行っています。自動診断の演算処理はすべ
て心電計のメモリ上で行われ、紙送り量は、この演算に一切関係しません。で
すから、いくら紙送り量を調節してもこの問題を解決することには繋がりませ
ん。
 したがって、この質問は、「人による診断とデジタル心電計による自動診断
とでは、QT時間延長の所見をとる頻度に差があり、デジタル心電計の方が多く
とるのではないだろうか?」と言うのが、より正確な表現になると思います。
 この原因は、T波の終点を同定する難しさにあると思われます。これは、人
の診断においても個人間または同じ個人でも診断した時間により差がでるもの
ではないでしょうか?デジタル心電計は、波形データを2次微分して各波の始
点終点を同定していますが、目視で同定が難しいものは、いくら演算処理を施
してもやはり難しいものでしょう。多くのデジタル心電計は、各波の始点終点
を表示するモードを有していますから、あなたの施設とデジタル心電計との間
でT波の終点の同定に差があるか否か比較検討してみてはいかがですか。

回答日:1999年8月23日
回答者:認定臨床検査医 須賀龍治(No.286)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)]
 
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[Q&A] ◆乳び、溶血、色調の解釈
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(Q)検査報告書にある「乳び、溶血、色調」はどのように解釈したらよいの
でしょうか。

(A)「乳び、溶血、色調(主として黄疸)」は、いずれも本来は血清の肉眼
的性状変化を示す所見です。「乳び」はカイロミクロンおよびVLDLの増加を、
溶血はヘモグロビンその他の赤血球内成分の混入による汚染を、色調はビリル
ビン、その他の色素成分による着色を意味します。いずれも、比色測定に原理
をおく血清生化学検査では測定系に対して影響を与える因子として重要であ
り、干渉物質として直接・間接に反応を妨害して異常反応の原因となることが
あり、また溶血ではLDH、GOT、Kのように赤血球内に高濃度に含まれる成分の
偽高値の原因となります。
 これらの血清所見は、従来は肉眼による観察によりその程度を報告書に半定
量的に記載して上記のような現象のwarning messageとするのが一般的でし
た。しかし、臨床検査の自動化の流れとともに、血清生化学多項目自動分析器
に、これらの所見を検査項目と同時に測定し「血清情報」として出力できる機
能が付加されてきました。筆者の施設で利用している自動分析器では黄疸(ビ
リルビン)を505/480nm、溶血(ヘモグロビン)を600/570nm、混濁(乳び)を700/
660nmで2波長比色測定し、演算により"I"(Icteric)、"H"(Hemolytic)、"L"
(Lipemic)の3つの測定値が得られるようになっています。メーカー指定のパ
ラメータを利用した場合、I=10はビリルビン20mg/dl、H=10はヘモグロビン
500mg/dl、L=10は吸光度Abs0.5に相当する所見とされています。
 検査報告書に記載されている「乳び、溶血、色調」の情報はこれらの測定値
を利用しているのですが、その数値自体を検査結果の解釈の上で有効に利用す
るのは以下のような理由で極めて困難です。
(1)自動分析器の出力する数値は標準化されていない相対値にすぎず、パラ
メータの指定によりどのような数値にもでき、また、報告にあたってどう表現
するかも施設によりさまざまである。
(2)これらの干渉要因による妨害程度は項目、測定系ごとに異なる。(測定
系の導入時に溶血、乳び、黄疸の影響を確認しており、干渉を受けにくい測定
系が選択されるのが一般的ではある。)また、干渉を起こしうる程度の妨害要
因(特に乳び)が認められた場合に、それを除去して再測定を行っているかど
うかは施設により異なる。
(3) 溶血程度(Hチャンネル数値)とLDH活性のような赤血球内成分増分とは
概ね比例関係にあるものの、例えばLDH単独高値のような場合に、溶血のみを
その原因とは判断できない例があり、悪性腫瘍の見逃しなど重大な結果につな
がる危険がある。
 検査実施施設が医療関連サービスマーク認定施設であれば、上記の(1)、
(2)に関する「標準作業書」、各検査項目に対する妨害についての「導入検
討資料」を請求すれば確認できます。しかし、多くの報告書にこれらの所見
(特に溶血)が記載されている場合、解釈に苦慮するより、防止対策を行う方
が適切と考えます。軽度の溶血は検査センターへ全血で長時間搬送を行えば不
可避です。最も容易な防止策は良質な血餅分離剤入り試験管を用い、搬送前に
遠心することです。これは全血保存による他成分の変化を防止する上でも有効
です。この点を含め検査実施施設の担当者(精度管理担当者が望ましい)とご
相談されることをおすすめします。

【参考文献】
[1] 日立製作所:7350/7450形自動分析器取扱説明書、1990
[2] 三宅一徳:採血法、検体の採取法、取扱い方.臨床検査技術学、9、医学
書院、14-44、1998

回答日:1999年8月18日
回答者:認定臨床検査医 三宅一徳(No.283)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆Rh不適合妊娠予防グロプリン投与時のクームス検査
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(Q)Rh(−)の産婦さんにグロプリンの注射を打つとき、母体血の間接クーム
スと臍帯血の直接クームス試験はなぜ必要なのですか。

(A)Rh D陰性の母親がD陽性の胎児を妊娠した場合としてお答えします。
 D陰性の母親がD陽性の胎児を妊娠すると、妊娠中あるいは出産時に子から母
親へ移行するD陽性の赤血球によって母親に抗D抗体が産生されるために、第2
子以降は新生児溶血性疾患を来すことが知られています。これを予防するため
に、出産後に抗D抗体を母親に投与し、母親に移行した胎児赤血球を破壊して
抗原性を失わせ、抗D抗体発生を予防する方法が行われています。この抗D抗体
がご質問にあるグロブリン注射(抗D人免疫グロブリン)です。
 抗D人免疫グロブリンの用法には、Rh式血液型のD(Rho)陽性(直接クーム
ス試験陰性)の胎児を分娩したD(Rho)陰性(間接クームス試験陰性)の産婦
に分娩後遅くとも72時間以内に投与すると記載されています。従って、母体血
の間接クームス試験、臍帯血の直接クームス試験を実施して、双方とも陰性で
あることを確認してから投与しなければなりません。
 クームス試験陽性、すなわち抗D抗体をすでに産生してしまっている母体に
抗D抗体を投与しても無意味なことは以上のことからおわかりいただけると思
います。ただし、抗D人免疫グロブリン投与後、母親の血液中に一過性に免疫
抗体が検出されることがありますので、母親が抗D抗体を産生したかどうかを
確認するため、投与後に間接クームス試験を行う場合、判定には注意が必要で
す。

【参考文献】
[1] 遠山 博 編・著:輸血学 改訂第2版、中外医学社、東京、1989
[2] 中村幸夫 訳:症例で学ぶ輸血、近代出版、東京、1994
[3] 日本医薬品集、薬業時報社、東京、1998

回答日:1999年8月17日
回答者:認定臨床検査医 土屋達行(No.244)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A
                (免疫学的検査/血清検査/輸血検査)]
 
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[Q&A] ◆ATL以外のCD3弱陽性細胞出現疾患
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(Q)リンパ球サブセット解析でCD3弱陽性細胞がみられましたが、ATL抗体は
陰性でした。他にどのような疾患が考えられるでしょうか。

(A)今のところ文献的には、以下の3つ以外にあまりまとまった報告はあり
ません。

1)Tリンパ球系の造血器腫瘍
(Ginaldi L. et al.: Diffrential expression of CD3 and CD7 in T-cell
malignancies: a quantitative study by flow cytometry. Br. J.
Haematol., 93(4):921-7, 1996.)
 この文献によりますと、細胞あたりのCD3抗原量は、正常のTリンパ球(CD3
抗原量:124±25×10^3)と比較して、61例のTリンパ球系の白血病のうち、
Sezary症候群を除く全てのTリンパ球系白血病で減少していた。T-ALL 30±
21×10^3、ATLL 38±31×10^3、T-PLL 92±47×10^3、GLL(granular
lymphocyteleukemia) 95±21×10^3。

2)HIV感染者
(Ginaldi L. et al.: Altered lymphocyte antigen expression in HIV
infection: a study by quantitative flow cytometry.  Am. J. Clin.
Pathol., 108(5):585-92, 1997.)
 30例のHIV陽性者のリンパ球サブセットの検索において、CD3・CD4・CD8抗
原量が減少しており、一方CD2は増加している。

3)正常の末梢血リンパ球サブセットにおけるTリンパ球抗原量の変化
 (Ginaldi L. et.al.: Differential expression of T cell antigens in
normalperipheral blood lymphocytes: a quantitative analysis by flow
cytometry. J. Clin. Pathol., 49(7):539-44, 1996.)
 疾患ではありませんが、正常人のリンパ球において、CD3抗原量はCD8 陽性
リンパ球よりもCD4 陽性Tリンパ球上の方が多い。また、CD4リンパ球の中で
は、CD4+CD7−サブセットの方がCD4+CD7+,CD8+CD7+リンパ球よりもCD3抗
原量は少ない。

 以上の文献は、いずれも同じ報告者による発表で、抗原量の増減をまとめた
文献はそれ程多くありません。従来、細胞表面マーカーは、陽性細胞の<比率
>の増減についてのみ検索されることがほとんどでしたが、これからは今回の
質問にあるような<抗原量>の増減について調べる必要があると思いますし、
それによってより詳しい解析が可能になると思われます。ただ、注意すべき
は、フローサイトメトリー上での蛍光強度の増減は、実際の抗原量の増減に加
えて、細胞サイズの増減も加味して考えなければならないことです。

回答日:1999年8月16日
回答者:認定臨床検査医 中原一彦(No.308)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)]
 
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[Q&A] ◆2,5-ヘキサンジオン高値受診者への対処
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(Q)有機溶剤健康診断の結果2,5-ヘキサンジオンが高値の作業者が見つかり
ました。どのように対処したらよいでしょうか。

(A)お答えとしては、ACGIH(American Conference of Govermental
Industrial Hygienists)の生物学的暴露指標(BEIs)の利用上の決定事項に
関する勧告が世界的に見て一番妥当なものと思われますので、日本語に訳した
下記文書を参考にして下さい。ここでは、ACGIHが勧告している1998年度の生
物学的暴露指標について、利用上の注意事項などを添えて紹介しています(原
文は、American Conference of Govermental Industrial Hygienists: 1997
TLVs and BEIs (Threshold Limit Values and Biological Exposure
Indices),  ACGIH, 1330, Kemper Meadow Drive, Cincinnati, OH 45240-
1634.)。

1.前文および注意事項

 生物学的モニタリングは作業者の化学物質曝露を評価する一手段として労働
衛生を実践する中で有効に利用されている。一方、作業環境モニタリングは、
作業場環境中化学物質濃度の測定を通じて化学物質の吸入曝露を評価するため
に行い、TLVはその評価基準値として利用されている。
 生物学的モニタリングは特定された時間に、作業者の生体試料中に存在する
適切な測定対象物を定量することによって作業場に存在する化学物質曝露の全
てを評価するために行う。生物学的曝露指標値(BEIs)はその際の評価基準値
として利用する。
 測定対象物質は化学物質そのもの、あるいはその代謝物、あるいは化学物質
から生じた可逆性の物質を利用する。測定は曝露作業者の呼気、尿、血液、そ
の他の生体試料を集めて行うが、生体試料の選択、試料採取時間がポイント
で、測定が最近の曝露の程度を評価するのか、毎日の曝露の平均をみるのか、
慢性的な蓄積曝露をみるのかの判断も必要になる。
 BEIsは労働衛生を実践する中で、潜在的な健康阻害物質を評価するための指
標となる値であって、測定対象物質曝露に対応したレベルを表し、TLV-TWA濃
度を吸入曝露した健康な作業者から得た結果を基に考えている。
 BEIsは有害曝露か否かを厳密に弁別するものではない。生物的な変動は健康
阻害の増加なしにBEIを越す値を示すこともある。しかし、作業者から得た生
体試料の測定値がBEIを持続的に超えるような状況、あるいは生体試料中測定
対象物濃度の大部分がBEIを超えるような作業場があれば、この原因が追究さ
れなければならないし、曝露を減らす行動がなされなければならない。
 BEIsは1日8時間、週5日間曝露に適用する。しかし、薬物動態と薬物動力学
をもとに作業変更時のBEIを推定することができる。BEIsは非職業性曝露評
価、水質汚染の安全性の評価に直接あるいは変換要因を考慮した場合でも適用
してはならない。BEIsは職業疾病の臨床診断、有害影響の評価に利用してはな
らない。
 各BEI勧告値は曝露の強さと作業者の生物学的影響との関連、化学物質の吸
収、排泄、代謝に関する研究成果をもとに定めている他、曝露の強さと測定対
象物の生物学的レベル、あるいは生物学的レベルと生体影響との関連に依拠し
ている。
 これらの関係は人での実験やフィールド研究で確認されている。一般的に
いって、動物実験からはBEIsを確立するのに適切なデータは得にくい。しかし
BEIsが通常TLV曝露時間に関係し、また、TLVが動物実験による量−反応関係に
依拠していることはBEIが間接的に動物実験に依拠することにもなる。

実施

 生物学的モニタリングは環境モニタリングと相互補完的なものと考えるべき
だが、環境モニタリングだけで判断するよりも、より適切な情報が得られる場
合に実施すべきである。また、生物学的モニタリングは環境モニタリングの確
認、保護具の効率的な検査、経皮吸収および経口摂取の大きさ、非職業性曝露
の確認のために使用すべきである。
 BEIsが示されているからといって、生物学的モニタリングを実施する必然性
はない。労働衛生の実務者はモニタリング方法についての専門的な知識を得る
必要がある。このドキュメントは有用な基礎情報を提示している。

データの解釈

 生物学的モニタリングの測定結果を理解する際、個々人および同一曝露状況
であっても生体試料中測定対象物質レベルは個々に相違する。この相違は呼吸
量、血液動態、身体構成、排泄器官の機能、化学物質代謝に関与する酵素活性
によって生じる。多数の試料が、変動する個々の影響要因を減少させるのに必
要といえる。
 生物学的モニタリングは環境モニタリングの結果を裏付けることになるが、
得られた結果間に相違がある時には全体の曝露状況を注意深く検討する必要が
生じる。曝露の強さは、作業者の生理機能レベルと健康状態(例えば基礎体
力、食事(水分、脂肪摂取)、酵素活性、体液組成、年齢、性、妊娠、薬物治
療、疾病)、職業性曝露(身体負荷量、曝露強度の変動、皮膚曝露、温度、湿
度、吸排気の状況と作業者の位置関係、他の化学物質との共合曝露)、環境曝
露(社会ならびに家庭での汚染、水および食品汚染)、個人の生活スタイル
(仕事後の活動、個人的衛生事情、仕事と食生活、喫煙、アルコール・薬物摂
取、家事による曝露、趣味あるいは他の作業場での化学物質曝露)、方法論理
的問題(試料の汚染、試料採取中の低下、貯蔵と分析、選択した分析法の問
題)によって変動する。これら様々な要因についてはそれぞれの状況に応じて
評価しておく必要がある。
 薬物、汚染物質あるいは他の化学物質曝露は職業性の曝露の強さと生体試料
中測定対象物質レベルとの関係に影響を及ぼし、加えて、対象物質濃度のみな
らず代謝の変更あるいは対象物質の排出にも関連する。これら要因の影響に関
しては解説書を参照すればよい。
 生体試料は曝露に応じて採取すべきで、十分な注意を必要とする。つまり、
化学物質の分布、排泄あるいは代謝物、さらに化学物質曝露によって生じる生
化学的変化、それらは助力学的事象である。従って、リストに挙げたBEIsは、
特定の時期に試料採取が行われた場合にのみ適用できる。
 実験室での精度管理は、分析エラーの減少と測定結果のバイアスを考える上
で重要となる。

BEls表に関するコメント

 表には化学物質、測定対象物質類、試料採取法、試料採取時期とBEIsが表示
されている。その他、必要事項が注に示されている。

測定対象物質
 表にはすべての対象物質のBEIを示しているがそれらは十分な基礎資料をも
とにBEI委員会が決めたもので、実践にあたっては専門的な判断が必要で、測
定対象物はモニタリングの目的に適った指標を利用すべきである。

生物学的試料
 尿、呼気、血液試料が推奨される。それぞれの試料には試料中測定対象物質
レベルに影響を及ぼす変動要因が含まれる。他の生体試料の毛、爪について現
時点では勧告しない。

尿分析
 尿分析では尿量の変動が最も重要である。尿への排出割合の測定は通常は最
も正確な情報を提供するが、正確な一定時間中の定量的な採尿はほとんど不可
能である。すなわち、単なる濃度測定は曝露の情報を提供するが、尿量の変動
によって定量性は弱められる。排泄が尿量に依存する物質のBEIsはクレアチニ
ン排泄量で補正する必要がある。ただし、拡散によって排泄されるいくつかの
物質のBEIsについてはこの補正は適当ではなく、濃度で表される。高度に希釈
または濃縮された尿試料は通常モニタリング用試料には適さず、新たに試料を
採取すべきである。原資料が非常に濃い(比重>1.030、クレアチニン>3g/
L)か薄い(比重<1.010、クレアチニン<O.5g/L)場合は目的とする物質の排
泄メカニズムが変化している可能性があり、測定の信頼性は低い。

呼気分析
 時間による濃度の急速な変化が決定的である。さらに、呼出している問にも
濃度は変化する。したがって終末呼気(肺胞気)の採取か、混合呼気がは明確
にされなければならない。一般的に、曝露中の終末呼気中の濃度は混合呼気中
より低く、曝露後の混合呼気中濃度は終末呼気中の約2/3になる。又呼気試料
は肺機能に変化のある作業者では適切な試料ではない。

血液分析
 血漿/赤血球比と血液構成成分中の測定対象物質の分布が測定結果に影響す
ることがある。従って、全血、血漿、血清あるいは赤血球かは明確にされなけ
ればならない。蛋白結合測定対象物質は分析法を選択する際に十分考慮する。
揮発性物質の測定するために採血した場合は、肺での摂取や排出による動脈血
と静脈血の濃度差を考慮しなければならない。とくに表示がなければ、揮発性
物質のBEIsは静脈血に関するものであり、毛細血管血には適用されるべきでは
ない。

試料採取時期(Timing)
 測定対象物質のレベルが急激に変化する場合や蓄積のある場合、サンプリン
グ時間は非常に重要となる。試料採取時期は化学物質とその代謝物の採取と排
泄割合、生化学的変化の持続牲などを基礎にして得た条件が表中に示されてい
る。

(1) 試料摂取時期が“作業前"(「曝露なしで16時間後」を示す)や“作業中ま
たは作業終了時"(「曝露時間の最後の2時間」を示す)の場合は、半減期が5時
間未満の物質である。これらの物質は体内蓄積はなく、タイミングに関しては
曝露と曝露後の関係にだけ重点を置く。
(2) 試料採取時期が“週の始め"(「曝露なしで2日後」を示す)あるいは“週の
終わり"(「4-5日間の曝露後」を示す)の場合は、5時間以上の半減期をもって
排泄される物質である。これらの物質は体内蓄積がある。したがって、試料採
取時期は以前の曝露が関係する。排出が多様である物質では、作業週での曝露
と同様に、作業日の曝露に関して考慮される。
(3) 試料摂取時期が"常時"あるいは“任意''の場合は、排出の半減期が非常に
長く、体内蓄積が年を越えて生じ、ある物質では一生涯続く。2週間の曝露
後、いつでも試料摂取ができる。

 生物学的モニタリングのデザインとBEIの解釈の前に“Documentation of
Threshold Limit Values and Biological Exposure Indices, 6th
edition,1991"に必ずあたることが必要である。予期しなかったような値がで
た場合には1回の測定ではなく・複数回のサンプリングによる測定に基づいて対
処しなければならない。

2.生物学的曝露指標表(BEIs)

 表中に示した記号は、上記したものの他は以下のとおりである。
 Sc:同一の集団でも、化学物質の作用に対する感受性が増加していることが
考えられることを示す。したがって、そのような状況を放置するならば、勧告
されたBEIによって、それを防ぐことはできない。
 B:測定対象物質が、日常的に職業性曝露を受けない人の試料にもかなりの
量で存在することを示す。したがって、バックグランドレベルがBEI値に含ま
れている。
 Nq:生物学的モニタリングの実施が考慮されるべきであるが、不十分なデー
タのために・特異的なBEIが決定されていない。
 Ns:非特異的な測定対象物質であることを示す。そのため、他の化学物質曝
露後にも検出される。このような非特異的検査は使用方法が簡便で特異的検査
法より曝露との相関が高く、有効利用できる。このような場合は、特異的だが
定量姓の劣る測定対象物質のBEIでは確認テストとして利用できる。
 Sq:測定対象物質が化学物質曝露の指標となるが、測定結果の解釈が不明確
(半定量的)であることを示す。定量的検査が実用的でなければスクリーニン
グテストとして、または定量的検査が特異的でなく、測定対象物質の元の物質
に疑問がある場合には、確認のための検査として利用すべきである。このよう
な場合は、確認のための検査、あるいはスクリーニングテストのBEIsは記載さ
れていないが、これまでに正常値の情報が提示されているものもある。例え
ば、呼気中の吸入された化学物質の測定である。コリンエステラーゼやメトヘ
モグロビンのように、いくつかのスクリーニングテストのためのBEIsは、非曝
露集団で観察されたレベルの上限(又は下限)とされている。

 以上の事柄を踏まえた上で、猶 BEIが高値なら、次は環境モニタリングの結
果との相関を調べ相関があるようであれば職場環境の改善勧告を事業主に出す
べきでしょう。

<参考>
 ACGIHのTLV-TWA値、BEIs値は下記の通りです。

 化学物質名及び指標  試料採取時期    BEIs    TLV-TWA
n-hexane                         50ppm
 尿中 2,5ヘキサンジオン 作業終了時  5mg/g Cr (Ns)
 終末呼気中 n-hexane           (Sq)

 ちなみに日本では交替勤務中に採取した終末呼気中 n-hexane のBEI 値は
40ppm、交替勤務終了時に採取した尿中 2,5ヘキサンジオンのBEI値は 5mg/lと
なっています。TLV-TWA 値はACGIHと同じ 50ppm です。

回答日:1999年8月8日
回答者:認定臨床検査医 堀川龍是(No.311)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生化学検査)]
 
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[Q&A] ◆臨床検査の仕事と臨床検査技師の資格
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(Q)将来臨床検査の仕事をしたいのですが、今の学科では臨床検査技師試験
は受けられません。やはり資格は必要でしょうか。(大学生)

(A)現在の法律では、採血や生理検査などを行うには臨床検査技師の資格が
不可欠ですが、いわゆる検体検査(血液や尿を取り扱う化学検査など)は臨床
検査技師の資格がなくても、医師の指導があればできることになっています。
しかし、現実には病院検査室は臨床検査技師の資格がない人は採用しません。
ただし一部の検査センターで、こうした資格の無い人を採用し、検体検査の仕
事をさせている場合があります。この場合、学歴は関係ないようですが、こう
したことは望ましいことではありませんし、今後次第に減ると思います。
 また特定の専門領域で高度の技術を持っている場合には、検査センターの研
究・開発部門などで、受け入れられる可能性はありますが、それには、それな
りの実績が必要です。
 従って、今後は資格が無くて検査業務に就くことは、難しいと考えたほうが
いいでしょう。

回答日:1999年8月8日
回答者:認定臨床検査医 保崎清人(No.214)

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[Q&A] ◆臨床検査技師になるための専門的学習
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(Q)将来臨床検査技師になりたいのですが、専門的なことで身につけておく
べき事は何かありますか。(高校生)

(A)今から特に専門的なことで身につけておくことはありませんが、受験科
目と関係なくても、専門の基礎となる生物、化学、物理の単位をとり、よく勉
強しておくといいでしょう。
 その他、語学(英語)、情報科学(コンピュータ)、分子生物学(遺伝子な
ど)などに関心を持っておくといいと思います。

回答日:1999年8月8日
回答者:認定臨床検査医 保崎清人(No.214)

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[Q&A] ◆臨床検査技師の公務員試験受験
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(Q)臨床検査技師として公務員試験を受け、県や都の病院に勤めたいのです
が、勉強の方法を教えて下さい。(学生)

(A)東京都の例で説明します。臨床検査技師および衛生検査技師資格を持つ
人のための東京都の公務員試験には、I類(4年制大学卒、衛生検査)とII類
(短大卒、臨床検査)があります。試験は教養試験と専門試験があります。教
養試験は受験者が、公務員にふさわしい教養と社会的常識を備えているかを試
験するもので、日ごろから培われた教養と常識が物をいうと思います。広い視
野を持ち、社会の仕組み理解している人が強いと思います。
 ご質問の試験勉強の方法とは、この試験の勉強方法を聞かれていると思いま
すが、あえていえば、試験範囲、問題例(試験案内に掲載)をみて、新聞を良
く読み、政治、経済、法律、医療などに関する基本的な事項を理解しておくこ
とでしょう。なおこの教養試験は5枝択一式で50問中40問解答で、問題集も市
販され受験者向けの予備校もあります。
 専門試験は国家試験の勉強と同じでいいと思いますが、5枝択一式試験と別
に論述試験もあるので、論理的かつきちんとした文章を書く練習をしてくださ
い。以上は東京都の例ですが、試験の内容は各都道府県により若干異なります
ので、それぞれの人事委員会事務局に問い合わせて下さい。

回答日:1999年8月8日
回答者:認定臨床検査医 保崎清人(No.214)
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[Q&A] ◆保育器用加湿器の感染対策
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(Q)未熟児用の保育器の加湿器の水から、非病原性の非発酵菌が検出されま
した。実務的な対処法を教えて下さい。(東京都 臨床検査医)

(A)結論から申し上げますと、加湿器内の蒸留水の交換と定期的な消毒、回
路の消毒を行えば、病院感染上問題になることはありません。
 ご承知と思いますが、緑膿菌を含む非発酵菌は水生菌で、加湿器にも生息し
やすい菌種です。ご質問の例では、加湿器を消毒し、蒸留水を交換すればよい
と思います。それでも心配ならば消毒後細菌検査を行って下さい。
 一般論としては、加湿器を病室に設置するのは推奨されません。環境から雑
菌が入り込むと増殖し、細菌をまき散らす恐れがあるので、注意が必要です。


回答日:1999年8月4日
回答者:認定臨床検査医 岡田 淳(No.145)

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[Q&A] ◆Pseudomonas aeruginosaのメタロβラクタマーゼ検出法
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(Q)Pseudomonas aeruginosaのメタロβラクタマーゼの検出方法を教えて下
さい。(長野県 臨床検査技師)

(A)残念ながら、一般の検査室で酵素学的にメタロβラクタマーゼのみを選
択的に検出する方法はありません。
 研究室レベルでは、細菌細胞の破砕により得られる粗酵素液と、基質として
イミペネムを用いて分光光度計により酵素学的に検出します。また、酵素をタ
ンパク質として調べる場合には、等電点電気泳動で分析します。いずれも、キ
レート剤(EDTAなど)で処理したものとしないものについて、βラクタ
マーゼ活性を比較します。
 耐性遺伝子の塩基配列を利用してPCR法やDNAプローブ法で耐性遺伝子
を検出する方法もありますが、P. aeruginosaについては明確な産生酵素も耐
性遺伝子も判明していないと思われます。一部の学者がPCR法でblaIMP遺伝
子の検出を行っておりますので、いずれ簡便な方法が考案されるものと考えら
れます。

回答日:1999年8月4日
回答者:認定臨床検査医 岡田 淳(No.145)

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[Q&A] ◆外注検査の判断料算定
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(Q)外注委託した検査について判断料の算定は可能でしょうか。(東京都
団体職員)

(A)第2款検体検査判断料D026検体検査判断料の部分の注釈として、
「(1)検体検査の点数については、実施した検査の検体検査実施料とその検
査が属する区分(尿・糞便等検査判断料から微生物学的検査判断料までの6区
分)の検体検査判断料とを合算した点数を算定する(平成6.3.16保険
発25)」とあります。
 このため、実施料の算定がなければ判断料の算定もできないものと解釈しま
す。

回答日:1999年7月27日
回答者:認定臨床検査医 森 三樹雄(No.45)

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[Q&A] ◆MRSA保菌患者のリハビリテーション
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(Q)肉眼的所見がM・J分類でM1の喀痰からMRSAが10^3〜10^4CFU/mlとほ
ぼ一定して検出され、口腔内常在菌も肺炎の所見も見られない方がリハビリ
テーションを受けることになりました。管理上特別な配慮が必要でしょうか。
(北海道 臨床検査技師)

(A)ご指摘の患者さんの検査結果からは次のことが考えられます。
(1) 喀痰の肉眼的所見がM・J分類のM1(全く膿性部分のない粘性痰)であ
ることから、この喀痰は細菌検査に供するには品質的に不適切と判断されま
す。この所見はグラム染色結果(炎症細胞を認めない)とも一致します。しか
しながら、それが繰り返されているようですので、この患者さんはもともと膿
性痰を排出する状態にはないと推測されます。臨床的にも肺炎像を認めないと
いうことですから、MRSAの感染局所での増殖や排菌によって周囲への有意な汚
染源となることは、考え難いと判断してよいでしょう。
(2) 菌量は10^3〜10^4CFU/mlということですので、日常報告される定性的な菌
量にしておよそ少数〜1+のレベルです。また、口腔内常在菌が同時に検出され
ないということは、現在もしくは近い過去に抗生剤の投与を受けていた可能性
が考えられます。すなわち、抗菌剤投与による菌交代現象を伴ってMRSAが持続
検出されている(保菌)状態です。この状態は病院環境から離れてからも(退
院後)1〜2ヶ月間は続く可能性がありますので、自然消失(検出感度以下、<
10^2 CFU/mlするのを待ってリハビリを開始することは実際には非現実的と考
えられます。患者さんのQOLの観点からもタイミングを逸することなくリハビ
リを実施すべきと考えます。ただし、このようなMRSA保菌者の場合に注意すべ
きことは、MRSAが口腔内の他にも、鼻腔や腋窩など常在菌の多い部位で通常の
常在菌と置き換わっている可能性がある点です。そこからMRSAが拡散して、四
肢の皮膚にも少数ながら分布しているとみなすべきでしょう。
 これらのことを踏まえた上で、他の患者さんへの伝播を避ける工夫や対応が
必要です。たとえば、リハビリ前の手洗いや使用後の器具のアルコール消毒の
実施、日常的に咳が出る場合にはマスクを装着して頂くなど、患者さんの状態
に応じて臨機応変に対応されるとよいと思います。
回答日:1999年7月23日
回答者:認定臨床検査医 松野容子(No.327)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(微生物検査)]
 
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[Q&A] ◆ALPの異常低値
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(Q)アルカリフォスファターゼ(ALP)だけが異常低値を示す場合、何を考え
ればよいでしょうか。(愛知県 臨床検査技師)

(A)ALPが単独で低値を示す場合は先天性のhypophosphatasiaが考えられま
す。重症のものは小児期より骨あるいは歯に異常をきたしますが、軽症例では
無症状で成人になります。まだ症例数が少なく、詳しいことは分かっていない
ので、特に処置せず経過観察をするだけでよいと思います。
 また現時点で関連の症状がないのであれば、患者さんには無用の不安を与え
ることがないように説明する必要があります。

【参考文献】
[1] Sato S. Matsuo N. Genetic analysis of hypophosphatasia. Acta
Paediatrica Japonica. 39:528-532, 1997.

回答日:1999年7月6日
回答者:認定臨床検査医 西堀眞弘(No.269)

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[Q&A] ◆INR表示導入の実際
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(Q)INR表示の導入を検討中ですが、未だに試薬間差が解消されていませ
ん。どう対処したらよいでしょうか。(臨床検査技師)

(A)経口抗凝固療法の国際的管理指標にすべく、PT−INRはWHOが主
導し普及に努めています。しかし、INRについてはこの世界の趨勢に対し日
本では遥かに遅れた状況にあります。例えばトロンボテスト・オーレンが欧州
の一部でしか利用されていないにも拘わらず、日本ではPTよりも普遍的であ
り、それをPTに変更する施設が未だに多くないことからも、日本の臨床家の
頑固さが窺い知れます。
 INR表示標準血漿が添付する検量線やISIはあくまで参考値です。測定
しようとする機器・試薬によって固有ISI値は微妙に変わります。INRは
ベキ乗ですので、固有ISIの僅かの差が比較的大きな差をもたらします。こ
のことから施設間差が生まれます。
 以前我が国ではISIが2.5位の試薬が盛んに用いられてきました。これは
ISI値が高いほど再現性の良い安定した値がでるためですが、一方で施設間
差が収拾できないほど大きくなっていました。そこでISBT-WHOは数年前から
ISIが2.0以下の試薬への転換を進めてきました。そして一昨年からISI
が1.7以下の試薬にするように勧告基準を改め、究極的には1.0近くに持って行
くようにしています。残念ながら現在の日本では、ISIが1.0〜2.4と幅広い
多種の試薬が市場に出回っています。このことから理想と現実のギャップは非
常に大きくなっています。
 このような背景にあって、回答者は断念することなくINRの普及を図りた
いと考え、検査センターの方々にお願いした結果、数社がPT値と同時に
INR値を報告されるようになったものの、まだ最終目標には到達していませ
ん。試薬種のISIの多様性のため、現段階ではINR値は施設間差の解消に
余り役立っていませんが、同一施設内で継続的に同一試薬で患者の経過観察を
するのには大いに役立つ筈です。
 もしINRの院内実施をされたなら、測定秒数の値が大きく変わるため一時
的に混乱を来すかも知れませんが、ISIが1.0近辺の試薬に思い切って変更
されることをお奨めします。ただ基準値の早急な変更は、臨床側の協力がなけ
れば不可能でしょう。

回答日:1999年6月23日
回答者:認定臨床検査医 巽 典之(No.387)

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(血液検査)]
 
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[Q&A] ◆ホルター心電図計の異なるメーカー間での精度管理
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(Q)ホルター心電図の記録時間の計測値と実測値を使って、異なるメーカー
の機器間の精度管理を行うことはできますか。(北海道 臨床検査技師)

(A)ホルターの記録および解析は、同じメーカーの機器を使用するのが原則
となっています。回答者の施設において、フクダ電子社製(SM-28は1.00mm/
secのテープスピード)、フクダME社製、日本光電社製のレコーダで記録した
テープを解析した経験がありますが、フクダ電子社製レコーダでは最高40分
程度のずれがありました。この時間のずれは、記録時の温度、キャプスタンや
ピンローラの摩耗と汚れ具合、モータのゴムベルトの伸び具合、そして電池の
状態とメーカー間差により大きく変動すると考えられます。アナログレコーダ
を用いる以上これらの影響は避けられず、たとえ同じレコーダでも  その時の
条件で全く異なった結果になるのはやむを得ない思われます。
 こうした理由からパルスによるタイムコードが記録されますが、記録機器の
タイムコードを正確に読みとることのできない解析装置について、日差変動を
管理することには無理があると思われます。
 現実的には、マルケット社製の解析装置がフクダ電子社製のレコーダに対応
する可能性は低いと思われます。ただし、日本でのマルケット販売担当である
日本光電社製のレコーダには対応しているようです。したがって正確なデータ
を重視するならば、異なるメーカーの機器の混用は避けるべきだと思われま
す。
 精度管理を行うならば、一定のVoltageで正確な時間間隔の合成QRS波形を生
成するデジタルのテストパターン等(安価のものもあります)を使用してレ
コーダに記録させ、実際の記録時間と解析装置の出力する記録時間を比較した
り、レコーダヘッド・キャプスタン・ピンチローラの汚れや、レコーダヘッド
の帯磁による出力波形の電位の低下などをチェックするのが一般的と思われま
す。

回答日:1999年6月21日
回答者:自治医科大学臨床病理学 谷口信行

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査 )]
 
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[Q&A] ◆左心系のエアー様エコー所見
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(Q)冠動脈疾患で心不全に陥った患者の心エコーで、左房から左室、左室か
ら大動脈へと流れるエアー様の所見を認めました。何が考えられますか。

(A)エアー様とはどのようなエコーをいうのか、はっきりしませんので、ま
ずこのエコーの性状を知る必要があります。輝度の大きさはどの程度か?数
は?流れに逆流またはうっ滞はなかったか?などです。
 高輝度のエコーが流れに乗って移動していたとすると、エコー源になる可能
性があるものとして、ガスと血栓または、流速が遅い部分で認められるエコー
(連銭形成等)が考えられます。後者は、流速が遅い部分でしか観察できませ
んが、凝固系の変化を伴う場合にはより観察されやすい印象があります。例と
しては、左房内のもやもやエコーもこれに当たると考えられ、健常者の肝静脈
でも時々観察されます。
 ガスについては、従来右心系にはガスを混入した造影剤が多く用いられてい
ましたが、健常者で観察されることはなく、消化管の壊死に伴う門脈内のガス
が知られています。その初期には門脈内に高輝度のエコーが認められたとの報
告があったように思います。
 最後に血栓についてですが、左心系の血栓は、心房細動などで左房内にでき
ることはよく知られていますが、通常観察できない程度の小さいものも、頭部
のパルスドプラ法で検出されることがあります。これはHITS(high intensity
transient signals)と呼ばれる小さい血栓で、心臓術後、心房細動などの心
疾患で高頻度に観察されます。
 以上述べたうちのいずれかが考えられると思いますが、一般的にはガスが存
在する可能性は低く、低流速の状態で起こったとすると、小さい血栓が出現し
たものを観察した可能性が考えられます。

回答日:1999年6月21日
回答者:自治医科大学臨床病理学 谷口信行

[ホームページ/臨床検査ネットQ&A(生理検査)]
 
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[論壇]  ◆春季大会演者インタビュー
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 先日開催された春季大会のパネルディスカッション「臨床検査医学の21世
紀に目指すべきもの」では、これまでになく大胆な発言や本音の議論が飛び交
い、予想外の反響を呼びつつあります。そこで出席されなかった方のために、
演者のひとりである東京医科歯科大学の西堀眞弘先生に改めてお話しを伺いま
した。

―かなり思い切ったご講演でしたが、反応はいかがですか。
 きついお叱りを覚悟していたのですが、蓋を開けてみると寄せられるのは「
よくぞ言ってくれた」「時宜を得た指摘と思う」といった同調的なご意見ばか
りです。もっとも、批判的な方は敢えて異論を唱えず、私を避けておられるの
かも知れませんが。

―そのような覚悟をしてまで話をされたきっかけは何ですか。
 以前から私の危機感と会の向いている方向にずれを感じていました。今年か
ら国立大学の教授選がピークに向かうこと、そして最終的には渡辺清明大会長
から「本音を言うように」と強くご指示をいただいたことが決め手になりまし
た。

―やはり教授になることは重要ですか。
 これからの教授は役得がどんどん小さくなるうえ、後ろ向きの雑用に追われ
る立場になるので、以前ほど魅力的な職業とは言えません。また本来検査医が
活躍すべき場は第一線の病院です。しかし大学が専門医を教育する最高学府で
ある以上、少なくとも教授が検査医でなければ後進の育成はおぼつかず、タマ
がなくなればいずれ消滅するのは明らかです。私が最も問題にしたいのは、専
門医あるいは本会会員の国立大教授が退官された後、専門医が殆どその後を継
げないという現状を座視している本会の姿勢です。その一方で若い人に検査医
になるよう勧誘するのは矛盾しています。

―そうは言っても具体的な対策は難しいのではないですか。
 私がもう一つ問題にしたいのは、うまくいきそうな対策がなければ何もしな
いという姿勢です。そんな贅沢が言える時期はとうに過ぎています。医療経済
が縮小均衡に向かうなかで、どの診療科も手段を選ばず必死に生き残りを図っ
ています。限られた教授の席の奪い合いに参加するためには、手近にある武器
を手に取って戦い、万にひとつの勝算に賭けるしかありません。

―論文をたくさん書けということですか。
 個人的には良い方法とは思いませんが、それならそれで論文による今の選考
方法がいかにくだらないかを示すためにも、impact factorが最も高くなるよ
うに徹底して会員同士で論文を互いに引用しあう、といった八百長を組織的に
やるべきです。講座の設立趣旨への適合性や研究の質を問わず、点数だけで比
較されたら、基礎研究でオタク的な論文を量産している人とまともに戦っても
、かなう訳がありません。

―論文に代わるような選考基準を作れということですか。
 少なくとも専門医から選ぶように仕向けるべきでしょう。講演で列挙した「
核とすべき研究テーマ」はこのために重要となるのです。たとえ立派な「教授
選考のガイドライン」を作っても、「教授が臨床検査医でない場合のデメリッ
ト」を'academic harassment'などの具体的なデータで示さなければ、何の説
得力もありません。同様に、検査部長や指導監督医についても早急に同様のデ
ータを揃える必要があります。

―研究テーマは他にも挙げてありましたね。
 我々の医療上の専門性は、突き詰めれば検査精度とコストのバランスをとる
ことにあります。したがって、その社会的認知を得るためには、検査の危機を
招いている元凶の医療費削減キャンペーンの欺瞞を暴き、経費削減による検査
精度の低下が招いている被害の拡大に警鐘を鳴らし、本当の検査精度を保つの
に有効な検査所の査察方法を明らかにすることが不可欠です。

―21世紀にも検査医が生き残る秘策はありますか。
 病院検査部門や検査センターの運営および精度管理実務は、力をつけた検査
技師の方々が担当するようになり、かつ検査医の発生母体であるいわゆる「中
央」検査部は、その歴史的役割を終えます。したがって検査医固有の役割は、
限られた資源の中で「患者が死なない程度」に検査精度を保証する監査に絞ら
れます。今後DRG/PPSが導入されれば、医療の質が極端に低下するので、検査
精度にも社会の関心が向けられ、検査医にとって追い風となるでしょう。また
同時に疾病予防へのニーズが飛躍的に強まるので、私自身は「予防検査医学」
とでも呼ぶべき、新たな領域への積極的な転進が有利ではないかと考えていま
す。

―最後に付け加えたいことがあればどうぞ。
 覆水盆に返らずとは思いますが、このインタビューを含め、私の失礼な発言
により不快な思いをされた先生方に心からお詫びしたいと思います。

―どうも有難うございました。

[聞き手:編集委員 木村 聡]
 
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[声の広場]◆JACLaP NEWS No.47の会員の声について
 -------------------------------------------------------------------

 JACLaP NESW No.47の会員の声を拝見しました。石戸先生のおっしゃるとお
り、comedicalという用語は英語ではありません。ちなみにPub Medで文献検索
しても、paramedicは2万件以上の論文がヒットしますが、comedicalは、日本
人が書いた論文が1件見つかるのみです。私の記憶では、この用語を作られた
のは多分、阿部正和先生ではないかと思いますがいかがでしょうか。少なくと
も、この用語は最近の造語で使用されるようになったのではなくて、10数年
以上前から阿部先生はお使いでした。医師以外の医療従事者を、医療チームの
一員である私たち医師の仲間として認める用語として、この言葉を普及させる
ことを考えられたのではと愚考しております。

[日本大学臨床病理 熊坂一成]
 
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[求人]  ◆東京の病院が内科常勤医師を募集
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 原則として各募集元から提出された原稿そそのまま掲載していますので、詳
しい内容等は各自の責任で当該連絡先までお問い合わせください。

【1998.7.27 No.2】
職種: 内科常勤医師(特に循環器)
名称: 社会福祉法人 東京有隣会 有隣病院
住所: 東京都世田谷区船橋2−15−38
電話: 03−3482−3611
施設: 内科外科等10科 259床
勤務: 月〜土の4〜5日 8:30〜17:00
仕事の内容: 外来及び病棟担当
給与: 相談

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[編集後記]◆続:偉大な国アメリカ
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 いよいよ年号の千の桁の数字が変わるまであと数か月となりましたが、
2000年問題への対応はお済みでしょうか。

 ご承知のように、2000年問題とは、以前はコンピュータの内部で西暦を
下2桁だけで処理することが多かったために、古いコンピュータや古くから
使っているソフトウエアなどが、2000年を1900年と誤解してしまい、
いろいろ誤動作を起こすことを言います。原子力発電所から電気炊飯器に至る
まで、ありとあらゆる装置にコンピュータが組み込まれている現在、この問題
が現実化すれば、私たちの社会が壊滅的打撃を受けることは明らかです。しか
し、既にいろいろな惨劇を通じて大規模災害への対処法を身に付けた人類の英
知は、この問題に対して十分な対策を講じることに成功しつつあります。

 このように、表面的には事態はスムーズに進んでいるように見えますが、実
はその対処を巡る一連の動きの中に、ある国の巨大な陰謀が隠されているとい
うことは、余り知られていません。その国とは、言うまでもなく世界最強の
国、アメリカです。以前にも触れましたが、アメリカ政府には豊かな国になる
ための究極の秘伝があります。改めてその要点を一言で説明しますと、「他民
族を目一杯働かせて徹底的にその上前をはねる」ということです。

 さて、2000年問題においては、このノウハウがどのように発揮されてい
るのでしょうか。ちょっと考えれば分かることですが、この問題は商品の欠陥
という範疇に属します。例えば電気系統の設計ミスで自動車のブレーキが効か
なくなるのと同じことです。とすれば、自動車のリコールと同じように、メー
カーが自ら欠陥のあるコンピュータやソフトウエアを、回収あるいは修理する
のが当然です。ところが、もしそうなれば、アメリカが国の柱と頼む情報産業
は、その費用負担で壊滅的な打撃を受けることが避けられません。

 どこかの国の政府ならば、業界と結託して知らぬふりを決め込み、大きな被
害が発生してものらりくらりと時間を稼ぎ、ユーザーの泣き寝入りを待つとい
うような対応が関の山ですが、偉大な国アメリカは、以前から十分な時間をか
け、はるかに高度な戦略を打ち立てたのです。即ち、他の国がまだその問題に
気付く前に率先してキャンペーンを張り、あたかも迫り来る大災害に人類が力
を合わせて立ち向かわなければならないような雰囲気を作りました。次いで、
右往左往する他国を尻目に、2000年問題による損害は保険を適用する代わ
りに賠償請求を制限する、あるいは2000年問題への対応という名目ならカ
ルテルを認めるなどの、一連の業界保護の法律を作りました。

 その結果、必ずやってくる2000年に故障するという欠陥商品を売りつけ
られたユーザーは、その対策に追いまくられるだけではなく、欠陥商品を作っ
たメーカーにお金を払って、交換や修理をしてもらわなければならないという
はめに陥りました。しかしアメリカの素晴らしいノウハウによって、殆どの
ユーザーはこのような仕打ちを受けてもなお、何の疑問も不満も抱かずにいる
のです。このようにして、世界中に欠陥商品を売りまくったアメリカの情報産
業は、2000年問題の責めを負うどころか、それを逆手にとってさらに大儲
けすることに成功したのです。

 史上最長の好景気が続くアメリカについては、既にバブル化しているとか実
態以上に評価されているなどの見方が根強くあります。しかしアメリカの真の
強さは、そんな表面的なことではありません。このような門外不出の究極ノウ
ハウがある限り、アメリカの繁栄は衰えを知らないのです。

 なお、文中の一部に大いなる勘違いに基づく誤った記述があったとしても、
一切責任は負いませんので悪しからず。

[編集担当 西堀眞弘]

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JACLaP WIRE No.9 1999年8月26日
■発行:日本臨床検査医会[情報・出版委員会]
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